なんか考えさせられた、新人公演『Shall we ダンス?』の配役。

 原作でいうところの竹中直人、ドニー@ホタテくん。
 渡辺えり子、バーバラ@ありちゃん。

 本公演はそれでも、原作のテイストは残しつつ、タカラヅカバージョンとして配役しているんだと思う。
 でも新公は、「タカラヅカ」がどうこうではなく、原作寄りに配役した。

 原作のこのふたつの役は、「美しくない」ことで笑いを取り、味を出している。でもここは「タカラヅカ」、「美しい」ことが基本。だから竹中直人なのにスタイル抜群のともみんが演じているし、渡辺えり子なのにスマートで美貌のせしるが演じている。ちゃんと「美しい人」が、「美しくない」以外の部分で笑わせている。

 しかし新公は、ドニーとバーバラに美形スターをあてなかった。
 タカラジェンヌはみんなきれい、容姿端麗が前提なので、ホタテマンやありちゃん個人の容姿がどうこうという次元の話じゃない。
 みんなきれいが当たり前のタカラヅカの中に、役割が存在する。老け役をする専科さんがいて、姫役をするトップ娘役がいて、というように。全員妙齢の女性ばかりなんだから、その中で役割分担されるようになる。
 ホタっちゃんとありちゃんは、その役割として、「美形の路線スター」を割り振られずに来た子たちだ。共に声のいい実力者なので、芝居ではここぞってなときに実力を発揮している。

 ホタっちゃんは三枚目や老け役を得意とするバイプレーヤーだからこそのドニー役だろうし、ありちゃんは娘役らしからぬ体格を見込んでのバーバラ役抜擢だろう。
 ふたりとも芝居はうまいので、新公とは思えない安定した舞台を見せてくれることは確実。

 しかし、なあ。
 「タカラヅカ」の中で、竹中直人に近いってことで選んだ子と、渡辺えり子に近いってことで選んだ子が、「タカラヅカ」の舞台の真ん中芝居をやっているというのは、それはすでに「タカラヅカ」である意味がない。

 竹中直人役であろうと渡辺えり子役であろうと、美形でなければ、「タカラヅカ」ではない。

 原作のキャラ設定は変えなければならない。アレンジしなければならない。だってここは「タカラヅカ」だから。
 アレンジしなければ公演できないんだから、そもそも原作はヅカ向きではない。
 本公演はいろいろとアレンジした結果、なんとか「タカラヅカ」になっていた。
 それを、新公ではわざと原作寄りにしてみている。
 なんで?

 新公の演出も、小柳タンだ。
 本公演は仕方ないから「タカラヅカ」におもねったけれど、新公では外部っぽくしてみたかったとか? デブ女の役は、デブ女が演じる、という風に?

 それとも、新公はお勉強の場だから?
 美しさを磨くべき路線スターは、ヅラだーの滑稽な動きだーので笑いを取る三枚目の芝居なんか勉強する必要はない。むしろ、変な癖が付くと困るから、ドニーはやらせない。
 可憐さを磨くべきヒロイン候補は、下品に怒鳴りまくるデブ中年女役に学ぶものはない。むしろ、変な癖が付くと困るから、バーバラはやらせない。
 路線スターじゃないけれど、脇の実力派としてがんばっている子たちにこそ、こういう「タカラヅカ的ではない役」が2番手役に来たときはがっつりやらせてやりたい。
 新公はお勉強の場、脇の役は脇の子がやる、脇スキルを磨く、今回たまたまタカラヅカ的に脇の役が2番手役だっただけ、脇の子がお勉強しているだけですがナニか? ってこと?

 それはそれでアリかもしんない。
 でもやっぱり、ここが「タカラヅカ」だから、わたしは「うーん」と首をひねった。

 ありちゃんは歌えて踊れて芝居も出来て、安定してうまい子だけど、ヅカの娘役としては大きすぎる。身長もだが、なによりも、横幅が。
 世間一般では別に太ってないんだろうけど、ヅカという限られた場所では、かなりふくよかだ。
 その体格の子が、娘役2番手になっている舞台は、やっぱりその、「タカラヅカ」的ではない。
 今回本公演がヒロイン役を男役が演じているため、バーバラ役は役としては3番目の位置だけどね。

 ホタテくんは今までずっと3~4番手スターあたりの役を新公で演じてきた子なので、今回の2番手役もわかるけれど、ありちゃんはほんと、体格ゆえに抜擢された感があってなあ。
 それって、なんだかなあ。

 ありちゃんは初抜擢なのに、違和感なく演じていた。
 こんなに台詞喋って芝居するの、はじめての域じゃないのか? それを感じさせないくらい、ふつーにうまい。
 でもさ。

 渡辺えり子ほどの、インパクトはないんだ。

 当然だよ。ここはタカラヅカで、ありちゃんはタカラジェンヌ。若くてかわいいんだから。
 おデブなおばさんが似合わない派手な衣装を着て、自意識過剰にしているからイタいのであって、ジェンヌにしては太めってだけのありちゃんが同じことをしても……。
 競技会の事故だって、スカートが破れて渡辺えり子のものすげー重圧感のあるお尻や太股がむき出しになるから視覚的に強烈なのであって……ありちゃんの、ジェンヌにしては太いってだけのお尻や太股を見せられても、痛々しさが先に立ってしまって……。

 なんか、笑えない。
 笑えないコメディほど、つらいものはない。
 ジェンヌにしては太めである、ってことを、笑いに使われている感じが、わたしの好みじゃない。
 演じている人はそんなことなく、体格を武器にしてさらにがんばっているんだと思う。
 でもわたしは、そーゆー笑いの取り方は好きじゃない……。

 ありちゃん、せっかくうまい娘役さんなんだからさー。こういう使い方じゃなくてさー。
 なんつーかこう、もどかしいわー。

 本公演にも感じている、「作品」としてのもやもや感が、新公のこの配役ではさらに大きくなった感じがした。

コメント

日記内を検索