『PR×PRince』初日観劇。

 相変わらず予備知識なし。
 新人演出家のデビュー作品であることと、ラインアップ発表時にざーっとあらすじに目を通した印象がうっすら記憶にあるのみで、あらすじ自体もおぼえていない。
 いかにも現代的な、若い女性が描きそうな物語だな、と思ったんだったかな。

 演出家のデビューはいつだってわくわく。
 ジェンヌの寿命は儚く短いけど、演出家は終身雇用、へたすりゃ定年も超えてアナザーワールドへ行くまでの、4~50年ものおつきあい覚悟。
 数年のおつきあいのクラスメイトと、残りの人生ずっとつきあう親戚とかご近所さん、どっちが重い?
 近しく思うのはクラスメイトの方で、親戚とかご近所さんは直接つきあうわけではないけど、ここにストレスあったら人生つらくなる。

 さあ、生田くんとかウエクミとか、今後が楽しみになる先生がデビューしてくれるかなっ。
 若い人が書きそうな話でデビューみたいだし、現代性とか若さとかは、大御所たちにはないスキルだもの、それだけでわくわく。

 で。

 で、実際観て。

 本当に若い作品だ、と、びびった。

 びびる……ぽかーんとした……とまどった……困惑した。

 うん、困惑した、がいちばん近いか。

 作品の善し悪し、好き嫌い以前。
 何故コレを、「タカラヅカ」でやろうと思った?! てな疑問と。
 コレを「タカラヅカ」でやってしまうことに疑問を持たない感性を持つ人が、タカラヅカの座付き作家としてデビューする、現実に。

 困惑した。

 幕間のわたしの感想第一声は、「時代は変わったなー」だった。

 なんつーんだ、『ガンダム』を観て育った人が大人になって『ガンダム』を創る側になった、とか、そんな風に「時代は変わる」よね。
 『ガンダム』が好きでずっと見てきたからこそ、ファン目線で新たな『ガンダム』を創っちゃうぞ的な。

 そっかあ、タカラヅカもそういうところに来てるのか。

 『ガンダム』どころじゃなく、ヅカの場合は2周3周してるもんな。
 タカラヅカを観て育った人が「これぞタカラヅカ!」なものを創って、それを観て育った人がまたさらに「自分の思うタカラヅカ」を創って、それを観て育った人が……って。100年超えの歴史半端ナイ。

 そうやって廻った結果が、今回の『PR×PRince』なんだろう。

 観ながらデジャヴを感じた。
 知ってる、コレあれだ、「名探偵SAGIRI」。
 ヅカファンがタカラジェンヌを使って二次創作したミニドラマ。
 友だち同士で「ちぎちゃんがアツい探偵で~~」「まっつがクールな謎の男で~~」とか、ジェンヌのイメージをネタに面白がってドラマ考えました、てな出来映えのヤツ。
 や、「名探偵SAGIRI」はきゃびい脚本だったけど、出発点は「ファン目線での二次創作」よね?

 タカラヅカを観ていたら、ジェンヌを使って遊びたくなる気持ちはわかる。
 遊ぶというと言葉が悪いかもしれんが、要はアレだ、妄想配役。「〇組で『エリザベート』やるなら、ルキーニは誰々で~」とか、「**ちゃんのオスカル見たい~、アンドレは××ちゃんがいい~~」とか、ヅカファンが絶対おしゃべりのネタにするアレだ。
 そのジェンヌ自身のキャラや立ち位置、周囲との関係性など、ファンならではの共通認識を使って、創作して楽しむ。
 ヅカファンがふたり寄れば、そのテの話題は日常的に出る。日常だから意識しないし記憶にも残らないレベルで。

 だから、「タカラヅカを好きで、タカラヅカの演出家になった」人も、「妄想配役」や「二次創作」はしているだろう、ふつうに。それがなければ座付きなんかやってられない、「この生徒にこんな作品をやらせたい」「この物語を是非あの生徒にやって欲しい」など、創作意欲の根源だから。

 ソレは理解する。
 が。

 ファンの妄想配役や二次創作系の話を、本当にタカラヅカでやってしまう演出家が出るとは、思ってなかった。

 すげえな。
 時代はここまで来たか。

 2周も3周もして、ここまで来たか。


 えー、作品以前のスピリッツとかスタンスの話であって、作品自体の話ではありません。
 作品というと『PR×PRince』単体に範囲が固定されて誤解の元かな。
 じゃあ、作品ではなく、ジャンルというべき?
 こんなジャンルを上演してしまう時代になったのか! と言う方が伝わるかな。

 いやもお、新しいなマジで!
 老人はロビーで困惑しきりだった(笑)。

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