『PR×PRince』初日観劇。

 作品の「新しさ」に困惑した、という話の続き。

 まだ『PR×PRince』自体の話はしていない。
 それ以前。

 よくコレを「タカラヅカ」でやろうと思ったな!

 『PR×PRince』は、タカラヅカの二次創作的というか、ファン同士で「**ちゃんってこんなの似合うよねー」「こうだったらウケる~」とか話している、その延長線上にある作りの作品。
 ジェンヌをネタにして、都合良くキャラと設定を作って遊ぶような。

 ヅカファン同士の雑談は楽しい。

 でもソレは、なんの責任もないファン同士だから楽しいのであって。
 そのノリのまま、実際に演出家が作品1本作って上演しちゃう、てのはなかなかすごい。

 わたしが感心したのは、その「実際にやった」ということだ。

 はじめて「タカラヅカ」作品を1本任されて。
 タカラヅカが好きだから、とびきり「タカラヅカ」らしい作品を作るぞ! ではなくて。
 タカラヅカが好きだから、「タカラヅカ」をいじって楽しい作品を作るぞ! であった、ということが。

 わたしには、カルチャーショックだった。

 古典とかラブロマンスとか悲劇とか、「タカラヅカ」ならではのタカラヅカらしい話ではなく。
 深夜のアイドルドラマみたいな話を作る。
 アイドルユニット全員出演、彼らがかわいいことをしていればそれでよし、スカステで言うとブリドリみたいなコンセプトのドラマ。

 そうか、そういう時代になったか!
 夢にも思わなかったので、ひたすらその事実に驚いた。


 んで、困惑したのはソコなので、『PR×PRince』自体を下げているつもりはない。
 ドラマフリークでやたらめったらドラマを見続けている身としては、このテのドラマにも免疫がある。
 完全ファン向けの配信ドラマだと思えば、「あるある、知ってるわコレ」感ゆんゆん。
 それはそれで、アリだと思う。

 ギャグの応酬がほんと深夜ドラマ系だなと思う……パロディ要素の多さと自虐系というかセルフツッコミしつつ回していく感じが。
 テレビドラマなら、カメラワークの助けを借りていくらでもテンポ良く回せたんだろうけど、舞台で、ナマで、しかもタカラジェンヌで、その上雪組で下級生メインでだ。
 空回りぶりが切ない。

 客席、もっと笑ってやれ……。
 空気が温まってくんないと、やってる人たちつらいぞアレ……。

 生徒がおっかなびっくりやっている感と、客席の「笑っていいの……?」感がパイ地のように重なり合って、なんとも微妙な空気でスタート。

 イシダせんせの下品ギャグでもなければ、サイトーくんのやりすぎギャグでもない、現代のマンガやドラマ的なキャッチボール会話で笑わせるのね。
 それはタカラヅカ以外のジャンルで慣れ親しんだモノだからわかるんだけど、なにしろここはタカラヅカなので、違和感パネェ。
 また、雪っこたちがくそ真面目にソレをやってるんだわ……そこまで真面目に「面白い会話」をされてもな……もっと自然にやってくんないとな……。

 初日だから、ジェンヌも観客も、勝手がわからなかったんだと思う。
 回数を重ねれば、きっとギャグが正しく成立するんだろう。

 観客が空気に乗り遅れるような、「新しい」ジャンルの作品だと思う。

 そして、完全にファン向けパッケージ商品になっているので、出演ジェンヌのファンには楽しめる作品なんじゃないかな。
 そもそもバウ公演はファンしか観ないわけだから、方向性は間違ってない。
 や、わたしはいろいろ言いたいことがあるけど、それは置いておいて、『PR×PRince』はアリだと思う。

 アリというか……そうだな、キライじゃない、が正しいかな、言葉の選択としては。
 好きではないし、ご贔屓がコレで主演だったらアタマ抱えてると思うけど、キライじゃない、キライになれない。うなずける部分がいろいろある。


 デビュー作には、そのクリエイターの「作家性」が凝縮されているという。
 『PR×PRince』でデビューした町田菜花先生は、今後どんな作品を生み出していくんだろう。


 それにしても、「タカラヅカ」ってすごいよな。
 なんでも許すし、飲み込んでしまうんだ。
 そうやって100年以上続いてきたんだ。

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