やっぱりやっぱり、うまくなってる、暁くん!!

 新人公演『1789-バスティーユの恋人たち-』観劇。

 大作の新公は楽しい。役替わり公演の意味もあって楽しい。
 だからこそ、ある程度の基礎力のあるキャストで観たい……そう思っていた。
 だから、主演が発表になったときに落胆した。
 劇団推しのへたっぴちゃんが主演か……と。劇団は大作の主演をさせて箔を付けたいのだろうけど、それを見せられる観客はいろいろつらいなと。

 辛辣ですまん、わたしの暁くんの評価はとても低かったんだ。
 『THE MERRY WIDOW』と 『THE KINGDOM』で、「今の誰?!」と二度見する勢いで目立っていたことが、忘れられなくて。
 声を発するだけでびっくり、姿もきれいじゃなくてびっくり。特に、むちむちぷりんのお尻にくらくら。
 てのが、わたしの暁くんの刷り込み印象。

 女の子としてキュートでも、男役としてはまだまだ魅力に欠けるビジュアルと、学芸会演技。
 だけど、劇団が「将来のトップスター」として特別扱いをしまくっている。
 そういう印象の若手スターさんには、感情移入しにくい。

 わたしは人間が小さいので、「顔が好み」だとそれだけで評価が甘くなる。や、舞台人は「鼻」です、鼻。高い鼻が好みなの。
 暁くんは好みの顔立ちでないがゆえに、「好みだから底上げして観ちゃう!」フィルタもかからない。


 ところが、だ。

 今回の本公演を観てびっくり。
 暁くんは、へたじゃなかった。
 十分、よくやっていた。

 え? わたしの目が、耳が悪いのかな? ハードル下げすぎて、基準がおかしくなってる??

 抜擢された若手スターとして、必要な分だけ、成果出してるよね?? ね??

 とまあ、自分に自信がないもんで、周囲の意見にキョドってみたり、日和ってみたり。

 でも改めて新公を観て。

 うまくなってる。

 ふつうに主演として、安心して観ていられる……!


 ロナン@暁くん、よかったです。

 無理のない少年。
 等身大の、青春。
 もちろん新公だから、周囲のレベル値の兼ね合いもあるにしろ。

 抜擢にそぐわない実力ゆえに苦手、だった暁くん……これならもう、苦手じゃなくなる?! わーーい!! 苦手な子が減るのは大歓迎っす。

 ロナンの歌って難しいと思うの。
 だけど暁くん、よく歌ってる。
 素直で、丁寧な歌声。

 そして、役割の大きさというか、煩雑さに振り回されていない感じが、大物っぽい。
 大変だと思うんだけど、大変さも見えるけど、それだけじゃない、「ロナン」としての感情の動きが見える。

 経験は大きいんだな。
 前回の新公は、もっといっぱいいっぱいだった。
 やること・やらなきゃいけないこと、がぐるぐる回っている様子で、それ以上を表現する余裕も技術もなさそうだった。
 だけど今は、こうして手順以外のことを表現出来てる。

 「成長する」って、言葉では言うけど。
 そうか、こういうことか、と理解した。

 小さなコップだと、少ない水しか、入らない。
 ちょっとの水でいっぱいになって、動かすことが出来ない。なにかしようとしたら、こぼれてしまう。
 こぼさないようにしているだけで、いっぱいいっぱい。

 それが、コップがひとまわり大きくなった。
 前と同じ両の水を入れても、こぼれない。それどころか、動かすことも出来る。水はコップの中で揺れるけど、コップに余裕があるから、こぼれない。

 コップが大きくなった……成長、した。

 そういうことなんだ。
 あんなにいっぱいいっぱいだったのに、今の暁くんは、水をこぼさないんだ。
 動かしてもこぼれないから、ああして動かしているんだ。

 手順を超えて、素直に心を動かす。
 素直な芝居だと思うのは、ロナンに苛立ちが見えること。ロナンってわりと、不機嫌なことの方が多い役だと思う。その小さなささくれを、ひとつずつ拾っていってる。
 ああ、素直な芝居だな。
 動く心を、台詞のひとつずつを、丁寧に拾い続けている。

 それで全体像がどうなのかまでは、把握していなさそうだけど。
 それはいいよ、ひとつひとつが積み重なって、あとは観客がつなぎ合わせるから。


 いやあ、よかったです、暁くん。
 本公演もどんどんうまくなってるし。
 このまますくっと育って欲しいな。
 トップスターになることが決まっているなら、早いことそれに相応しい実力を得て欲しいっす。
 観客として、ヅカファンとして、心からそれを望んでる。

コメント

日記内を検索