薄ぼんやりした霧の朝と曇り空の昼。@CASANOVA
2019年3月8日 タカラヅカ 『CASANOVA』を観て思ったことをつれづれ書く。
『CASANOVA』は罪なく他愛なく、しあわせな物語。
だけど、わたしには物足りない。
どうしてか。……を、考える。
ストーリーが少ない。
少なくても他に濃い部分があれば深みは出るけど、少ないだけで終わっている。
そこがつまんない。
平和な世界で平和な人たちがどたばたやって、流れ者のプレイボーイがひとりの女の子と恋愛して悪者をこらしめたけど、やっぱり世界は平和で人々も平和で、プレイボーイはそのまま旅に出て終わり。
……少ないわ、足りないわ。
単純明快で、深刻な悲劇もなく、本当の悪人もひとりもいなくて、誰ひとり不幸にならないハッピーエンド。
それはいい。それはステキ。
そういう世界をあえて描くのは好き。悲劇も不幸も嫌。
だけど。
それなら、せめて、主人公には変化を描こう。
物語のカタルシスは、「出来事(ストーリー)」だけにあるんじゃない。「心(主人公)」にもある。
ストーリーが僅少で薄っぺらいなら、主人公の「心」に大きなドラマを!
憎しみと復讐に生きてきた主人公が、ヒロインと出会い、はじめて恋を知り、世界を愛するようになるとか。
型にはまって生きてきた主人公が、ヒロインや仲間たちとの出会いを通し、忘れていた夢を取り戻すとか。
スタート地点とゴール地点とで、主人公の心に変化がある。
その変化を出来事に絡めてどかんと盛り上げるのが、クライマックス。物理的な動きと精神的な変化をシンクロさせるからこそ、盛り上がる。
……でもカサノヴァさん、スタート地点もゴール地点も、おんなじよね……?
『CASANOVA』は、「いーかげんなチャラ男が、はじめて人を愛し、生き方を変える」話だから、主人公が変化してるって?
ええ~~? 変わりました、彼?
真実の愛に目覚めて生き方を変えたなら、過去の自分の罪の重さを自覚するはずだけど、ソレないし。ちょろっと悩んでたけど、すぐに忘れて総督&ベアトリーチェ救出作戦(もともと無茶な冒険大好き)に入れ込んでたよね。
結局カサノヴァは変わらず、「恋と冒険」を求め、自由を愛して生きるんだと思う。
ベアトリーチェを愛したのは事実だろうけど、愛は彼の人生を変えるには至らなかった。
いつかベアトリーチェの元に戻るとしても、その間数百人の女と関係持ってるんだろうなぁ。それでもしれぇっときれいな笑顔を見せるんだろう。
「嘘はついても騙す気はない」そうだし。
実際、愛を口にしても、貞節は誓ってないしな。
(賢いベアトリーチェはそういうところも含めて、愛を口にしていると思う)
でも実際、カサノヴァは変わりようがないと思う。
カサノヴァの情報が少なすぎるから。
ペテン師だとか魔術を使うだとか抱いた女の数だとか、いろいろ語られてはいるし、口と頭がよく周り、度胸も気っ風も良く、恋愛抜きにしても多くの人に慕われていることは、描かれている。
でも、どうしてそんな破天荒な人なのか、どうして女を取っかえ引っかえするプレイボーイなのかは、語られていない。
もともとそういう人なんです。以上。
千人の女を抱いたとして、それはすべて双方合意の遊びで、誰ひとり本気にはならず、傷ついた女も泣いた女もいない?
だとしたらソレ、かえって「すげー可哀想な情けない男」じゃあ……? きれいでえっちうまいから遊ばれただけ、本気になる価値はない、ってことになるよ……?
本気で愛されていたとしたら、いったい何人を不幸にしたの? 「人生には恋と冒険が必要だ」って笑って不幸を製造し続けていくの?
ふつーに考えるとこわい。
どっちの場合も。
フィクションだから、ふつーに考えてはいけない?
フィクションだからこそ、出来事(千人女を抱いた!)はふつーでなくても、心(千人から遊ばれて平気、不幸にして平気なメンタルって?)は、ふつーであってほしい。
昔、愛した女がいた。愛してはいけない人だった。
だからもう、誰も愛さない。あのひとでないのなら、女は誰でも同じだ。
とか。
失った愛する人の面影を求めて。
とか。
千人斬りの「理由付け」はいくらでも出来る。
そして、そういう理由付けがあれば、そこを突いてひっくり返すことで、カタルシスを演出できる。
でも、カサノヴァはチガウよね?
ノリで千人抱いちゃいましたー、よね?
数おぼえてるから、誰のことも忘れてないから、十把一絡げじゃないですよー。って、本人は不義理をしているつもりはなく、そのときの気持ちに正直に従っているだけ。恋はしても結婚は考えたことがない、責任は取らない。本気で人を愛したことがない。
それはそれでアリだと思う。
そういうふわふわしたイケメンだからこそ、恋をしちゃう女たちはいる。
そして、そういう男が「真実の恋」に落ちるのは、たしかにドラマだと思う。
けど、そのノリだけの軽い恋しかしてない男を「劇的に変化させる」って、難しい。
黒を白にするとか、闇を聖にするとかは、創りやすい。
でも、薄い水色を白に、とか、薄ぼんやりした霧の朝を曇り空の昼にすることで、カタルシス創るのって、難しいよ……。
カサノヴァの設定が薄すぎて、劇的な変化!で盛り上げられないの。
彼は変わらない。
たぶん、彼の魅力は「薄いこと」にあるんだと思う。書き込みされてないから、なんの責任もない。コメディだからと罪のないハッピーストーリーだからと言及を逃れ、なんとなくいい感じにまとまる。それが許される「薄さ」。
彼が突然深刻になっちゃったら、チガウだろうしね。
だから盛り上がらないのは、自明の理。仕方ない。
これは、そういう作りの作品だ。
ストーリーも、そしてキャラクタも。
楽しければいい。
そうやって作られたのだから、それが正解なんだろう。
『CASANOVA』は罪なく他愛なく、しあわせな物語。
だけど、わたしには物足りない。
どうしてか。……を、考える。
ストーリーが少ない。
少なくても他に濃い部分があれば深みは出るけど、少ないだけで終わっている。
そこがつまんない。
平和な世界で平和な人たちがどたばたやって、流れ者のプレイボーイがひとりの女の子と恋愛して悪者をこらしめたけど、やっぱり世界は平和で人々も平和で、プレイボーイはそのまま旅に出て終わり。
……少ないわ、足りないわ。
単純明快で、深刻な悲劇もなく、本当の悪人もひとりもいなくて、誰ひとり不幸にならないハッピーエンド。
それはいい。それはステキ。
そういう世界をあえて描くのは好き。悲劇も不幸も嫌。
だけど。
それなら、せめて、主人公には変化を描こう。
物語のカタルシスは、「出来事(ストーリー)」だけにあるんじゃない。「心(主人公)」にもある。
ストーリーが僅少で薄っぺらいなら、主人公の「心」に大きなドラマを!
憎しみと復讐に生きてきた主人公が、ヒロインと出会い、はじめて恋を知り、世界を愛するようになるとか。
型にはまって生きてきた主人公が、ヒロインや仲間たちとの出会いを通し、忘れていた夢を取り戻すとか。
スタート地点とゴール地点とで、主人公の心に変化がある。
その変化を出来事に絡めてどかんと盛り上げるのが、クライマックス。物理的な動きと精神的な変化をシンクロさせるからこそ、盛り上がる。
……でもカサノヴァさん、スタート地点もゴール地点も、おんなじよね……?
『CASANOVA』は、「いーかげんなチャラ男が、はじめて人を愛し、生き方を変える」話だから、主人公が変化してるって?
ええ~~? 変わりました、彼?
真実の愛に目覚めて生き方を変えたなら、過去の自分の罪の重さを自覚するはずだけど、ソレないし。ちょろっと悩んでたけど、すぐに忘れて総督&ベアトリーチェ救出作戦(もともと無茶な冒険大好き)に入れ込んでたよね。
結局カサノヴァは変わらず、「恋と冒険」を求め、自由を愛して生きるんだと思う。
ベアトリーチェを愛したのは事実だろうけど、愛は彼の人生を変えるには至らなかった。
いつかベアトリーチェの元に戻るとしても、その間数百人の女と関係持ってるんだろうなぁ。それでもしれぇっときれいな笑顔を見せるんだろう。
「嘘はついても騙す気はない」そうだし。
実際、愛を口にしても、貞節は誓ってないしな。
(賢いベアトリーチェはそういうところも含めて、愛を口にしていると思う)
でも実際、カサノヴァは変わりようがないと思う。
カサノヴァの情報が少なすぎるから。
ペテン師だとか魔術を使うだとか抱いた女の数だとか、いろいろ語られてはいるし、口と頭がよく周り、度胸も気っ風も良く、恋愛抜きにしても多くの人に慕われていることは、描かれている。
でも、どうしてそんな破天荒な人なのか、どうして女を取っかえ引っかえするプレイボーイなのかは、語られていない。
もともとそういう人なんです。以上。
千人の女を抱いたとして、それはすべて双方合意の遊びで、誰ひとり本気にはならず、傷ついた女も泣いた女もいない?
だとしたらソレ、かえって「すげー可哀想な情けない男」じゃあ……? きれいでえっちうまいから遊ばれただけ、本気になる価値はない、ってことになるよ……?
本気で愛されていたとしたら、いったい何人を不幸にしたの? 「人生には恋と冒険が必要だ」って笑って不幸を製造し続けていくの?
ふつーに考えるとこわい。
どっちの場合も。
フィクションだから、ふつーに考えてはいけない?
フィクションだからこそ、出来事(千人女を抱いた!)はふつーでなくても、心(千人から遊ばれて平気、不幸にして平気なメンタルって?)は、ふつーであってほしい。
昔、愛した女がいた。愛してはいけない人だった。
だからもう、誰も愛さない。あのひとでないのなら、女は誰でも同じだ。
とか。
失った愛する人の面影を求めて。
とか。
千人斬りの「理由付け」はいくらでも出来る。
そして、そういう理由付けがあれば、そこを突いてひっくり返すことで、カタルシスを演出できる。
でも、カサノヴァはチガウよね?
ノリで千人抱いちゃいましたー、よね?
数おぼえてるから、誰のことも忘れてないから、十把一絡げじゃないですよー。って、本人は不義理をしているつもりはなく、そのときの気持ちに正直に従っているだけ。恋はしても結婚は考えたことがない、責任は取らない。本気で人を愛したことがない。
それはそれでアリだと思う。
そういうふわふわしたイケメンだからこそ、恋をしちゃう女たちはいる。
そして、そういう男が「真実の恋」に落ちるのは、たしかにドラマだと思う。
けど、そのノリだけの軽い恋しかしてない男を「劇的に変化させる」って、難しい。
黒を白にするとか、闇を聖にするとかは、創りやすい。
でも、薄い水色を白に、とか、薄ぼんやりした霧の朝を曇り空の昼にすることで、カタルシス創るのって、難しいよ……。
カサノヴァの設定が薄すぎて、劇的な変化!で盛り上げられないの。
彼は変わらない。
たぶん、彼の魅力は「薄いこと」にあるんだと思う。書き込みされてないから、なんの責任もない。コメディだからと罪のないハッピーストーリーだからと言及を逃れ、なんとなくいい感じにまとまる。それが許される「薄さ」。
彼が突然深刻になっちゃったら、チガウだろうしね。
だから盛り上がらないのは、自明の理。仕方ない。
これは、そういう作りの作品だ。
ストーリーも、そしてキャラクタも。
楽しければいい。
そうやって作られたのだから、それが正解なんだろう。
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