『黒豹の如く』を、苦手だと思う。

 ことさらそう思うのは、わたしの過剰反応かもしれない。

 最初に観たときは、とにかく好意的に観ようとしていた。良い方へ受け取ろうとしていた。無意識に、努力していたんだ。
 だって、嫌な作品、と思うより、いい作品、好きな作品、と思った方が楽しいもの。
 でもそれは、上演時間の経過と共に、努力ではどうあがいても覆い隠せない事態になった。
 どんだけ好意的に受け取ろうとしても「おかしい」「駄作」という事実は、隠せない。わたしのなかの常識が悲鳴をあげる。これおかしいって! わたしがおかしいと思うことを、おかしいと思わずにいる黒豹さんたち、おかしいって! 感情移入出来ないって!

 とはいえ、タカラヅカに駄作はつきものだ。
 この程度の駄作は、悲しいかなヅカではめずらしくない。
 わたしはストーリーがないくせに「物語」のフリをした無駄な話が大嫌いだが、それにしたって、ヅカでは別にめずらしいモノではないんだ。

 なのにわたしは、過剰に「やだ!」と反応した。
 何故か。

 ようするに、ショックだったのだ。

 いやもうほんと、感情的な問題。

 ちえねねの最後の作品が、コレだということが。

 駄作なんか、慣れてる。
 どんな駄作だって植爺よりマシ、下を見たらキリがない。『黒豹の如く』程度の駄作、ヅカヲタ人生で慣れっこだわ。
 そんなわたしだが、作品のアレさとは別のところでショックを受けた。

 れおんくんとねねちゃんの、退団公演が、コレ。
 …………ひどい。

 という(笑)。あらまあなんて、脊髄反射的な。

 柚希礼音といえば、タカラヅカ100年の歴史の中で、確実に後世に語り継がれるビッグスターじゃないですか?
 交代サイクルの短くなった現代で6年にわたる治世を誇り、武道館コンサートを成功させ、サヨナラDSを梅芸他で中継、ラストディに至っては未曾有の会場数、その上さいたまスーパーアリーナ、さらにグローバルに台湾でまでやっちゃうんですよ?
 わたしはれおんくんのガチファンではないけれど、スターとしてのれおんくんが好きだし、彼の快進撃には爽快な気持ちを持っている。
 今、柚希礼音というスターがいることが、誇らしい。
 そんな気持ち。

 ねねちゃんもまた、れおんくんに似合いのゴージャスな美女。
 ふたりの演じるカップルに、どれだけいろんな夢を見せてもらったか。

 れおんくんの退団にあたって、劇団がこれでもかこれでもかと、「スペシャル」なコトをくり出してくる。
 それが、痛快。
 れおんくんのすごさ、タカラヅカという世界の可能性、それを見せつけられて、わくわくする。

 その、特別な超ビッグスターの最後の公演が……コレ?

 DS中継だってーー、すげーー!
 ラストディ中継、たまアリだって、すげーー!
 さらに台湾だって、すげーー!

 とまあ、すげーすげー盛り上がってるのに。

 肝心の「最後の作品」が、コレ。

 ヅカで駄作は当たり前。
 それはわかってる。わかってるけどさ。

 ビッグスターには、ビッグスターに相応しい最後がある。

 れおんくんはトクベツなんだから、最後もトクベツにしてくれよ。「ヅカでふつーの駄作」なんかじゃなくて!

 というのが、わたしの過剰反応です。
 勝手に「ものすげー名作で華々しく退団する柚希礼音」を期待して、盛り上がっていたの。
 それが裏切られたから、傷ついてるの。
 ええ、ほんと、勝手に。


 わたしはガチなファンではないので、あくまでも外野として言ってます。
 ファンの人からすれば、「『黒豹の如く』は超名作!!」なのかもしれないし、「こんなちえねねが見たかった! 最後にこんな素敵な作品を観られて、もう思い残すことはない!」という作品なのかもしれない。
 だとしたら、申し訳ない。
 が、わたしはわたしの立ち位置で、わたしの感じたことを記す。

 ちえねねの最後の作品がコレって……つらいわ。
 もっと別の作品を観たかった。

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