年寄りの昔語り、その2。『王家に捧ぐ歌』への思い入れを語る。
 『王家』、好きだーーーー!! 響子さん好きだーー!的な絶叫。(通じるのかコレ)


 んで、当時のキムシン作品といえば「北京の民」。
 わずかな主要キャラ以外は全員「北京の民」「エジプト兵」「大和の民」とちょー雑なひとくくり。同じ衣装に同じ場面、ただ出て来るだけそこにいるだけデコレーション。
 『スサノオ』の大和の民役なんて、「民」という役名で1場面に100人以上出てたんだよ、初舞台生もいたから。ヅカ史に残るんじゃね? タカラヅカ版ギネスブックがあれば、不動の1位、これを超える作品は未来永劫現れない、いや現れなくていいよレベルぢゃね?

 まあそんな芸風の人ですから。
 贔屓が下級生で、贔屓組で『王家』やることになったら、ちょっとつらいかもしんないけど。

 上から5~6人目くらいの番手にいる男役ファンだったら、楽しいと思うな。

 男役の主要キャラは、主人公ラダメスの他は、ウバルド、カマンテ、サウフェ、ケペル、メレルカ。名前のあるこれらの役なら、それぞれリピートする楽しみがある。

 わたし、『王家』のキャラクタたちがほんと好きで。
 ご贔屓がウバルドだったから、ウバルド中心に観ていたけれど、他のキャラも観たくてしょーがなかった。目がたくさんあれば、他キャラも観るのに!! と、じれったかった。
 それぞれドラマがあってさー。1回観るだけの一見さんなら、真ん中の芝居しか観ないから、ラダメス・アイーダ・アムネリス以外は全部ただの「脇役」、「役がなくて可哀想」かもしんないけど、リピート基本のファンには、1幕2幕通し役で「人生起承転結」を眺められるキャラは楽しいよー。


 キャラが立っているのはエチオピアチーム。
 ウバルドはワイルドで激しい男。「王子様」という言葉がここまで似合わないキャラもないよな、てな猛々しさ。最終的には狂気へ至る。……妹アイーダを、男として愛しているように見えたのは、初演の中の人のせいかもしれない。

 カマンテは、ウバルドの副官ポジかな。いつもそばに付き従うイメージ。あの王子にしてこの右腕あり、という、こちらも荒っぽい男。ただし、ウバルドよりは冷静というか、冷めた部分あり。突き放しているというか、荒んでるというか。底光りするクールさを、ワイルドさの中に持つ。
 もっとわかりやすくクールにした方が、ウバルドとの差が出ると思うんだけど、エチオピアさんたちみんな黒塗りだし熱いしね。

 でもってエチオピアチームでわたしのいちばんのお気に入り、サウフェ。乙女ゲームに絶対いる、優しい文系美青年。チームではたぶん最年少、癒しキャラだったんじゃないかな?
 この優しい若者が、エジプトへの憎しみに壊れていく様は、実にわたし好みだ。
 泣き虫で、いつも大体泣き崩れているだけに、狂気が蝕んでいく様は、戦慄っすよ。うわ、こわい、この子こわいよ~~! って思ってた。わたしがウバルドのファンじゃなかったら、サウフェだけガン見する日を作れたのに!


 一方エジプトチームは、あまりキャラが立っていない。
 ラダメスとその友人たち、という感じ。
 星担の友人が「『王家』観たことナイ人から、『宙組てっきり役替わりあるんだと思ってた、主役以外の主な配役で役替わりすればよかったんじゃ?』って言われたんだけど、無理だし。ケペルとメレルカで役替わりしても、意味ナイし、観客見分けつかないし!(笑)」と言ってたけど、まさにソレ。
 カマンテとサウフェは違いもわかるけど、ケペルとメレルカを見分けるのは上級スキルが必要じゃね?
 初演のイメージが強すぎる……というか、初演のれおんがあまりにナニも出来ずに突っ立っているだけだったから。衣装同じ体格同じ、いつもふたり一緒に出て同じ意味のことをふたりで分け合って喋る、歌う。それがエジプトチームのふたり。学年ゆえにケペルの受け持ちが多い、という。
 それでもわたし、ケペル好きだった(笑)。しいちゃんの暑苦しさと大芝居っぷりが、役に合ってた。

 ケペルは既婚者で、家に帰ればいいマイホームパパなんだよ、とか、当時友人たちとよく話したなあ(笑)。
 そんな背景を想像出来るくらいには、キャラ立ってたよ。

 ケペルがキャラ立ちしてる分、メレルカは空気だったけどなー。
 いちばんおいしくないというか、扱いに困るのがメレルカ。
 ケペルを演じていたしいちゃんへの配慮だろうけど、「ラダメスの友人ふたり」としてひとまとめにされているわりに、いちいち「先に立つのがケペル」だったのよね。登場する、声を出す、動く、触れる。それがいつもわざわざ、ケペル。んで、ひとりで済む役割の動きのときは、ケペルだけで終了、メレルカはただその場にいるだけ、になる。だから、その行動から「ケペルってこんな人」と見えてくるけれど、メレルカはわからない。
 そのへん、再演ではなにか工夫がされているだろうか?


 初演はご贔屓が出ていたため、どうしてもご贔屓中心の視界になってしまって、気になるところ、見たいところがあるのに、そこまでオペラを向けることが出来なかった。
 好きな作品の再演はうれしい。初演で追うことが出来なかったあの役をオペラで追うぞ!と。
 今からわくわくしている。

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