せっかくだから、『弟切草』の話をしよう。

 ゲームショップで働いていたから、このゲームがよく売れたのは知っている。
 いつまでも、そりゃーしつこく売れ続けていた。
 同じメーカーから出ている『かまいたちの夜』がとてもおもしろかったので、きっと『弟切草』もおもしろいんだろーと思っていた。ええ、疑いもせずに。
 きっかけがなかったから、プレイすることはないままだったが、機会さえあればやってみたいとずっと思っていた。安心していた。「チュンソフト」というブランドに。

 きっかけは、妙なところからやってきた。
 仕事関係の人から、いきなり『弟切草』の文庫本をもらってしまった。
 なんでいきなり『弟切草』? その人からの走り書きのような手紙には、作者の長坂おじさんのはしゃぎっぷりが書いてあった。作者さんがかなり愉快な人なのかね。それでつい、なんの関係もないわたしにも、仕事の資料を送るついでに送ってくれた?
 小説をもらってしまったから、あわててゲームを買った。だってゲームのネタバレがあったらいやだもんね。先にゲームをやろう。
 『かまいたち』も『街』もおもしろかったから、『弟切草』もきっとおもしろいにちがいない。テレビのCMはめちゃくちゃこわかったし。

 そして、ぼーぜん。

 な、なんなんですか、これ……。
 『弟切草』って、売れたよね。ヒット作だよね。サウンドノベルっちゅージャンルのパイオニア、この作品があったからこそ、サウノベが確立したんだよね?

 この超絶大駄作がっ?!

 たしかに、こわかった。
 絵も、音も。SEの入り方、演出。すばらしかった。さすがだ、チュンソフト。
 ただ、問題は。

 テキスト。

 最低。

 読みながら、首をひねった。
 なんなんだ、このうすら寒いセンスは。
 たいてい、うすら寒い。ところどころは極寒。
 あちこちでは、寒さを通り越して怒りの熱さにまで。

 なんなの? 
 せっかくのすばらしい演出を、文章がすべて、ぶちこわしている!!

 感情移入できないバカ全開のキャラ。納得できない破綻したストーリー。そして、選びようのないくだらない選択肢。
 なんなんだ、こりゃ?!
 あきれて、4回やっただけで弟に貸し出してしまった。『かまいたち』は40回もやったのに。『街』はオールクリアしたのに。

 で、読んでみました、小説『弟切草』。覚悟を決めて。

 …………ふふふ。
 すごかったよ。
 ほんっとに、すごかった。
 わたし、生涯語り継ぐと思うわ、このすごさ。話題にせずにはいられないもの。

 わたしの読書人生に置いて、ワースト1を争う輝かしい1冊!!(笑)

 ここまでアタマの悪い文章は、見たことがない。

 「てにをは」の問題じゃないの。「てにをは」はふつー。まちがってない。だから文章の基本は書けている。
 世の中には、文章の基本がこわれてるのに出版されている本がいっぱいあるから、それくらいではおどろかないよ。
 長坂おじさんの文章のすごさは、文法的なことじゃないんだわ。

 センスがない、ってことなの。

 言葉の選び方、カタカナの使い方、キャラクター造形、ストーリー展開、すべてが下品。アッタマわるー、って感じ。

 えーと、思い浮かべてください。若者のことなんかなんにもわかってない、完璧なおじさんの姿を。時代錯誤なくらい、天然記念物なくらい「おじさん」という生き物。
 だがそのおじさん、自分を若いと思っているし、若者の会話にまざりたくてうずうずしている。で、聞きかじりの若者っぽい言葉を駆使して、若者たちの間に入ってくる。自分はイケてると信じてるから、自信満々。サムいおやじギャグをとばしまくり、周りをブリザード状態にさせているのに、まったく気づいていないでご満悦。
 おやじギャグのことさえ「ああ、こーゆーのはオジンギャグっていうんだっけ、アハハ」と自分で言って、「おれってかっこイー」と思っている。オジンじゃないです、おやじです、とつっこみたくても、すかさず「女の子が言ったらオバンギャグだネ!」とつづけてひとりで笑っているので、もーなにも言えない。

 文章のすごさにまず、ダウン取られたな。10カウント取られる前に、なんとか起きあがったが。
 次に来たのが、登場人物のコワレっぷり。人間の感情と思考を持っていません。
 一人称なのがまた痛い。「ムフフ」と「ずきゅん」を繰り返す主人公とヒロイン。頭の中はセックスのことだけ。姿の見えない殺人鬼に追われていても、ソファーを見ればそこで「ムフフ」、草むらで「ムフフ」、ヒロインは鏡の前で裸でポーズ、いやあのだから、殺人鬼がすぐそこにいるかもしれないんですけど。
 ああ、ここで挑戦者2度目のダウンだ、立ち上がれるか?!

 そしてもちろん、ストーリーもめちゃくちゃだー。
 エイリアン的思考の人たちが出ていて、人間の理解できるストーリーになるはずがないから、これはもうおどろくに値しないけどな。
 かろうじて立ち上がった挑戦者、もう戦う気力はない。ふらふらなところを難なくノックアウト!!

 総合芸術だよ、『弟切草』!
 文章、キャラクター、ストーリー。すべてが総合して、なにひとつ裏切ることなく最悪だ。

 はじめはとっとと読んで古本屋に売るつもりだったんだけど、100ページくらい読んだ段階で、降参した。
 鉛筆片手に、最初から読み直し。
 つっこみを書き込む。
 ……つっこまずにいれないって、コワレすぎてて。

 読み終わったあとは、友人たちに回覧GO! 書き込み奨励、変だと思ったところ、脱力したところ、怒りに震えたところ、なんでも書き込んでくれ! イラストも大歓迎だ!
 友人たちも大はしゃぎ。愉快な書き込みで埋まったこの本は、宝物です。

 もうすっかり、長坂おじさんのファンです。
 『弟切草』3部作は、知人に頼んで全部送ってもらいました。あるパーティでは、長坂おじさんご本人に会えるっちゅーんで、よろこびました。……会えなかったけど。

 ゲーム『弟切草』は、演出とシステムはいいんだよ。悪いのは長坂先生の文章。
 ゲーム『街』は名作で、8本あるシナリオのなかに、とってもサムいものがあったけれど、それはわざとサムくしているんだと思ったし、8本のシナリオの中にはそーゆーものも必要だろうと思った。だがそのサムいものこそが、長坂先生作で、狙ってサムいんでなく、彼のナチュラルな持ち味なんだと判明。

 最悪を極めると、怒りや憎しみよりも、愛が生まれてしまうものなのです。
 人間って不思議。

 わたしと、わたしの弟は「長坂おじさん」の大ファンよ。先生の新作をたのしみにしている。
 でも。

 お願い先生、もうゲームは作らないで。

 
 ドラマ・真夏のNo.1ミステリー『かまいたちの夜』の放送があった。
 見終わってひとこと。

 …………ミステリーちゃうやん(笑)。

 スーパーファミコンソフト『かまいたちの夜』が発売されたのは、何年前だっけ。
 わたしはわりと発売当初にプレイした。
 はじめてやるサウンドノベルだった。
 はじめてってことは、これがスタンダード、ふつうなんだと思うじゃない。それが誤解だと知るのは、もっとあと。
 とにかく。
 おもしろかった。
 テキスト担当の我孫子武丸は、名前だけ知っている程度の人。くだらないギャグと脱力を誘う主人公の性格はわたしのツボからほど遠いが、それでも「そんなもんなんだろう」と思った。

 最初わたしは、主人公を「アンドレ」、ヒロインを「オスカル」にしたんだな。
 …………主人公のあまりのアホっぽさと、ヒロインの女言葉に失敗を悟る。だめだこれは、と名前を変えて一からやり直し。
 次は主人公を「のび太」、ヒロインを「しずか」にした。
 これはもー、ドンピシャ。ハマリです。
 のーみそが軽く態度も軽い、優柔不断で弱腰の主人公、のび太。彼のあこがれのガールフレンド、このまま恋人になりたい、しっかり者で美人のしずか。
 このふたりが、ある事件に巻き込まれる……。

 最初の犯人あてで、半分だけあてたんだよねえ。
 犯人てば、名前ふたつあったでしょ? 片方の名前を入れて、はずれたんだわ。
 おかげで正規ストーリーを堪能しました。

 さて。
 ゲーム『かまいたちの夜』は、とてもたのしかったです。雪女篇もスパイ大作戦篇も、愉快でした。
 ピンクの栞にはたどりつけなかったんだけど、それでも複数回、けっこーな回数遊びました。
 だから味を占めたの。
「サウンドノベルって、おもしろい!」
 …………繰り返すけど、はじめてやったのが、『かまいたち』だったのよ。
 そのあとに、いくつか似たよーなものをやったんだけどさ……ふふふ(乾いた笑い)。

 相当、出来よかったんだな、『かまいたちの夜』!!

 いやあ、誤解してたよ。『かまいたち』が平均なんだと思ってた。
 わたしいきなり、上位ランクからプレイしてたのね。
 サウンドノベルってのは一見簡単そーなゲームだからさ、誰にでも作れちゃうよーな気がするけど、そうか、難しかったんだなっ。
 我孫子武丸も、文章うまかったんだなっ。ぜんぜん気づかずにプレイしたよ。

 つーか。
 最悪なモノが多くないか、サウンドノベル。
 文章が破壊されていたり、辻褄が合わなかったりは序の口。
 ストーリーとして成り立っていないものが、当たり前に商品化されている、この事実。
 せめて誤字脱字ぐらいは、なんとかしてよ……恥ずかしいよ……小学生並の変換ミスとかさ。
 「以外」と「意外」の区別がつかない人、ネットでは8割以上いるみたいだけど、商業出版物で出てくると、萎えるよ。

 本家本元、チュンソフトのサウンドノベルがやはり、すばらしいです。
 『かまいたちの夜』がおもしろかったので、次にわたしは『街』をプレイしました。

 すげえ。
 マジ、いいっすよ、『街』!!

 感動しました。

 プレイしてみるまでは、乗り気ではなかったのね。
 だってこれ、実写なんだもん。実写は萎えるなあ。これまでみたいにシルエットならいいのに。
 そう思ってたんだけど。
 プレイしたあとならば、「実写でなければ意味ナシ!!」と思うようになるよ。

 サウンドノベルの最高傑作。

 しかし。
 …………売れなかったのだ、『街』。

 前評判も高かったし、玄人受けもしていた。やった人は誰もが絶賛。
 しかし。
 売れなかった。

 たぶんこれ、アニメ絵なら売れたと思う。
 男たちがよろこびそーな、「萌え萌え」な美少女絵にしちまえば、売れただろー。
 だが、実写だからな。
 わたしだって、抵抗あったし。

 セガサターンで発売された『街』はあまりに売れず、あっちゅー間にプレステに移植されることになった。
 業界ナンバーワンのSONY様のマシンでなら、売れるかも、ちゅーことだな。
 ついでに過去のサウンドノベル、『弟切草』と『かまいたちの夜』もプレステに移植。
 チュンソフトとしては、いちばん売りたかったのが『街』なんじゃないの? あとの2作は言い訳みたいなもんで。

 しかし。
 『街』は売れなかった。
 『弟切草』と『かまいたちの夜』は売れたのに、『街』だけが、売れなかった。
 当時わたしはゲームショップで働いていたので、よくおぼえてるよ。
 せつないほど売れなかった。

 たしかに、『かまいたち』はいいゲームだよ。おもしろいよ。
 でもな。
 『街』はそれよりはるかにおもしろいんじゃ〜〜あっ!

 せつないねえ。
 せちがらいねえ。
 いいものが売れない世の中なんてさ。

 売り方をまちがえたんだと思うのよ。
 『弟切草』と『かまいたちの夜』がなんで売れたか。……「ホラー」というカテゴリで売ったからでしょー?
 『街』だけコメディで売るんだもん。コメディなんて、世の人々に言わせれば「所詮コメディ」なのよ、by『SLAPSTICK』。
 ホラーなら売れる現代だけど、コメディじゃダメだよ。ただでさえ実写っていうマイナス・イメージがあるのに。
 ちなみに、『かまいたち』はホラーではありません。ミステリーです。
 怪奇現象に逃げず、ちゃんと犯人を推理できます。
 なのに、CMでは「ホラー」として印象づけた。
 誇張だろうと嘘だろうと、「ホラー」で、いかにも「こわそう」だと煽れば、ある程度は売れるんだってば。
 よい例が『弟切草』だ。ゲームシステムはどーか知らないが、シナリオは最低最悪、カスの部類だが、売れたぞ。ホラーだからな。

 ミステリーなのに、売るために「ホラー」ということにした。
 それが、『かまいたちの夜』。
 そして、今度『かまいたちの夜2』が発売される。
 チュンソフトは学んだのか? どんなによいものを作っても、「ホラーでなければ売れない」という現実。
 ホラー要素がグレードアップしていることは、まちがいない『かまいたちの夜2』。
 その宣伝であることはまちがいない、真夏のNo.1ミステリー『かまいたちの夜』。
 「No.1ミステリー」だぞ?

 …………ミステリーちゃうやん。ホラーやん。

 コーチ、涙で前が見えませんッ!!

 
 弟のリクエストで、『バイオハザード3』を買ってきた。
 バイオ3のマニュアルを見ながら、「グッズ展開のしにくいシリーズだな」てなことを、弟は言う。
 そうだねえ、最初からこんな壮大なシリーズになるってわかってたら、なにかもっと商売になりそうなアイテムを、作品中に出していたろうにねえ。
 定番っていうか、「これはまぎれもなくバイオハザード!」てなアイテム、特にないもんなあ。銃じゃダメだし、ゾンビもかわいくないし。

 あ、ひとつある。

 アイテムBOX!

 アイテムBOXだけは、どのシリーズにも出てるよね? そんでもって、一目で「うわ、バイオだ!」とわかるよね?
 アイテムBOX型のメモリーカード入れとか、発売したら売れるんじゃない?

 なーんてことを言ってたら弟、

「ランスロットのオルゴール」

 と、つぶやいた。
 どーやら、アイテムBOXからの連想らしい(笑)。
 ランスロットのオルゴール。ええ、商品化してくれたらわたし、買うけどな。

 それにしても、強烈に意識に残ってしまうアイテムって、あるよなあ。
 『タクティクス・オウガ』の「ランスロットのオルゴール」は、忘れられないアイテムのひとつ。
 おっさん、そこで少年を口説くかね? 「妻の形見のオルゴール」なんぞ出して。
 あー、わたしはデニムの初恋の人は、ランスロットだと思ってます。ちなみに、デニムは攻だと思ってます。つーと、ランス受?! いやまあ、彼は受だけど、それにしてもデニム相手でも受かあ。
 希望としては、デニム×ヴァイスだけどな……。

 あ。書いてて思い出した。
 忘れられない、強烈アイテムというと、最大はやはり、『クーロンズゲート』の「男油」!!
 厭すぎるアイテム、として、忘れられない(笑)。
 『クーロン…』をプレイしたヤツはみんな、口をそろえて「男油ってナニ、厭すぎ!」と言う。HPの回復アイテムだから、使わずにはいられない、だけど使いたくなくなる、すばらしいネーミングだ。
 あー……『クーロン…』……すばらしいクソゲーだったなー……でも、ハマると抜けられない、麻薬のやうなゲームだったなー……遠い目。

 ところで、『真珠夫人』は、母親と一緒に見るもんじゃないなあ、と再確認。
 母よ、あんた恥ずかしいよ……なんで瑠璃子さんの純潔の話(笑)を見ながら、自分の「純潔だったころ」の話をはじめるのよー。わたしはTVを見ているんであって、母の「さらば純潔よ」の経験談を聞きたいわけじゃないっ。
 つーか、萎えるだろ、んな話。

1 2 3 4

 

日記内を検索