『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』はせっかくの祭り作品なのに、音楽が弱い気がする。

 何度もリピートしちゃった今だから、パレード曲の「微笑みを交わして」とかいい曲だなと思えるし、耳にも残っているけれど。
 初見時は印象的な曲がなくて残念だった。

 『太王四神記』を観たときと同じ。
 画面は派手にいろいろやってて「大作!!」って感じなのに、盛り上がる曲がない。
 リピートするといい曲もあるとわかるけれど、作品の持つ「大作!!」「活劇!!」「祭りだ!!」というイメージからはほど遠い地味さ。

 作曲の太田せんせが大作向きじゃないんだよなあ。
 そしてイケコも、厨二に徹した詞は作れない人だし。

 イケコはミュージカルの人で、アニメやヒーロー特撮の人ではナイんだなあ、としみじみ。
 今はじめて(ええ、はじめて。買うだけ買ってプログラム読んでない)プログラムの歌のページをチラ見したんだけど、ほんと「主題歌」ってのがないよね。
 物語の中の一部を切り取って歌にしたモノばかり。

 テレビアニメのオープニングで毎週流れる主題歌に相当する曲がない。

 サイトーにしろスズキケイにしろ、アニメ・ゲーム系作劇出来る人って、まず主題歌ぶちかますよね。
 「エル・アルコン」とか「戦国BASARA」とか、タイトル連呼して、アニメのオープニングをまんま舞台で表現してみました系。

 ミュージカルである前に、マンガ原作であること。アニメ的手法が適していること。
 ファンの最大の関心事であるビジュアルと世界観を、「この通りだ!!」と真っ先に差し出して、「よっしゃあ、これならイケる!!」とテンションを上げさせる。
 本編がはじまるのはそのあと。

 でもイケコはふつーにミュージカルとして、本編からスタートする。ビジュアルや世界観が合っているかどうかは、おいおいわかる仕組み。

 わたしがイケコオリジナルの原作モノに、初見で肩すかしされるのは、いつもソコだ。
 原作とミュージカルの融合が、半端だ。

 ただ、リピートすればアニメ的な構成より、ミュージカルの方が肌に合うので、「こういうもん」と楽しみ方を見つけられるのだけど。

 本編はミュージカルでいいから、オープニングとエンディングを、派手にアニメアニメしてくんないかなあ。
 とりあえず作曲家別の人にして。
 や、中の曲は太田せんせでもいいから、主題歌は派手な曲を作れる人にお願いしてさー。


 主題歌を使ったオープニングがないから、最初に出会う「歌」が剣心@ちぎくんの歌う「人斬り抜刀斎」なのよ……いきなりド演歌調なのよ……これ、相当びびるわ……。
 演歌でもいいんだけど、その前に派手な主題歌入れて欲しかったよ……そうすれば、舞台のイメージがかなり変わるのに。

 いきなり演歌のちぎくんも大変だなと思ったけど、イケコの「ヲタク理解度の低さ」でもっとも割を食ったのが斎藤@咲ちゃんだと思う。

 2幕で突然「悪・即・斬」と銀橋で歌わされる咲ちゃん。
 斎藤のポリシーを歌にすること自体はいい。つか、キャッチーなフレーズだから、使うべきだと思う。
 問題は、使い方だ。

 この「悪・即・斬」っていう曲、「♪悪・即・斬(歌いながら踊る斎藤)」「♪悪・即・斬~~AH~~♪(コーラス)」という、さびの部分だけ取り出すと、愉快ソングのように思える。
 でも、そうじゃない。
 さびで突然「♪悪・即・斬」と言い出す前は、「これまでのあらすじ解説ソング」だったの!

 地名からはじまるのよ?
 今までの出来事を5W1Hで語られて、「はあ? ナニこの人? そんなの、ここにいるすべての人が知ってる情報ですが??」てな、どーでもいいことを大真面目に銀橋でひとり歌うの。

 んで、そこまで解説をだらだら語ったあとで、突然「♪悪・即・斬」。

 ぽかーん。

 初日の客席の困惑ぶりったら。

 だって、聴いていて、どう展開して、どこへ着地する曲なのか、さっぱりわからないのよ?!

 あらすじからキャッチフレーズ連呼になるとか、思わないし。
 背景には「♪悪・即・斬」の文字が出てるし、女声コーラスが「AH~~♪」とか言ってるし。
 カオス。

 あのさ。
 前半のあらすじ、いらない。
 マジいらない。
 なんであらすじ語り出したの。書くことナイからとりあえず原稿用紙埋めるためにあらすじ書き写しました、って、宿題の読書感想文かよ!!

 「♪悪・即・斬」をやりたいなら、最初から「斎藤一テーマソング」と銘打ってやれ。
 今の時代、メインキャラクタはキャラソン持ちが当然、ひとりずつCD発売されるもんなんだから、ヅカの斎藤もテーマソング持っててもふつう!
 斎藤の「♪悪・即・斬」なのに、なんで前半「加納惣三郎を解説しよう」になってるの?
 イベントで「斎藤一のテーマソングを歌います」でいきなり地名からスタートして加納がどうしたこうした、それで今はこうなってて、って解説されても観客ぽかーんだよ。テーマソングっていうのは、別のステージでそれだけ歌っても世界観が成立するモノでしょうが。

 サイトーくんなら間違いなく、斎藤一テーマソング作ってる!!
 派手な音楽を作れる作曲家と組んで、「斎藤一とはこういう男だ!」とその1曲だけでわかる曲。
 斎藤がひとり銀橋に出て来た段階で、「斎藤のターンキターー!」「テーマソングキターー!」と観客が待ち構える前奏と歌い出しになっているはず。
 『JIN-仁-』の坂本龍馬テーマソングみたいに。ストーリーと関係なく、いきなり龍馬の見せ場来たよね、1曲歌ったよね。

 イケコは「♪悪・即・斬」さえやれば、サイトーくんやスズキケイがやってウケた「アニメ的ウケ狙い曲」になると思ったんだろうけど。
 根幹からチガウ。

 イケコがやってるのは、ミュージカル手法。ストーリーの中で、台詞が歌になった、ってやつ。
 サイトーくんが得意なアニメ手法は、ストーリー関係なく、その場の流れとも関係ない、「そのキャラクタの見せ場」でしかない歌とシーンを、ストーリーを中断してぶっ込むこと。

 台詞が歌になった、というミュージカル手法のため、斎藤さんは気の毒なことに「日常の中でいきなりあらすじをだらだら語ったあと、突然、悪・即・斬、と繰り返す変な人」になってしまった……。
 アニメ手法なら、どんだけキザだったり恥ずかしかったりする内容を歌っても、「テーマソングなんで、ストーリーともキャラクタ本人とも別次元です(キリッ)」で済むのに。歌い終わってから、何食わぬ顔でストーリーに戻れるのに。

 咲ちゃん、大変だなあ。
 ひとりだけ半端なことさせられて。

 でも、とりあえず咲ちゃんかっこいいっす。
 最近とみに声が良くなってるし。
 演出がサイトーくんなら良かったのにね……きっとすごくかっこいい場面になったろうに。

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