『1789-バスティーユの恋人たち-』初日に行ってきました。

 日本初演海外ミュージカル初日! わくわくっすよ!
 『スカーレット・ピンパーネル』初日はすごかった……舞台も客席も、興奮が渦巻いてた。
 『ロミオとジュリエット』初日も楽しかったなー。こんなに美しい世界が……と胸熱だった。

 だから期待はむくむく。
 イケコの日本初演海外ミュージカル初日。
 過去の感動を新たにまた、体験出来るのか?


 えーと。

 期待していたモノとは、違いました。いろいろと。

 わたしはどうしても、『スカーレット・ピンパーネル』初日の記憶が大きくて。
 すごいものを観ている……あたし今、すごいものを観ている……!! と、心が奥の方からふつふつと沸き立ってくる感じ。
 アレをおぼえているから、どうしても比べちゃうのね。
 『スカピン』のときみたいに、わくわくしない、と。

 いちばんわかりやすくしょんぼりしたこと。

 オープニングが、地味。

 や、地味どころじゃないな。
 オープニングありました、って、だけ。ほんの一瞬、言い訳程度に、ちょろっと。

 テンション上がらねーー。
 むしろ、急落した。
 「イケコの日本初演海外ミュージカルよ、初日よ、どんなんかなー、わくわくっ」とふわふわしていた気持ちが、どーーんと地面まで落ちた。

 そして、どんだけオープニング期待していたか、ミュージカルのオープニングが大切かを、身をもって知った。

 はじめて観た、『エリザベート』。
 2階2列目だっけかで観た、初演初日。仮面の女たちが柩を開けて、そこから死者たちが甦り……波のように重なりつつもワンフレーズずつ耳に飛び込んでくる歌声、不気味に不吉に、だけど美しく、死者が語る……「あのひと」のことを。
 はじめて観る「美しさ」にドキドキした。
 「死」……トートの登場、自在に場を操るルキーニの狂気。静からはじまった舞台は、強い脈動へ駆け上る。
 タカラヅカといえばキラキラぴかぴか、ミラーボールみたいな美しさだと思っていた。煤の中で鈍く光る美しさがあるなんて、表現出来るなんて、思ってなかった。

 『スカーレット・ピンパーネル』、舞台の中央で異彩を放つギロチン、本能的な禁忌、おぞましさとおそろしさが背中を這い上がってくる……暗い咆哮「マダム・ギロチン」の歌声。
 そこから、一条の光、清浄な輝きが伸びるかのように、「ひとかけらの勇気」につながる……あの、ドラマ。幾重もの襞を持つ塊を、鋭利な刃物でそこだけ切り取って差し出されたような、息を飲む感覚。
 こんな濃密な感動を、この短い間に創り上げてくるなんて……タカラヅカってすごくね?? と、改めて思った。

 『ロミオとジュリエット』、ここはヴェローナ、生まれたときから憎む敵がいる……そう歌い、踊る男女。
 ぞくぞくする美しさ、狂気、憎悪、破戒。負の感情が満ち、歪みは渦となって華を咲かす。いびつだからこそ、目が離せない魅力。吸引力。死の影、哄笑、愛の光、またたきの夢。
 血が沸き立つ感覚。かっこいい……!! 拳を握る、握らずにはいられない、高揚感。

 イケコ印の海外ミュージカルって、そういうもんよね?
 それを期待していいのよね?
 それを期待していたのよ。
 どんなものすごいオープニングを観られるのかしら、って。
 血がふつふつと沸き立つようなかっこよさかしら、背筋がぞくぞくするようなドラマチックさかしら、耽美と退廃の究極の美かしら。

 そう期待しまくっていた、だけに。

 単品の門いっこに群がる群衆、そこを登っていく男ひとり、どこかで聞いたよーなデジャヴと空耳に気を取られる、録音台詞ひとつ……で、終了。

 え?

 オープニング、は?
 オープニングはどこ?
 まさか今のが、オープニング?
 『エリザベート』の霊廟、『スカーレット・ピンパーネル』の「マダム・ギロチン」、『ロミオとジュリエット』の「ヴェローナ」に相当する場面……?
 まさか? ちがうよね?
 そ、そうか、これからかっこいいオープニングがはじまるのよ、今のはいわばルキーニの銀橋、愛と死のカーテン前ダンスよ。
 幕が開いて、ここから本物のオープニングがはじまるのよ……!!

 そう気持ちを持ち直し、迎えた次の場面は。

 カーテン前芝居、でした。
 みんな横に並んでわいわい。

 えええ。
 これって本編……?
 もう本編はじまっちゃってんの?
 じゃあやっぱり、さっきのしょぼいのがオープニング??

 ショボっ!!

 なにこれ、しょぼすぎーー!
 つまんなーーい!

 わたしの期待に盛り上がった気持ちをどうしてくれるの、どこへ持っていけばいいの。

 開始数分で、盛大に、心が折れました……(笑)。

 や、勝手なんだけどね。
 派手なオープニングを付けなければならない、という決まりはないんだし、そんなの些末なことかもしんないけど。
 わたしには、かなりのダメージだった。

 しかも、次に繰り広げられているドラマがなんか唐突というか、わざとらしい感じで。
 まさおが突然「このカラダだけ」と言って服をはだけるし。

 ぽかーん。

 はだける必要、ナイよね……?
 いっそマジに裸になるなら意味もあるけど、エア脱衣プレイだけ、って、それ誰得……ファンサービス?
 トップスターのエア脱衣にファンはハァハァ?

 すみません、かなり引きました……。
 ナニこの演出、大丈夫かこの芝居。

 掴みでコケた物語は、仕切り直すのに多大な労力が必要。


 や、結局のところ、ちゃんと楽しかったし、感動したんだけど。
 ただ、初日初見時のわたしは、1幕最初からかなりしょぼくれて眺めていた、という話です。

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