なんでもありーのな『カリスタの海に抱かれて』だから。
 ラストシーンがどんなものでも、ありえる。

 この物語は、いったいどこへ行くんだろう?
 どこへ着地するんだろう?

 ってことで、ラストシーンがどうなるのかを、考えてみる。


 こっから先の展開の、おおざっぱな選択肢。
→a.皆殺し悲劇エンド
 セルジオの画策により、ロベルトが最悪の決断をした! わずかな武器でフランス軍へ突撃したカリスタの若者たちは全員死亡、見せしめにとフランス軍が逃げ惑う女子どもを皆殺し、家を焼きオリーブ畑を焼き、誰ひとり助からない!! アニータのドラマチックヴォイスがとどろき渡り、炎の精が踊り狂う!!
 屍の山に遅れて到着したカルロが泣き崩れ、ピストル自殺でEND。
 とか。
 ああら、なんてドラマティック!! 谷せんせやりそう。
→b.とにかくカルロVSロベルト対決エンド
 逆恨み炸裂、カリスタの未来よりなにより、とにかく決着付けるんだ、勝負だカルロ! チャンバラ開始! 腕はカルロが上なのに、ロベルトを殺せないカルロはやがてピンチに……! ああ、あぶない……!! そこに響き渡る銃声、アリシアがロベルトを撃った……崩れ落ちるロベルト、急転直下クライマックス。
 とか。
 なーんか文学的なくくりにできそうね。柴田パターンっすねー。
→c.なんかうまくいきましたハッピーエンド
 カルロの作戦がうまくいき、誰も死なないし、カリスタ独立成功だし、カルロとアリシアもうまくいくし、ロベルトとの友情も復活だし、みんな幸せ大団円!
 作戦部分をもっとちゃんと描いたら小池っぽくなるのに? トリッキーに、派手な仕掛けをして。
→d.これも青春の1ページ……エンド
 「生きることとは」と歌い出すカルロ、セルジオや仲間たち、フランス軍のみなさんが、雑踏の中を通り過ぎ、立ち止まり、人生を歌う。すれ違う人たちの中、アリシアやロベルトにスポットライトが当たり、それぞれが人生を歌い、やがて大きな合唱となる。
 で、一気に何年後に話が飛ぶ。すっかり壮年になったカルロが、「熱い日々だった……カリスタの海に抱かれて」と懐古する。幕。
 どんな話もこのオチでまとめるのが可能、ってすごいな、正塚風。あ、みりおくんにタンゴは無理なのか??←飛躍

 ……ダメだ、考え出すとキリがない。
 aパターンだって、その中でも「アリシアひとり生き残るバージョン」とか、「アリシアがカルロの腕の中で息絶えるバージョン」とか、なんぼでも派生出来る。
 cパターンだって、独立はうまくいったけど、カルロは「幸せになれよ」とロベルト&アリシアに背を向けて去って行くバージョンとか、「カルロ大統領万歳」エンドとか、いくらでも考えられるし。

 この話、どこへ向かうの?
 なんでもありじゃん!!
 先がまったく見えない!!


 と、思いました。

 だから、「アドベンチャーゲーム」みたい、と思った。
 どっちへでも行ける。
 選択肢の多さ。
 どれもありだけど、つまりそれは、「ここがこうだからこうなったんだ!」と構成の緻密さや、伏線の巧妙さに感心することは、まったくなし、ということ。
 いろいろ大味っていうか、雑っていうか。

 でも、それも含めて、ぜんぜんアリだと思う!

 楽しかったよ、どこへ転がっていくのか、まったくわからなくて。
 新作オリジナルっていいなあ!って、本気で思った。

 カルロとアリシアがかわいいから、真ん中を見ている分にはちゃんと楽しめるし。
 ……ロベルトは、ひどいけどな(笑)。


 この、なんでもあり、どっちもあり、のほほんソングでスタートして、突然ドシリアス悲劇になったり、またなんかお気楽若者たちをやったり、ドラマチック革命物!をやったり、ご都合主義で軽く薄く事件解決!したり。
 場面ごとに雰囲気ばらばらで、悲劇からお手軽ハッピーエンドまで、どこに着地してもいいような雑な作り。
 という素敵な性質は、ラストシーンの斜め上っぷりでも裏切らずに「なんでもあり」「どっちつかずぶり」を発揮してくれた。

 すべてうまくいって大団円! ハッピーエンド!
 と、思ったのに。

 何故かラスト、突然ロベルトが、わけのわかんないことを言いはじめる。

 友情も元通りで恋も手に入った、全方向ハッピーエンドだと思ったのに。ロベルトだってそういう言動取って笑ってたのに。
 何故か、最後になって「誰も信じない、心を閉ざして生きる」と言い出す……えええ?! 逆じゃないの? 「友を信じて、心を開いて生きる」と言うべきなんじゃあ? それがリーダーたる器の大きさってもんぢゃ……?
 隣にいるのはアニータ。
 えっと、やっぱりここはアニータの呪詛ソング的な展開??

 よくわからんわー(笑)。ロベルトって、作品の粗を全部背負わされてるからなー。

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