物語の中心にいる。@新人公演『カリスタの海に抱かれて』
2015年4月10日 タカラヅカ そんでもって、新人公演『カリスタの海に抱かれて』の感想、続き。
アリシア@みれいちゃんはうまかった。
安心安定の出来。
だがしかし、カルロ@マイティと合っていたかは、わからない。
あとから新公のことを思い出すとき、浮かぶのはアリシア単体だ。
カルロは関係ない。
みれいちゃんはあまりにも、みれいちゃんひとりで、存在していた。
カラダの厚みがしっかりした、立体感のある女の子。
実際の体格のことではなく、舞台の存在において。
なにしろ舞台だから、背景はハリボテ、板や布だと見ればわかる。そんななか、みれいちゃんには厚みがある。彼女が絵に描かれたモノでもCGでもない、生身の人間だとわかる。そこに存在していることがわかる。
それが魅力でもあり、タカラヅカ的にどうかな?という点でもある。
アリシアはひとり色濃く存在し、物語を進めていた。彼女こそが主人公だった。
マイティも濃さでは負けていないので、彼女の横にいてかすむことはないんだけど、色が融合していないから、ただ「主張の激しい色がふたつ並んでいる」状態になっていたような。
トップコンビが演じる役、親和することが前提のタカラヅカの主人公とヒロインは、そーゆー「色がふたつ並列」だと、なんとも違和感があった。わたしには。
みれいちゃんが面白かったのは、アニータ@乙羽ちゃんとの絡み。
アニータは別格役というか、物語の外側で煽るだけの特殊なキャラクタ。……そういう役なんだけど、乙羽ちゃんはそれでも、「タカラヅカ」の娘役さんなんだ。本役さんに倣い、独特のおばさんキャラを作ろうとしているのかもしんないが、持ち味が「娘役」。逸脱してない。
タカラヅカ作品とは違い、外部作家の書いた「女主人公モノ」の色を持つこの『カリスタの海に抱かれて』で、ヒロインではなく「主人公」であるアリシアを、みれいちゃんがほんとに力強く「私が主人公!」と演じている横で、特殊な別格おばさん役を乙羽ちゃんが「タカラヅカの娘役」として可憐さを残して演じている……。
ふたりがたたみ掛けるように歌う場面が、すてきにドラマティック。
ヒロインな姿でヒロインではなく「主人公!」と吠えるアリシア、黒眼帯の胡散臭い魔女のような姿で、凛とした涼やかさを持って歌うアニータ……。
本役のかのちゃんに足りない部分をいろいろ感じてはいるんだけど、新公を観て、彼女には「ヒロイン」力はあるんだなと思った。
タカラヅカのヒロイン、という、特殊スキル。きれいなだけ、うまいだけでは務まらない、フェアリー性。
みれいちゃんは安定しまくりだけど、代わりにヒロイン度が下がり、フェアリー性が薄くなっているのかもしれない……。うまいだけだと、「外部ミュージカルの女主人公」になっちゃう。ヅカって難しい。
ともあれ、そんな実力派のみれいちゃんが、気持ちよく疾走出来るアリシアVSアニータ場面が心地いい。
役の上で、強いのがアニータで、それに下から刃向かうのがアリシアなのね。だから、この新公舞台でもっともマッチョなのがみれいちゃんだとしても、役割が「か弱い女の子」なので、アニータという強いキャラの力を借りて、乙羽ちゃんが善戦している。
んで、そのアニータ@乙羽ちゃんだけど。
わたしは、このキャラの方が好き。
新公のアニータは、「人間」だった。
ふつーに人間だった。人間の女だった。
ちょっと変わってるし、人騒がせの面倒な人だけど。それでも、生身の人間の範疇だった。
世界から浮いてなかった。実力も見た目も存在感も、周囲と合っていた。
本役の圭子ねーさまのアニータこそが、疑問。
あそこまで「異次元存在」にする必要あるのかと。
ひとりだけ明らかに違うもの。人間世界にロボットがいるくらい不自然。
彼女の歌唱力と存在感でねじ伏せられるし、一瞬にして異世界へ放り込まれるので、エンタメとして楽しいけれど、彼女が出るたび空気がぶつ切りにされるので、物語としてはアウトじゃなかろうか。
テレビドラマじゃなく、舞台の醍醐味だと思うけどね、ああいうキャラ……しかし、やりすぎっていうか……。
乙羽ちゃんのアニータは、変な人ではあっても、宇宙人ではなかった。
変な人だなー、あー、こーゆーことがあって恨んでるのかー、ふーん。にしてもやっぱ、変な人だなー、こわいなー、おおっ、迫力だー、すげー。
と思って見てきたのが、彼女が眼帯をはずすシーンで。
あ、可哀想……。
かわいそうだ、この子。
そう思えた。
今まで「変だ」と思って来た言動が、すべて納得いった。答えがわかった。
この子、可哀想なんだ……。
これだけの哀しみに耐え、痛みに耐え、それゆえにあんな風におかしくなってたんだ。壊れてたんだ。
震える背中が、痛々しくて。
華奢な身体が、哀れで。
カリスタの男たちが言葉を失うのも、納得。
無残な傷跡を見せられて絶句したのではなく、彼女の哀れさに言葉を失ったんだよね……ふつーの感覚を持つ男なら、女の子が痛々しさ全開で決死の訴えをしてきたら、なにも言えなくなるよね……。
アニータはカルロの親世代だから、女の子って年齢じゃないだろうけど。
心を病んでからは、まともに年を取れなくなっている、20数年前のあの日のまま心の成長は止まった、てな説もアリだろうから、「女の子」でもいいかも。
アニータが生身の女性である、そう思えたことで、完結した。
ただの「作劇都合優先の煽りキャラ」ではなく、「悲しい女性」だと納得した。
だから新公のアニータの方が好きだな。
乙羽ちゃんは美人ではないけれど(ごめん)、タカラヅカ娘役的な清涼感がある。それが見ていて気持ちいいんだな。
乙羽ちゃんのアニータは、とても「タカラヅカ的」だと思うよ。
アリシア@みれいちゃんはうまかった。
安心安定の出来。
だがしかし、カルロ@マイティと合っていたかは、わからない。
あとから新公のことを思い出すとき、浮かぶのはアリシア単体だ。
カルロは関係ない。
みれいちゃんはあまりにも、みれいちゃんひとりで、存在していた。
カラダの厚みがしっかりした、立体感のある女の子。
実際の体格のことではなく、舞台の存在において。
なにしろ舞台だから、背景はハリボテ、板や布だと見ればわかる。そんななか、みれいちゃんには厚みがある。彼女が絵に描かれたモノでもCGでもない、生身の人間だとわかる。そこに存在していることがわかる。
それが魅力でもあり、タカラヅカ的にどうかな?という点でもある。
アリシアはひとり色濃く存在し、物語を進めていた。彼女こそが主人公だった。
マイティも濃さでは負けていないので、彼女の横にいてかすむことはないんだけど、色が融合していないから、ただ「主張の激しい色がふたつ並んでいる」状態になっていたような。
トップコンビが演じる役、親和することが前提のタカラヅカの主人公とヒロインは、そーゆー「色がふたつ並列」だと、なんとも違和感があった。わたしには。
みれいちゃんが面白かったのは、アニータ@乙羽ちゃんとの絡み。
アニータは別格役というか、物語の外側で煽るだけの特殊なキャラクタ。……そういう役なんだけど、乙羽ちゃんはそれでも、「タカラヅカ」の娘役さんなんだ。本役さんに倣い、独特のおばさんキャラを作ろうとしているのかもしんないが、持ち味が「娘役」。逸脱してない。
タカラヅカ作品とは違い、外部作家の書いた「女主人公モノ」の色を持つこの『カリスタの海に抱かれて』で、ヒロインではなく「主人公」であるアリシアを、みれいちゃんがほんとに力強く「私が主人公!」と演じている横で、特殊な別格おばさん役を乙羽ちゃんが「タカラヅカの娘役」として可憐さを残して演じている……。
ふたりがたたみ掛けるように歌う場面が、すてきにドラマティック。
ヒロインな姿でヒロインではなく「主人公!」と吠えるアリシア、黒眼帯の胡散臭い魔女のような姿で、凛とした涼やかさを持って歌うアニータ……。
本役のかのちゃんに足りない部分をいろいろ感じてはいるんだけど、新公を観て、彼女には「ヒロイン」力はあるんだなと思った。
タカラヅカのヒロイン、という、特殊スキル。きれいなだけ、うまいだけでは務まらない、フェアリー性。
みれいちゃんは安定しまくりだけど、代わりにヒロイン度が下がり、フェアリー性が薄くなっているのかもしれない……。うまいだけだと、「外部ミュージカルの女主人公」になっちゃう。ヅカって難しい。
ともあれ、そんな実力派のみれいちゃんが、気持ちよく疾走出来るアリシアVSアニータ場面が心地いい。
役の上で、強いのがアニータで、それに下から刃向かうのがアリシアなのね。だから、この新公舞台でもっともマッチョなのがみれいちゃんだとしても、役割が「か弱い女の子」なので、アニータという強いキャラの力を借りて、乙羽ちゃんが善戦している。
んで、そのアニータ@乙羽ちゃんだけど。
わたしは、このキャラの方が好き。
新公のアニータは、「人間」だった。
ふつーに人間だった。人間の女だった。
ちょっと変わってるし、人騒がせの面倒な人だけど。それでも、生身の人間の範疇だった。
世界から浮いてなかった。実力も見た目も存在感も、周囲と合っていた。
本役の圭子ねーさまのアニータこそが、疑問。
あそこまで「異次元存在」にする必要あるのかと。
ひとりだけ明らかに違うもの。人間世界にロボットがいるくらい不自然。
彼女の歌唱力と存在感でねじ伏せられるし、一瞬にして異世界へ放り込まれるので、エンタメとして楽しいけれど、彼女が出るたび空気がぶつ切りにされるので、物語としてはアウトじゃなかろうか。
テレビドラマじゃなく、舞台の醍醐味だと思うけどね、ああいうキャラ……しかし、やりすぎっていうか……。
乙羽ちゃんのアニータは、変な人ではあっても、宇宙人ではなかった。
変な人だなー、あー、こーゆーことがあって恨んでるのかー、ふーん。にしてもやっぱ、変な人だなー、こわいなー、おおっ、迫力だー、すげー。
と思って見てきたのが、彼女が眼帯をはずすシーンで。
あ、可哀想……。
かわいそうだ、この子。
そう思えた。
今まで「変だ」と思って来た言動が、すべて納得いった。答えがわかった。
この子、可哀想なんだ……。
これだけの哀しみに耐え、痛みに耐え、それゆえにあんな風におかしくなってたんだ。壊れてたんだ。
震える背中が、痛々しくて。
華奢な身体が、哀れで。
カリスタの男たちが言葉を失うのも、納得。
無残な傷跡を見せられて絶句したのではなく、彼女の哀れさに言葉を失ったんだよね……ふつーの感覚を持つ男なら、女の子が痛々しさ全開で決死の訴えをしてきたら、なにも言えなくなるよね……。
アニータはカルロの親世代だから、女の子って年齢じゃないだろうけど。
心を病んでからは、まともに年を取れなくなっている、20数年前のあの日のまま心の成長は止まった、てな説もアリだろうから、「女の子」でもいいかも。
アニータが生身の女性である、そう思えたことで、完結した。
ただの「作劇都合優先の煽りキャラ」ではなく、「悲しい女性」だと納得した。
だから新公のアニータの方が好きだな。
乙羽ちゃんは美人ではないけれど(ごめん)、タカラヅカ娘役的な清涼感がある。それが見ていて気持ちいいんだな。
乙羽ちゃんのアニータは、とても「タカラヅカ的」だと思うよ。
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