『風と共に去りぬ』の感想を書きながら、そーいやわたし、全ツの感想書いてないよなと思い出す。

 メラニー@みりおんは、みりおんの苦手分野が詰まった役なんだなあ、と。

 『モンテ・クリスト伯』のみりおんは良かった。彼女に泣かされた。しかし、全ツ『うたかたの恋』はみりおんが苦手で、かなりつらかった。わたしには。

 マリー@『うたかたの恋』にわたしが求めるモノは、母性か白痴性か、どちらかだ。はくち、という言葉が現代語として適切でないとしても、医学的な意味じゃなく、文学的な意味で使う。
 わたしが求めるのは、すべてを許容する聖母のような大きさか、なにもわかっていない無垢さゆえの痛々しさ。

 みりおんにはそのどちらも感じられなかった。ルドルフを許し、包み込むような母性はなく、かといってなにも知らない少女ゆえの無邪気さと天使性も、感じられない。
 なんつーか、ふつーに知性があり、計算があるように見えた。
 計算を感じてしまうと、萎える。それはマリーじゃない。

 あくまでも、わたし個人の好みの話だ。

 『モンテ・クリスト伯』は、母として剣を取るメルセデス@みりおんに泣かされた。彼女の苦悩や覚悟に素直に同調した。
 母親役だったけれど、母性というよりは、「ひとりの女性」としての生き方に心が揺れたんだなあ。
 作品舞台は時代劇でも、メルセデスの描かれ方は、知性と教養のある現代女性と遜色なかった。だから違和感なく感情移入できた。

 みりおんの演じるキャラクタには、知性と意志がある。だから、自分の意志で人生を切り開くキャラだと魅力的になる。『モンテ・クリスト伯』しかり、『カナリア』しかり。
 彼女が特別強いからそういうキャラを得意としているのではなく、現代女性がふつーに持っているものが、そのまま出ているためだと思う。十代半ばで人生を決めて、すげー倍率の中から音楽学校に入り、宝塚歌劇団で舞台人やってるんだもの、「人生を自分で決めて切り開く」のは、もともと備わったキャラクタだろう。

 そのままのみりおん、で演じられない役は、なかなかどーして大変そうだ。

 さが@『近松・恋の道行』とか、今回のメラニーとか。

 『うたかたの恋』で、みりおんって母性弱いんだ、と思い知った。で、『風と共に去りぬ』のメラニーってのがまた、母性なくして、演じられない役なんだわ。

 ひたすらやさしく、ひろく、包み込む海のような女性。
 マリーのような無垢な少女ではなく、大人の知性を持ち、そのうえでやさしく寛大な女性。

 キャラの根幹に母性が必須、なのに、みりおんはそれが苦手。
 というだけでも相当痛いのに。

 それに加え、みりおんの、いちばんの弱点が遺憾なく発揮される役だったりするので、えらいことになってる。

 わたしは、みりおんのいちばんの弱点は「どこにいるのかわからない」「顔がおぼえられない」ことだと思っている。

 ふつうにきれいだし、かわいい。実力も破綻がない。
 研1から抜擢され、まぁくんと銀橋を渡っていたことも納得のかわいい娘役さん。

 しかし彼女のかわいさは、ひとりだけ特別扱いをしないと、発揮されない。
 大勢のなかに混ざると、見分けられなくなる。
 バウホールですらそうだった。ヒロインのさがが、遊女たちの間に入るとどれがさがだかわからなくて困った。
 わたしの記憶力の問題かもしれんが、わたしの周囲では程度の差こそあれ同意見だった。

 かわいいしうまいし、意志があるから、主人公として特別扱いされて、物語が彼女中心に動くと、とても魅力的だ。
 でも、そうでない場合はモブに埋もれてしまう。

 で、今回のメラニーって……出番も比重も、かなり少ない。
 少ない出番で観客の目をさらう華々しさは、みりおんにはない。脇の奥様方、令嬢たちと、混ざって見分けが付かなくなる。

 包み込むような母性を出すことができず、モブに混ざっちゃう扱いの役、って、みりおんには苦手の二乗キャラですよ。

 バトラー編のメラニーって、こんなにてきとーな扱いなんだ、日生編はいい役だったのに、とは思ったけれど、役の話だけではなく、演じている人にも問題はあるなと。
 トップ娘役にこの役、この扱いはないなと思うけど、それとは別に、「こんな役」にしてしまってる面もあるんじゃないかと。


 新公主演経験者が、次の新公であえて脇役になり、下級生の初主演を支えたりすることがあるよね? 雪組なんかよくこのパターンで、「新公主演者は、次の公演でハマコの役をやる」と言われていたもんだ。真ん中を経験したあと、脇に立つことで勉強する部分が大いにあるんだろう。
 また、主演経験者が、あえて脇役を演じると、なるほどの巧さでその実力と貫禄を示すことになったりする。さすがは新公主演経験者だ、と。
 今回のみりおんは、そうあってしかるべき。さすがトップ娘役だ、脇に回ってなおこんなに華やかで実力があるんだ、舞台を支えているんだ、と。
 メラニーは控えめで地味な役だから派手にできない、とか、そーゆーことじゃない。控えめな役でも、登場するなり「主要人物キターーッ!」と思わせる力は必要。

 みりおんは今、苦手分野を磨いている最中なのかもしれない。
 弱点をここで克服し、次の公演では蝶に孵るように、華やかさを得ているのかも。
 それを期待する。



 この地味で心の奥の見えないメラニーと、みょーーなキモチ悪さのあるアシュレが夫婦だってのが、よくわかんない。
 すでに異次元。

 とは思ったけれど。

 2幕のパーティで、ともちんとみりおんが寄り添っている姿は萌え。身長差も映えて、実に美しいっす。
 もっとふつうの芝居で、このふたりのカップリングも見てみたかったな。

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