わたしは男役の「声」が好き。
 女の子まんまじゃなく、舞台人として努力して研究して創り上げた、後天的な声。

 芝居や歌のうまいへただけでなく、「声」が特徴的な人を好きになる傾向がある。

 トドはあの声だから、いいんだと思う。
 滑舌良くないし、ナニ言ってんのかよくわかんないときも多々あるんだけど、あの野太い声が好き。
 『バロック千一夜』だっけ? 黒塗りチリチリ前髪に刈り上げヘアで、アフリカ語でなんか叫んでたの。あれときめいたわー。

 ケロは絶対あの声だから萌えた。悪声、と言われるかもしれない、しゃがれ声。おまけに歌がえーらいこっちゃ!な人だったし。
 わたしにとっては、耳に入りやすい、いい声だった。どこにいても声だけで「あ、ケロだ」とわかる、差別化された響き。

 まっつの美声っぷりは、言うまでもなく。

 姿が好みで、声がそれに拍車をかける。説得力を持たせる。
 反対に、静止画では好意や興味を持っていたのに、声を聴いて苦手になった人たちもいる。
 声って大事。


 タカラジェンヌはいずれ退団するし、男役は女性に戻る。
 芸能活動をする人たちは、とりあえず髪を伸ばしてスカートを穿くわけだけど……「声」の違和感は大きいままだ。
 10年以上かけて作った男役の声……女性としては不自然な低く太い声を、女性の声に戻すことにも、苦労する印象。
 女優やるのに、だみ声はマイナスだもんな。やっぱ透き通った高い声が求められるもの。

 それがあたりまえ、仕方ないことだとわかっちゃいるが。

 男役の声を、矯正して無くすことを、もったいないと思う。

 10年以上かけて、得た声なのに。
 創り上げた声なのに。
 それをまた変えていくなんて。
 もったいない。
 惜しい。

 もちろん、一度身についたモノは、その後は必要に応じて取り出して使えたりするんだろうけど、日常で使っていたときと、音色が変わるのは必然。
 女性の姿で男の声を出す必要は、日常にはもうないものね。


 ああほんとうに、わたしは、磨き抜かれた男役の声が好きなんだなあと、久々にキムくんの男役声を聴きながら思った。
 タカラヅカを卒業して丸2年以上経つのか。それでも舞台のキムくんはわたしの記憶にあるまんまのキムくんに見えたし、その美声もそのまんまだった。
 この声を、もっともっと、聴いていたかった……。

 未練だな。
 キムくんが好きで、彼の時代の雪組が好きだった。あのころは、いろいろあったにしろ、しあわせだった。
 過去の記憶なんてもんは、いつだって美しく、そして切ない。

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