新作っていいな! オリジナルっていいな!

 花組『カリスタの海に抱かれて』初日、なんやかんやで思ったの。

 実在の人物の一代記でもないし、原作があるわけでもない。
 舞台となる時代背景はあるにしろ、ストーリー自体はまったくのオリジナル。

 って、わくわくする。

 まだ見たことのナイ物語、ってだけで、うれしくなる。

 まあ、原作があったところで、わたしは予習をまったくしない人だから、なんにも知らないままに観ることが多いんだけど、有名原作とか実在の人物だと、最低限情報があるっていうか、先入観があるじゃん?

 新作オリジナルだと、それがナイんだよなあ。

 どんなキャラがいて、どんなことになって、どう決着するのか、まったくわからない。
 それって、すげーわくわくする。

 再演とか原作付きでは味わえない、未知への期待感。

 タカラヅカって、ソレがあるからいいんだよね。
 既存のものしか上演しない劇団なら、わたしはこんなにこの文化を愛してない。
 わたしはフィクションが好き、物語が好き。

 ……って、ついひと月前も、そうやってわくわくしていたオリジナル作品に裏切られたところだけど(笑)。
 でも、柴田せんせより、大石静&石田昌也コンビの方が、期待度は高い。
 残念だけど、今のわたしはそうだ。
 最後のオリジナルが『霧のミラノ』で、定番以外の再演作品がことごとく残念極まりない過去形の巨匠よりは、現役クリエイターに期待を持つ。

 大石氏の前作『美しき生涯』はタカラヅカ的という意味ではいい作品ではなかったので、ヅカヲタとして大石氏の再登場は「劇団、懲りてなかったのか……!」と愕然としたクチだし、今現在テレビ放映中の大石氏の新作ドラマがちょっと驚くくらい面白くないことで、不安はてんこ盛りであったとしてもだ。
 イシダ先生、頼むよ~~! 大石氏の脚本がヅカ的じゃなくても、なんとか盛り上げてね~~! てな。

 でもってわたしは、相変わらず予備知識なし。
 知っているのは、タイトルと、ポスター画像のみ。
 ナポレオンが出るらしいよとか、その程度。
 主人公のみりおくんがどんな役なのか、ヒロインのかのちゃんがどんな役なのか、まったく知らない。
 カリスタって地名らしいなあ、どこにあるのか知らないけど。……というくらい、無知。えっと、そんなに有名なところなの?

 まったく知らなくても楽しめてこそのエンタメ! が持論(笑)。
 無知と不勉強を棚上げっす。

 だから、なにがどう展開されるのか、まったく知らずに席に着いた。
 未知の物語を味わう前の、なんとなくわくわくしたキモチで。


 …………作品の出来はともかく、今回本当に、「原作なしの新作オリジナルっていいなあ!」と強く感じた。

 観ている間中、ほんとにわかんなかったんだ。

 この物語が、どこへ行くのか。

 どうするつもりなのか、どう決着を付けるのか。
 「予想もつかない!」とか「見たことのナイ新しい!」とかではなくて、「どこへでも行ける」「どっちにでも転べる」ゆえの、わからなさ。
 常に分岐があるの。
 その分岐の、どれを選んでもアリな感じなの。
 だから、どこへ行くのかわからないの。

 アドベンチャーゲームのようだった。

 キャラクタとあらすじと大きなイベントごとが決められていて、あとはエピソードごとにプレイヤーが選択肢を選んで行くの。
 どれを選んでも問題なく物語が進む……つまりそんだけいろんなことが単純で薄いわけなんだけど、選択パートがあるから「どのルートに進もうか」とシンキングタイムがあって、楽しめる。……そういうゲーム。
 あるいは、テーマパークのアトラクション。ライドに乗って水路を進むの。次々に物語の1場面がジオラマとして目前に広がる。アトラクションなので、場面ごとのつながりは悪い、つか、ぶつ切り。でも、右に左にライドが動き、次の角に行けば新しい場面が広がり、その物珍しさゆえに、乗っている者は楽しくドラマを眺められる。

 見ながら、いろんな選択肢を考え、どうするつもりだろう?と思い、次の展開に、あ、こっちへ行くのか、と思い、次にまたいろんな選択肢を考え、えっ、こっちですか?と驚き……。

 結果、原作なしの新作オリジナルっていいなあ!、と思った(笑)。

 こうやって、脳内アドベンチャーゲーム体験できるのは、新作オリジナルゆえだわ~~。
 先が見えないって、物語って、やっぱ楽しいよなっ。


 初日は長年の花担友人と一緒だったんですが、『カリスタの海に抱かれて』の感想は。
「意外に、面白い」でした。

 大石氏への評価が低かったせいもあるんだろうけど。
 言いたいことはいろいろあるが(笑)、それでも、けっこう面白いです、『カリスタの海に抱かれて』。

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