世界の真ん中を示す力。@20世紀号に乗って
2019年3月23日 タカラヅカ 『20世紀号に乗って』初日観劇。
落ち目のプロデューサーが、起死回生をかけて売れっ子女優(元恋人)に出演交渉する話。
双方逃げ場なしの動く密室、高級長距離列車「20世紀号」の中での、丁々発止の台詞と歌の応酬で紡ぐミュージカル。
コメディなので難しく考えることなく、気軽に笑って楽しめばいい小品。
……なんだけど、作品は別に好きじゃない。
なんの予備知識もないまま初日を観たわけだが、最初から最後まで「タカラヅカ作品」が恋しかった。
キャストが力業で成り立たせているだけで、別にタカラヅカでやる必要ないよね、これ。
イシダ作品みたいな下品ギャグじゃないから、笑いに拒絶反応はないけど、タカラヅカ観てる気がしない。
たとえばキキちゃんの『群盗』。駄作だと思うし、文句は山ほどあったけど、「タカラヅカならでは」のわくわくがあった。
下級生たち大活躍で、この子たちの成長を見届けたくて、もう一度観たいと思った。
『20世紀号に乗って』を純粋に「作品」のみで言うと。
ふつーなら1回観て満足、2回目は誘われても辞退するかな。
悪くはないし楽しめるけど、好みじゃないもの。
嫌いでもないので、わりとどーでもいいあたり……贔屓組なら2回観てもいいかな、と出演者への興味と好意次第。
だいもんたちがかわいいから底上げされちゃって、彼らを思い返すと「楽しかったし、また観たいと思うじゃん」になるし、純粋に作品だけ思い返すと「つまらなかったなあ、もういいや」になるという複雑さ(笑)。
タカラヅカ作品ではない、ブロードウェイミュージカルである、というのは、こんなにもアウェイなんだなと思った。
ヅカ作品をタカラジェンヌが演じるのは、ホームでファンの歓声浴びつつプレイするようなもの。
ブロードウェイミュージカルを演じるのは、敵国のスタジアムで敵チームへの応援しか聞こえない中でプレイするようなものか。
底上げ率というか、風の向きがこんなにチガウ。
ヅカ作品なら、追い風が吹く中を快走できるんだろうな。
多少足が遅くてもフォームが乱れていても、誤魔化されてしまう。風がうまく後ろから支えて、プラスアルファの力を出せるよう手伝ってくれる。
だって、タカラジェンヌはタカラヅカ作品を演じるために何年も訓練されてきた人たちだもの。
タカラジェンヌは、「タカラヅカ」がいちばん得意。
あたりまえのこと。
アウェイである世界観まんま手渡されて、真面目な雪組っこが本気で悪戦苦闘してる。
だって、「ブロードウェイミュージカルまんま」にしてしまってはいけないのよ。だってそれじゃ「タカラヅカでやる意味がない」。
しかし、作品は「まんま」。演じる者たちは「タカラヅカとして受けて立つ!」気合い。
そのせめぎ合いを感じて、アウェイで戦うアスリートを連想した。
……演出家はもう少し仕事してくださいよー。
まんま渡すだけの簡単なお仕事、ではなく、「タカラヅカ」に作り直してくださいよー。出演者丸投げしないで。
や、版権ガチガチで「変更? ふん、一言一句、ニュアンスに至るまで一切ゆるさん!!」なのかもしれんけど。
だったらそんなの、ヅカでやらんでいいと思うし。
アウェイ感ゆんゆんだったからこそ、余計に出演者の力に感動した。
だいもんマジうまいな。
彼がコメディ得意なのは知ってる。にしても、この自分勝手で怒鳴ってばかりいるパワハラ男をかわいらしく造形してしまう芝居力すごい。
ちょっとした動き、仕草がコミカルで毒よりおかしさが勝ち、それでいてわざとらしくないので人間くささと温かみが出ている。
バカだけどこの男に成功してほしいと、観客が彼への応援目線になっているのが空気でわかる。
もちろん、だいもん単体でなく、あーさ、まなはるのアホアホ三銃士の力もある。この3人がアホかわいい。
全編に亘り、だいもんすげーなー、うまいなー、と思い続けてはいたけれど。
その力を痛感したのは、最後のラインアップのときだ。
わたしは元ミュージカルを知らないんだけど、主役ってオスカーなの?
2幕のやたら長い幻想のミュージカルシーン観ながら、やっぱこれ元はリリー主役なんじゃ?と思った。
予備知識なく観て、構成がリリー寄りに作られてることに首をかしげていたのね。
実際派手なシーンはリリーセンターで、オスカー中心のミュージカル!!なシーンはない。
彼は物語を回す役目しかなくて、衣装も地味なヒゲオヤジ。美形キャラだという描き方もされてない。
こんだけ「主役じゃないよね」という描き方をされていて、……それでも、リリーを脇として、最後に登場して拍手もらうことになんの違和感もない。……って、すげえ。
構成のいびつさを、だいもんが自力で補正してる。
世界の真ん中がどこか、彼が教えている。
ラインアップの最後、満を持して登場するだいもんに、舌を巻いた。
すごいなこの人。
チビだしスタイルも悪いのに。「タカラヅカ」においてそれは致命的な弱点で、それだけでもう「スター」として認められない場合だってあるのに。
なのになのに、やっぱこの人はまぎれもなくスター!!だ。
わかりやすい弱点が晒されていてなお、この力、この魅力。
惚れぼれする。
落ち目のプロデューサーが、起死回生をかけて売れっ子女優(元恋人)に出演交渉する話。
双方逃げ場なしの動く密室、高級長距離列車「20世紀号」の中での、丁々発止の台詞と歌の応酬で紡ぐミュージカル。
コメディなので難しく考えることなく、気軽に笑って楽しめばいい小品。
……なんだけど、作品は別に好きじゃない。
なんの予備知識もないまま初日を観たわけだが、最初から最後まで「タカラヅカ作品」が恋しかった。
キャストが力業で成り立たせているだけで、別にタカラヅカでやる必要ないよね、これ。
イシダ作品みたいな下品ギャグじゃないから、笑いに拒絶反応はないけど、タカラヅカ観てる気がしない。
たとえばキキちゃんの『群盗』。駄作だと思うし、文句は山ほどあったけど、「タカラヅカならでは」のわくわくがあった。
下級生たち大活躍で、この子たちの成長を見届けたくて、もう一度観たいと思った。
『20世紀号に乗って』を純粋に「作品」のみで言うと。
ふつーなら1回観て満足、2回目は誘われても辞退するかな。
悪くはないし楽しめるけど、好みじゃないもの。
嫌いでもないので、わりとどーでもいいあたり……贔屓組なら2回観てもいいかな、と出演者への興味と好意次第。
だいもんたちがかわいいから底上げされちゃって、彼らを思い返すと「楽しかったし、また観たいと思うじゃん」になるし、純粋に作品だけ思い返すと「つまらなかったなあ、もういいや」になるという複雑さ(笑)。
タカラヅカ作品ではない、ブロードウェイミュージカルである、というのは、こんなにもアウェイなんだなと思った。
ヅカ作品をタカラジェンヌが演じるのは、ホームでファンの歓声浴びつつプレイするようなもの。
ブロードウェイミュージカルを演じるのは、敵国のスタジアムで敵チームへの応援しか聞こえない中でプレイするようなものか。
底上げ率というか、風の向きがこんなにチガウ。
ヅカ作品なら、追い風が吹く中を快走できるんだろうな。
多少足が遅くてもフォームが乱れていても、誤魔化されてしまう。風がうまく後ろから支えて、プラスアルファの力を出せるよう手伝ってくれる。
だって、タカラジェンヌはタカラヅカ作品を演じるために何年も訓練されてきた人たちだもの。
タカラジェンヌは、「タカラヅカ」がいちばん得意。
あたりまえのこと。
アウェイである世界観まんま手渡されて、真面目な雪組っこが本気で悪戦苦闘してる。
だって、「ブロードウェイミュージカルまんま」にしてしまってはいけないのよ。だってそれじゃ「タカラヅカでやる意味がない」。
しかし、作品は「まんま」。演じる者たちは「タカラヅカとして受けて立つ!」気合い。
そのせめぎ合いを感じて、アウェイで戦うアスリートを連想した。
……演出家はもう少し仕事してくださいよー。
まんま渡すだけの簡単なお仕事、ではなく、「タカラヅカ」に作り直してくださいよー。出演者丸投げしないで。
や、版権ガチガチで「変更? ふん、一言一句、ニュアンスに至るまで一切ゆるさん!!」なのかもしれんけど。
だったらそんなの、ヅカでやらんでいいと思うし。
アウェイ感ゆんゆんだったからこそ、余計に出演者の力に感動した。
だいもんマジうまいな。
彼がコメディ得意なのは知ってる。にしても、この自分勝手で怒鳴ってばかりいるパワハラ男をかわいらしく造形してしまう芝居力すごい。
ちょっとした動き、仕草がコミカルで毒よりおかしさが勝ち、それでいてわざとらしくないので人間くささと温かみが出ている。
バカだけどこの男に成功してほしいと、観客が彼への応援目線になっているのが空気でわかる。
もちろん、だいもん単体でなく、あーさ、まなはるのアホアホ三銃士の力もある。この3人がアホかわいい。
全編に亘り、だいもんすげーなー、うまいなー、と思い続けてはいたけれど。
その力を痛感したのは、最後のラインアップのときだ。
わたしは元ミュージカルを知らないんだけど、主役ってオスカーなの?
2幕のやたら長い幻想のミュージカルシーン観ながら、やっぱこれ元はリリー主役なんじゃ?と思った。
予備知識なく観て、構成がリリー寄りに作られてることに首をかしげていたのね。
実際派手なシーンはリリーセンターで、オスカー中心のミュージカル!!なシーンはない。
彼は物語を回す役目しかなくて、衣装も地味なヒゲオヤジ。美形キャラだという描き方もされてない。
こんだけ「主役じゃないよね」という描き方をされていて、……それでも、リリーを脇として、最後に登場して拍手もらうことになんの違和感もない。……って、すげえ。
構成のいびつさを、だいもんが自力で補正してる。
世界の真ん中がどこか、彼が教えている。
ラインアップの最後、満を持して登場するだいもんに、舌を巻いた。
すごいなこの人。
チビだしスタイルも悪いのに。「タカラヅカ」においてそれは致命的な弱点で、それだけでもう「スター」として認められない場合だってあるのに。
なのになのに、やっぱこの人はまぎれもなくスター!!だ。
わかりやすい弱点が晒されていてなお、この力、この魅力。
惚れぼれする。
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