『夢現無双 「宮本武蔵」』を考える。

 なんでこれ、こんなにつまんないんだろう?

 「宮本武蔵」が女性ウケしない題材だから。
 ……てのは置いておいて。

 わたしはバトル物のマンガは好きだ。
 少年マンガ育ちなので、少女マンガよりよっぽど読んで育ってる。
 大した理由もなく主人公が戦いまくる話も楽しく読んでいる。

 なんでバトル物マンガが面白いのかって、そりゃバトル自体が面白いんだ。

 次々と立ちふさがる強敵を、主人公が打ち負かしていく。
 斬り合いの迫力、瞬時の駆け引き。
 勝てるはずのない敵を倒すための工夫や仕掛け、奇抜なアイディア、心理戦。

 バトル自体が面白い。
 手に汗握るってやつ。

 また、バトルが盛り上がるのは、敵にもドラマが盛り込まれるからだ。
 戦っている最中に、回想として敵の事情が読者に示される。こんな人で、こんなことがあり、こんな人とつきあいがあり、こんな想いで戦いに挑んでいる。
 敵にも感情移入させてから、その強くかっこいい相手を、主人公が打ち負かすからこそ、カタルシス。
 名前も顔もない雑魚を何人倒しても、感動にはつながらない。

 でも、この『夢現無双』はどうだろう。

 バトル場面か、つまらない。

 女性だけで演じる殺陣で、少年マンガばりの迫力や緊迫感を出せるわけもない。
 決められた振付で動いてるだけですね、よたよた「ケガしないように、気をつけて、ゆっくりよいしょ」と刀を振り合っているけど、仕方ないよね所詮お芝居だもん。

 って、それはいいのよ、わかってるから。
 ヅカの殺陣に限界があることぐらい、最初からわかってる。

 だから問題は「見せ方」なのよ。
 宮本武蔵だから、戦ってばっかり。……なのは題材選んだときからわかってるよね。
 そして、タカラヅカが殺陣を苦手としていることも、わかっているはず。
 男性の筋力もなく、迫真の剣戟は望めない。アクションを本業とした人のような、派手なパフォーマンスは出来ないし、バク転ひとつ出来ない。ワイヤーでぴゅんびゅん飛んだり、特殊効果で盛り上げたりも出来ない。
 最初からわかってる苦手分野を、作品の核に置くならば。

 タカラヅカの得意分野を使えばいいのに。

 歌とダンス。

 もっさりチャンバラではなく、刀を使ったかっこいいダンスにする。

 武蔵がいろんな強敵とダンスバトルしても、「タカラヅカだもんね」で済むよ。

 敵ごとにダンスのジャンルを変えるとかして、「決闘場面こそがこの作品の見せ場!! めっちゃ盛り上がる!!」にしちゃえばいいのに。
 や、本人たちはちゃんとチャンバラしている設定よ、武蔵はさすらいのダンサーじゃないから、チャンバラをダンスで表現するだけよ?

 今のままだと、武蔵が戦って勝っても、わくわくしなくてなあ。
 戦う場面がつまんないし、戦いと戦いの合間の話もつまんないしで、逃げ場なしにつまんない……。

 でもって、なんで戦うのかわかんないし、勝っても成長がわからないしで。

 巌流島で派手に歌い踊ってほしかったなー。
 武蔵VS小次郎のダンスバトル。
 敵同士だけど、ちょっとデュエットダンス風味あり。「強敵と書いて“とも”と読む」世界ですから、強い絆があるのよ、少年マンガのお約束よ。
 彼らだけのバトルだけど、それだけには収まらない。
 これまでの登場人物全員現れて、盆もセリも照明も全部使ってショーシーンにしてくれていい。
 ふたりだけの戦い? はいはい、それはさておき、武蔵と小次郎の背負ってきたものが全部イメージとして舞台上に炸裂するわけですよ!
 ヅカヲタが「この場面観るためだけにリピートする!!」と鼻息荒くするような、ここぞとばかりにドラマチックに。

 で、その派手派手場面から一転しての静寂、で、雌雄決す。小次郎倒れる。


 男脳で書かれたバトル物なら、バトル自体楽しくしてくれなきゃだわ。
 バトルがつまんないマンガは打ち切られるわ。

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