星組全ツ『風と共に去りぬ』のヒロインは、男役のことちゃんが演じている。

 ことちゃんのファンは、女役がうれしいのかな?
 ことちゃんを、両性具有、あるいは無性のフェアリーだと思っているんだろうか。
 ファンがよろこぶのがいちばんだと思うから、そうならいいなと思う。
 ただわたしは、人気男役スターが女役ばかりやらされることを、歓迎しない。だってここはタカラヅカだ。タカラヅカの華は男役。「トップスター」という言葉が男役を指すように、男役をやってなんぼだと思っている。それは娘役軽視とは別の意味よ? そういう次元の話ではなくて。
 早くから抜擢され、ずーーっとずーーっと「スター」だったみわっちが、人気を得るために必要な時期に何公演も何公演も女役や子役をやらされ、その都度失速していった……それを目の当たりにしていることもある。路線スターは人気を得るカンフル剤として女役をさせられるけど、それはあくまでの一時のことだ。男役の女装は注目につながるが、打ち続けたら逆効果になる。
 観客のほとんどが女性である以上、かわいい女の子や子どものことは「かわいい」と愛でるけれど、夢中にはならないからだ。かっこいい男性にこそ、ときめくのだから。
 ことちゃんに関しては、せっかく男役として飛ぶ鳥を落とす勢いの人気スターなのに、「男役」として売らないなんて、もったいないことするなあ。そう思う。
 でも全国ツアーのヒロイン、しかも『風と共に去りぬ』だ、劇団のただならぬ期待を感じるから、今回はこれでいいのかもしれない。平成以降の全ツ『風共』スカーレットを演じた男役は、総じて未来のトップスターだ。劇団はことちゃんを超トップコースに乗せたということかと思う。
 でも、これを最後に、女役は控えて欲しいなあ。路線スターの女装、というなら、ショーで1場面女役するだけで十分だよ。

 と、いうのも。
 ことちゃんの魅力はいろいろあるだろうけど、そのなかでいちばん「基本」となる力……「美声」に、無理をさせないで欲しいんだ。
 歌は、歌わない限りうまいもヘタもわからない。ダンスもそうだ。
 しかし、声は……歌劇団が「芝居」をする劇団である以上、もっとも普段から必要とするスキルなんだ。
 多くの男役が「男役声」が出ずに苦労する。女子校の文化祭みたいな甲高い声でしか喋ることが出来ず、それゆえに表現の幅も限られる。入団して舞台に立ちながら、長い長い時間をかけて、本名の女の子の声から、「男役声」を作り上げていくんだ。
 声は持って生まれたモノも大きいから、訓練や努力だけでは動かせない部分もあるだろう。だからこそ、余計に。
 ことちゃんの「男役らしい低い声」に、余計な負担をかけさせないでくれえ。
 女の子らしい高音が出ずに苦労している様を、女役らしい声音で話すために相当作っている様を見ると、はらはらする。これであの低い声に変な癖や傷がついたらどーしてくれるんだ、と。
 ベテラン舞台人ならどんな声も変幻自在かもしんないが、新公学年の子になんでこんな負担を強いるんだ。男役としての基礎を確実にしなければならない時期に、その根本を揺すぶるようなことはさせないでやってくれ。
 同じ男役のスカーレットでもタータンは、地声は女の子まんまの甲高いべちゃべちゃした声だったからなあ。ごく自然に女声で演じていた。外見以外(←)ふつーに女性のスカーレットだった。
 トド様がひとり芝居で少女役を演じたとき、録音した声を早回ししてなんとか「女の子の台詞」にしてたっけ……。素では女の子らしい甲高い声が出なかったらしい。そこで無理をする意味はない、早回しで高くするので十分だよ、喉大事。

 わたしはヅカの男役の魅惑のアルトが大好きだ。男役に惚れるときは声重要。ことちゃんは、せっかくその魅力的な声を持っているのだから、ソレを大事にしてほしい……劇団にこそ、舞台人の声の大切さを理解して欲しい。

 ことちゃんを女役にしたがる人は、きっとナマで舞台観てないんだろうな……あの声で娘役はナイわー。上層部のおじさんたちは、男役も娘役もみんな同じ、かわいい女の子なんだからどっちでもいいじゃん、程度の認識なんじゃね?

 もっともこれは、わたし個人の意見ですわ。世の中の人は「男役の演じる女役大歓迎、毎公演でもよし! 私の贔屓も何度でも女役をやって欲しい!」とか「娘役なんか誰でも出来るんだから、なくしてしまって、男役が順番に女役もやればいい」とか思ってるのかもしんないけど。
 わたしは、娘役ってのは一朝一夕でできるものじゃないと思っているから、娘役ならではの技が観たいし、男役にはいつも素敵な男役であって欲しい。

 わたしは世間狭いからよくわかんない。盲目暴走ことファンが友人にいるけど、彼女は「ことちゃんの女役嫌~~!!」とわめきまくってる。が、なにしろ盲目暴走だから、彼女がことファンのスタンダードなのか、かえってわからない……(笑)。

 まあともかく、そんなスタンスのわたしがことちゃんスカーレットを観て。

 まずオープニング。
 白と緑のドレスで歌い踊るところからスタート。

 顔、こわい。

 笑顔なの。もー、すっげー笑顔。「笑顔」と書いたお面をつけているかのような、笑顔。
 くっきり濃ぃいメイクに、不自然なまでの力みまくった作りきった笑顔。
 こわい……ことちゃん顔、こわいよ~~。
 どんだけがんばってるんだ。プレッシャーも半端ナイだろう。まだ番手もはっきり付いてない新公学年の男の子が、ヒロイン……というか、事実上の主役みたいな役で全国ツアーを任されたんだ。舞台での重責と、それに反する下級生という立場の微妙さで、近年のスターが背負ったことのないモノを背負っての公演初日だ。
 そりゃ、大変だろう……。
 ことちゃんって、良くも悪くも下級生らしくない、っちゅーか、お茶会でも初々しさより「スターです」という印象しかないくらいなんだけど、それでもやっぱ、大変だろうなあ、と。

 最初から、手に汗握りました。
 技術や舞台度胸に関しては、なんの心配もない。ことちゃんならやるだろうなと。むしろ主演さんの方がいろいろと心配だ(笑)、くらいの気持ちだったんだが。
 ことちゃんの人を食いそうな赤い口を見て、ちょっとびびった。え、これ、思ってたより大変かもよ?と。

 声が出ないというのは、芝居の幅を狭めるな。
 たぶんここは、もっと高い声で表現したいんだろうな。そう思える箇所がいくつもあった。
 でもことちゃんはその音が出ないから、平板な表現になる。感情を表すツールが、うまく使えていない。
 全体に作り声だから、そのハンドルの切り方が自然ではナイっつーか。
 ……大変だな。

 それでも声はよく通るし、よく動く。……なんだろ、ことちゃんのスカーレットって、「よく動いてる」イメージ。現実的なアクションで? 表情で?
 表情自体はそれほど豊かだった気がしないんだが……お化粧のせいかな、なんかずっと怒ってるみたいな。
 よく弾むゴムまりみたい。
 うまいかどうか、タカラヅカ的かどうかは、微妙? 同じ脚本だから、まぁくんを思い出していたんだけど、やっぱまぁくんほどタカラヅカ!って感じがしない……。外部の舞台みたい。
 そもそもことちゃんって、外部っぽい持ち味あるから、女役だとそれが顕著になるかも。男役だと、タカラヅカならではだからそうでもないんだけどなあ。

 結論。ことちゃんは男役でいてください。


 ベニーとことちゃんのがっつり組んだお芝居も観てみたいんだが、バトラーとスカーレットは、チガウわ、わたしには。
 ことちゃんはともかく、ベニーの分が悪すぎる。

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