音楽学校文化祭には、89期以来ほぼ毎年行っている。
 観てないのは99期のみかな。99期だけは「贔屓の主演公演は全日程観劇する」というスタンスゆえに、公演がかぶって観られなかった。

 文化祭を観に行くのは単に、楽しいからだ。
 短い時間にいろんなモノが詰め込まれていて、すげーゼイタクで楽しい催しだ。

 もちろん、未来のスターを見つけたい、好みの子を探したい、なんて気持ちもあるが、わたしの海馬ではそんなん無理、学生の顔なんかおぼえてらんないよー。そもそも個別認識できないし。
 でもま、アタマが悪いなりに気になる子を見つけたりもする。つっても、多くの場合はそのとき限りで、入団後は見失い、新公で役が付く頃に「あれ、この子って文化祭で気になった子じゃん!」と思い至ったりする。
 文化祭から一貫して気になる子は、あまりいない。古くはだいもんとかせーことか、ちょっと経ってからりくくんとか、仙名さんとか、まゆぽんとかちゃぴとか、最近では縣くんあたり?
 相当わかりやすい人しか、わかってないな(笑)。

 毎年観ているとルーチン化してわたしの中で新鮮味がなくなっていたのだけど、去年の101期文化祭で初心に戻って大感動して、ますます「文化祭」が好きになったもんじゃった。

 そして、こんな判別力も記憶力もない年寄りだけど、毎年文化祭を観ることで、勝手に「文化祭攻略法」を編み出す(笑)。
 や、文化祭のプログラムって毎年骨組みが同じだから、肉付きが多少違っても、見えてくるモノがある。
 それゆえに、出演者のことをなーんにも知らずに席に着いて、1回観ただけで「あの子いいな」「あの子がこの期でいちばん男役度高い」とか、勝手なことを言えたのよ。

 贔屓組公演はじまっちゃって、しかも休演者でバタバタしている中、今年も文化祭を観るわけだけど、大丈夫、例年通りなら落ち着かない中ざーっと観るだけでも、ちゃんと楽しめるわ。

 と思って油断して観劇した、宝塚音楽学校第102期生文化祭

 …………完全敗北しました…………。

 わたしのささやかな攻略法なんて、役に立ちませんでしたニャ……。

 わたしは目もアタマも悪いので、いきなり同じ髪型・同じ服装の同じ年頃の少女たちが40人近くぞろっと同時に並ばれても、個別認識出来ません。
 だから、文化祭第1部の日本舞踊でまず目を慣らして、そこでのソロや、続くクラシック・ヴォーカルの子を、うすぼんやりと頭に入れて、本格的に個別認識に入るのは、ポピュラー・ヴォーカルにて。
 ポピュラー・ヴォーカルで気になった子を、第2部の芝居で確実に記憶と結びつける。
 ここまでが勝負ですな。
 第3部のダンス・コンサートでは、人の判別をしようなんて思ってません。じっとしてないから、顔なんかわかんないもん(笑)。
 2部まででかなり強い記憶を得ているか、あるいはダンスにて相当な出番と華があるか、しないことには、ダンス・コンサートで誰か個人を追いかけることはしないし、出来ない。

 今までダンス・コンサートでわたしの目を奪ってくれたのは、93期りくくんと、94期仙名さん、95期ちゃぴくんぐらいのもんだ。
 それ以外の人たちは、それまでにちゃんと個別認識完了していたから、ダンス・コンサートでも見分けられたってだけ。

 だから今年も、例年に倣ってポピュラー・ヴォーカルで個別認識しようと思った。
 が。

 ポピュラー・ヴォーカルの、プログラムが観たことナイものだった……。

 ぼーぜん。

 えーとですね、ポピュラー・ヴォーカルってのは例年、「タカラヅカ・ヒットソング・メドレー」でございましてね、使われる曲がほぼ決まっていたの。2パターンくらいあるんだけど、どちらも似たり寄ったりの内容で、起承転結と盛り上がり、要になる男役スター、締めになる娘役スターとか、役割りもほぼ決まっていたの。
 だから、ソングリストを見るだけで生徒の力量とかポジションとかが、推察出来たの。
 また、使われる曲がちょっとヅカファンやるだけで、5万回は耳にすることになるよーな、超メジャー曲ばかりでね。知り尽くした曲だからこそ、誰が歌ってもある程度楽しめるし、記憶のきっかけになりやすい。
 観劇しながらメモを取ることはしなくても、「愛あればこそ」を歌った子がよかったな、とか、「丘の上のジョニー」の子はクドくて今後に期待だな、とか、曲に記憶を紐づけることが出来るの。そうすれば、あとからソングリストを眺めるだけで、いくらでも記憶を起こすことが出来る。

 そう、曲と記憶、って、すごく深い要因だ。
 日常でもあるじゃん、街中で学生時代に流行っていた曲を予期せず耳にして、その途端、当時のことがだーっと脳裏に浮かんじゃう、とか。
 なつかしい曲を聴くと、当時のことを思い出す。
 音楽ってすごいよ。精神的タイムマシン。

 だからわたし、音校生の記憶は、曲頼みなの。アタマ悪いけど、曲に記憶を紐づけることは出来るから。

 それがさ。
 102期生文化祭ってばさ。
 いつもの「宝塚歌劇主題歌メドレー」ではなく、「入江薫宝塚歌劇作品集」だったの。

 宝塚歌劇団には100年分の楽曲があり、その中には名曲として長年歌い継がれてきた曲がある。そして、宝塚歌劇団には100年の歴史を支えたたくさんの作曲家たちがいる。彼ら作曲家たちにはそれぞれ名曲がある。
 ……当然だよな。なにしろ100年だ。

 今までは「宝塚歌劇主題歌メドレー」であり、100年の中から、よりすぐりの名曲で構成、だったの。100年の時の流れを経て生き残ってきた現役曲ばかりだから、どこかで耳にしたことがあるものばかり。
 だがしかし。
 その100年の歴史の中で、ただひとりの作曲家に焦点を絞ると、だ。
 「その時代、その作曲家比では有名・名作」かもしれないが、100年という膨大な時間と現代という基点から見ると、「聞いたことないよ、大していい曲でもないよ」が、てんこ盛りですがな!!

 でさ、聞いたこともないし、今の時代にはじめて聞くと古くてぜんぜん良く聞こえない曲だとしても、プロの歌手やエンターテイナーが歌うなら、違うと思うの。
 「入江薫メモリアルコンサート」という興行があること自体は、わかるの。

 でもね、素人の学生が、知らない古い曲を歌っても、魅力が発揮されにくいのよ……。

 テレビの素人のど自慢でも、誰も知らない歌より、みんなが知ってる歌の方がより伝わるし、カラオケでも知らない歌ばかり歌われるより、みんなが知ってる歌の方が盛り上がるよね。

 いやあ、無理でした、今年の文化祭。
 わたしには難易度高すぎた。
 知らない曲ばかりじゃ、いつものようには楽しめないし、記憶にも残らない。
 一度聞いただけで歌をおぼえられるのーみそ持ってないから、知らない歌を10曲とか連続で聴いて、3曲目と5曲目はどんな曲だった? 歌ったのは39名の同じ格好の生徒の内の誰と誰? と聞かれて、判別出来るわけないっすよ……。つか、みんなはできるの?

 わたしは、諸手を挙げて降参、早々に尻尾を巻きました。

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