『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』2回目の観劇時、わたしは2列目にいた。

 わたしは最前列でもオペラグラスを使う人だ。
 後方席でオペラグラスを使うと役者の顔が見える。前方席で使うと、表情の細部まで見える。
 わたしは、細部まで見たい人だ。

 映像ではなく、ナマの舞台だ。
 決められたカメラアングルしかない映像ではなく、坐った席によって見えるモノは違ってくる。
 わたしは、そのときその座席でしか見えないモノが見たい。
 最前列でオペラグラスなしで舞台全体を見るのももちろん好きだし、ここぞという場面で、役者の表情の筋の動きやまつげのふるえまで見つめたいとも思う。

 なんのツテもカネもない一般人ゆえ、前方席に坐れることなど滅多にない。
 だからこそ、味わい尽くすためにも、膝にはオペラグラス準備。いつでも、好きなだけ好きなように、楽しめるよう。

 しかし、周囲にオペラグラスを使っている人は、いなかった。
 えー。わたしだけぇ?
 なんか、やりにくいなあ。や、わたし、ひと目気にするんですよ、空気読むんですよ。小心だから。
 でも、使うけどね、オペラ!

 誰も同志がいない、ロンリネスなオペラ使いをしていたというのに。

 アル@だいもんが悪者@イリヤくんに顔斬られました、メアリー@せしこの部屋に逃げ込みました、メアリーのベッドで眠りました……。
 で。

 いっせいに、周囲のオペラグラスが上がった。
 1列目だろうと、2列目だろうと。見渡す限り、ざざざっと。

 ちょ……っ。
 なんなの突然!!

 みんな、そんなにだいもんの寝顔が見たいのかっ!!(笑)

 見たいよな。
 そりゃ見たいよな。
 見るよな。
 「2列目だもん、オペラグラスいらないよね」なんて人たちも、「ちょ……っ、これは……!!」ってあわててオペラグラス出すよなっ?!

 同志よ!!

 わたしはひとりではなかった……!
 孤独なロンリーウーマンではなかったのよ!
 みんなと同じ、世界はひとつ、心はひとつ、なんのへだたりもなく求めるモノは同じだったのよ!!


 いやあ、内心大ウケしました。
 みんな、正直過ぎるわ……(笑)。

 幕間、
「オペラいらないと思ってたのに」
「思わずオペラグラス使っちゃった」
「悪いかなと思ったけど、ここはもう見るしかナイ! と思って……」
 などなど、周囲の会話が聞こえてきて、さらにウケる。
 いずこも同じ……。
 みんな、考えることは同じなのよ。

 寝顔に食いつくのは、ヅカヲタのサガと言っていいでしょう。

 いやあ、もちろんわたしも、盛大に食いついてます、だいもんの寝顔。

 おかげで、せしこさんとカレンさんの会話は耳でしか聴いてません……。

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