ちょっと思い出話。

 なんやかん言って結局わたしは、東宝まで雪組新人公演『ファントム』を観に行った。やっぱりあやなエリックにもう一度会いたくて。
 ムラで見せた不安定さと壊れる寸前みたいなあやうさはなくなり、しっかりした集大成としての主演ぶりに、「会いたかったエリックじゃない……」と肩を落としはしたが、やっぱりあやなちゃんはステキでわくわくきゃーきゃーだった。(ひどい日本語)

 それはともかく、その『ファントム』新公帰り道で、長年の花担友人としみじみうなずいたこと。

「新公でカルロッタやってたときに、あの仙名さんが将来トップ娘役になるなんて、誰が思っただろう」

「しかも、みりお様の相手役」

「アタマおかしいと思われるよね、そんなこと言う人がいたら」

「ただのトップじゃない、あの、みりお様だもんねー」


 あの仙名さん。
 あのみりお様。

 やたらと思わせぶりな「あの」付きで恐縮だが、これはもう、同時代を生きた人にしかわからない感覚というか。
 仙名さんは入団からずっと、一貫して「別格実力派娘役」としての道を歩んでいた人で、劇団が強い意志でもって「こわい女の役」「悪女」「おばさん」などを彼女に求めていた。
 みりお様は入団からずっと、一貫して「超路線スター」としての道を歩んでいた人で、劇団が強い意志でもって「中性的な美少年」「キラキラなフェアリー」「将来のドル箱スター」と扱ってきた。

 確固たる脇の人が、まかりまちがってトップ娘役になるとしたら、「もうトップはないだろうと思われていた高学年スターが、短期予定でトップになった」ときに相手役に抜擢される……が、唯一の可能性だろうし、いやそもそもそのすべりこみ可能性だって新公ヒロインしてなかったら存在しない。
 良くも悪くも、ソレがタカラヅカ。
 そんなタカラヅカだということをよく知っているヅカヲタだからこそ、「新公でカルロッタをやっていたときの仙名さん」の時代にこっそりタイムリープして「わたしは未来を知っているわ、仙名さんは将来みりお様の相手役として花組のトップ娘役になるのよ」と言ったら、アタマおかしいと思われるだろうと。
 専科のおばさまの役をやる、地味な脇の女の子が。
 月組の御曹司、将来の月組を背負って立つキラキラの美少年スターの相手役? てゆーかみりお様が花組ってなにソレおかしい、あははは。
 笑われておしまいだわね、間違いなく。

 遠くへ来たなあ。
 時間が流れたなあ。

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