うららちゃんが歌えないのには、なにか事情があるのではなかろうか。

 新人公演『白夜の誓い ―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』を観て、そう思った。

 その昔、「いっちゃんは踊れないから」と、当たり前に言われていたトップさんがいた。「いっちゃん、脚上がってなかったね」「だっていっちゃんだもん」てな感じに、みんなもう「踊れない」「脚が上がってない」ことを「平常」にしていた。ダンスが苦手なことも含めて、うちの組のトップさん、という認識。美人で歌ウマだし、あのほよよんとした素の雰囲気もいいんだもん、ダンスがおよよでもいいじゃん、とわたしと友人たちからは愛でられていた。
 真相を知ったのは、彼女の退団後。自伝にて、カラダに障がいがあり、ふつーのジェンヌのように脚を上げることができなかったのだと告白。

 それを読んで、そうだったのか、ダンスへたとか言って悪いことしたなあ、と思った。知らなかったからとはいえ、なんともバツが悪いというか。罪悪感。
 ミュージカルスターであり、踊ることが前提の劇団にいたんだから、「ダンスがヘタ」「脚が上がってない」と言われても、それは仕方ないことだし、在団中は公式発表してなかったことなんだから、二重に仕方ないことだ。
 プロとして舞台の上にいる以上、それでお金を取っている以上、「病気だから」は言い訳にならない。
 わかっちゃいるけど。
 いっちゃんを好きで、ダンスが苦手なとこも含めて愛でていじっていたつもりだっただけに、苦いモノが残った。

 その苦さを、新公のうららちゃんを観て、思い出した。

 うららちゃんは、歌えない。
 音痴なジェンヌさんも多々いる(歌劇団ですけどね……笑)けれど、うららちゃんの「歌えなさ」は次元が違う。
 音をはずすとか、音を取れない、リズムが理解出来ないとか、そういうことではなくて。
 音が、ない。
 一定の音階になると、声が消える。
 これは……音痴とは言えないだろ……。

 なんかもう、客席で途方に暮れた。
 初抜擢の研3のお嬢さんが、緊張のあまり声が出なくなった、というなら「経験を積めばいいのよね」と思うけれど。
 研6で新公ヒロイン・別箱ヒロイン独占状態、本公演でも2番手娘役スターとしてポスターにも載っている人が、「声が、ない」となると、努力とか得手不得手の問題ではないのではないかと、不安になった。
 努力してないはずはないし。経験も、たっぷりだ。
 じゃあ、あとは……?

 なにか事情があるのかもしれないけれど、公式発表されていないのだから、「なにもない」と思って見守るしかない。
 あれだけきれいで、よそでも十分活躍出来る美貌を持ちながら、このタカラヅカで娘役になることを選んでくれた人だ。なんつっても、わたし好みの高い大きな鼻を持つお嬢さん。(わたしは鼻スキーだ)
 子どもっぽいかわいこちゃんの多い昨今貴重な、大人びた美貌の娘役スター。
 大成して欲しいと思う。心から。
 うららちゃんが美貌以外の武器を手に入れてくれたら、どんなに素晴らしいことだろう。

 本公演ではさー、「歌えてる」と思ったんだよ。うららちゃん、歌うまくなった?って。
 音域に合わせて作られた歌だったんだね……。
 じゃあうららちゃんがこれから活躍するためには、彼女が歌える音域の歌だけにして、未亡人とか人妻とか、大人の、憂いのある美女の役をやり続けるしかないのかなー。
 ヅカは大人のラブロマンスを楽しむところだと思っているので、ぴちぴちの少女役や、元気な女の子の役が出来なくても問題ないとは思うけど。

 本公演の未亡人役は似合っていてステキなんだけど、新公の王妃様役は、歌以外もいまいちだった。
 なんつーか、ハッタリに欠けるんだ。豪華ドレスでばーーん!と登場するときに、強いきらびやかさがない。きれいなんだけど、おとなしい。
 単色というか、セピア色とかグレーとかの中に沈んで見える。
 そのぶん落ち着いていて、上品。それは強み。美点。しかし。
 なんとももどかしい。

 次の『王家に捧ぐ歌』でアムネリスとかやれば、殻を破れるんだろうか。
 アムネリスは美貌よりも、実はハッタリ必須の役だからなー。
 2500人の観客全員を平伏せさせる、圧倒的華を持った女王の役。

 うららちゃん、美貌はあるけど華はないもんなあ……。

 なんか、きついばっかの感想になっちゃったかな。
 うららちゃんが元気に高音でも歌えるようになって、今のわたしのわだかまりが、全部杞憂、見当外れすぎてごめん!になることを、心から期待している。

 でもって、マカゼ氏とうららちゃんが並ぶところを見たいと、今から楽しみにしている。
 わたしはマカゼ氏もうららちゃんも、あのテの顔が好きだ(笑)。

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