前日欄でちょっと名前を出したけれど。
 『1789-バスティーユの恋人たち-』のフェルゼン、って、なんつーか、すごいね(笑)。

 感動したことはさー、タカラヅカにおけるフェルゼンという役は、もれなくKYでなくてはならないのか! ということ。

 植爺作『ベルサイユのばら』のフェルゼンは、人格破壊された、ものすげー人物造形なんだけど。
 空気読めないレベルじゃない、人としてありえない思考言動行動の人なんだけど。
 それを何十年何十作と続けてきたから、もうそれ以外存在しなくなってるのか?? とウケるくらいには、『1789』のフェルゼンのアホアホっぷりはサワヤカに突き抜けてました。

 まず、初登場シーン。
 もう会うのは自殺行為、てな雰囲気なのに、それでも愛するマリーちゃんと密会いそいそ。
 このときのアントワネットも大概バカ女なんだけど、対するフェルゼンがまた、バカ女の他愛ない言葉を額面通り受け止めてうろたえるバカ男で。
 ……ラヴラヴカップルの「もうあたしのことキライになったのね」「そんなことないよ、愛してる!」「嘘よ嘘、キライになったのよ」「愛してる君だけだ!!」って定番のいちゃいちゃ会話だから、これはもう定型文としてスルーすべきとしても。
 このバカップルの痴話喧嘩に巻き込まれたロナンに対し、本気で剣を抜くフェルゼンの、ドアホさはどうしたもんか。

 どう考えても、ロナンは悪くない。巻き込まれ、被害を受けただけ。
 わけもわからないでいる被害者の言葉が多少礼を欠いていたとして、仕方ないだろうに。
 てゆーか、場所的に場違いなのはフェルゼンたちであって、場所柄にあった物言いをしたロナンに、自分たちだけが生きる世界のルールを振りかざして激怒する、ってフェルゼンどんだけ小物なん……。
 銭湯に入っておきながら、「高貴な私の前で裸でいるとは、無礼者め!」と他の客に怒るよーなもんっすよ……。

 しかもフェルゼン、剣抜くし。

 丸腰の一般市民相手に、プロの軍人が抜刀……。
 これマジで最悪ですよ。お隣のピエール坊やを後ろからピストルで騙し撃ちしたド・ゲネメ公爵並の外道ですよ……。
 貴族だから、平民なんか無礼討ちにしていいって思ってるのよね。や、この時代の貴族なんだからそう考えてるのがあたりまえだろうけど、現代日本でそれを披露する意図はどこに?
 全体的な描き方からして、「フェルゼンは外道」としたいわけではなさそうなのに。

 あと、さらに最低なのは、この一連の言動が、アントワネットへのアピールに見えること。
 本当に心からそう思って行動しているのではなく、アントワネットへの点数稼ぎでやっている、ように見えるのだわ。わたしには。

 あー、いるよねー、こういう男。暴力を振るうことで「オレかっこいい」とアピールする男。レストランで彼女の料理に虫が入ってた、てなときに穏やかに注意するんじゃなくて、怒鳴りちらして暴力ちらつかせて、店員を土下座させて泣かせて、「ほら、お前のためにやってるんだぜ、チラッチラッ」と「かっこいいオレ」アピールする、みたいな。
 こんなことされたらふつーは、即行別れると思うけど。というか、「お前のためにやってるんだぜ、チラッ」の段階で彼女、逃げ出して店からいなくなってると思うわ。

 「こんなにアナタのことを想っています」アピールで、その場に居合わせただけ、という、無関係の丸腰の市民を殺害……。通り魔殺人レベルかよ。

 と、ここまでも「これ以下はそうそうないぞ?!」レベルの最低状態。

 なのに。

 まだ、下があるのだ!!(笑)

 かっこつけて剣を抜いたフェルゼン。

 剣の腕は、へっぽこだった。

 ちょ……。
 ギャグかよ!! ヨシモト並……。

 まさおさんも悪いんですけどね……。ロナンじゃなく、まさおさん(笑)。
 まさおがもう、ダンス苦手な人は殺陣も苦手なのか!と感心するレベルでへっぽこな動きをするので、相乗効果になっていて、フェルゼンだけのせいじゃないとは思うんだけど……。
 あまりにもふたりして、へなちょこな殺陣を繰り広げるもんで、見てられない。

 これ、なんのためにやってるの?
 フェルゼンの人格を貶めて、かっこ悪い主役を見せられて、演じている本人たちは無駄に大変そうで、誰も得しないんですが。

 いやもおほんと、最低最悪でした、フェルゼン様。


 初登場がこれでしょ。
 フェルゼンはアホの子、と自己紹介したよーなもん。

 その「アホの子」設定を踏まえて。
 会うのはNG、アントワネットのためを思うなら彼女の周りをうろちょろしてはいけないのだとわかりきっているのに。

 王太子を亡くし、アントワネットが大変なことになっているその最中……国をあげて葬儀やってる教会に、わざとらしい変装をして、まぎれこんでるとか……ギャグ? もうマジで、笑い取るためにやってるのかと。

 いやその、なにかしら彼にドラマがあるなら、違ったかもしんないけど。
 台詞もなく、変装してこっそり……でも、フェルゼンだとバレバレな様子で出て来るもんだから。
 演出としてね、「わかる人だけにわかる」じゃなくて、観客すべてに「あ、あそこにフェルゼンがいる!」とわからせなくてはならないわけで、従って「変装してこっそり」にはならないの、「変装してるくせに、バレバレ」という姿になるの。
 仕方ないけど……アホ度がさらにランクアップ!
 アホや……こいつ、マジでアホや……(笑)。

 で、立場をわきまえたアントワネットから三行半突きつけられ、今度はほんとに会いに来るし。
 で、完膚なきまでに拒否られるし。

 キラキラ着飾りまくったフェルゼン様が、地味なルイ16世に負けてすごすご退散……って、画面的にもまた、ギャグっぽい。


 植爺『ベルばら』もひどいが、イケコ『1789』もひどいな、フェルゼンの扱い。
 フェルゼンってのは、アホでなきゃいかんルールでもあるんかい。
 あ、景子タンのフェルゼン@『ジャン・ルイ・ファージョン』は違ったか……。

コメント

日記内を検索