とまあ、文句ばっか書いてますが、『愛と革命の詩』楽しいです。

 きれいは正義。
 とにかくきれいなので、見ていて楽しい。

 そして。
 きれいで「薄い」物語は、いくらでも脳内補完可能。
 勝手に楽しむことができる。


 とりあえず。

 モラン×ジェラール希望。

 愛のない物語『愛と革命の詩』ですが、その上さらに愛のない関係でヨロシク(笑)。
 なりゆきホモというか環境ホモというか、そのへんの温度感。
 ややこしい時代に妻だの家庭だのやってらんねー、でも抱き合う相手は欲しい、娼婦じゃ思考レベルが釣り合わない・満たされない、面倒のない都合のいい相手希望、という「戦場限定の恋人」。
 別に本気で愛しているわけじゃない、互いの立場がわかっているから余計な手間も言葉もいらず、直接的な欲求だけ満たすことの出来る相手。
 しかもジェラールさん、そのへんの女より、段違いに美人!!
 モランさんなら手を出すよね!(笑)
 手は出すけど、やさしくもしないし、大切にもしないよね! ちょっとやだそれ萌える!(笑)
 で、ジェラールさんはいろいろ悩んでて自棄になってるとこもあるから、手を出されても受け止めるよね。どーでもいい、と思ってそうだよね!
 手を出されても、拒みも悦びもせず、特別な関心は持たないのよね! ちょっとやだそれ萌える!(笑)

 モランさん@みーちゃんと、ジェラールさん@みりおくんの空気感が、なんかねっとりしていていいのですよ。

 実際に粛清とか血なまぐさい仕事をしているのはモランさん。
 なのに民衆たちが「万歳!」と褒めそやすのはジェラールさん。
 モランさんはそれに対して不満はなさそうだ。
 ジェラールさんは清く正しく美しい、「民衆が好むヒーロー」の要素を持っている。
 だからあえて彼を前面に出し、モランさんは陰に徹しているのかもしれない。
 可哀想な少女ユディット@朝月ちゃんの件にしても、モランさんは自分も動けたんだけど、ジェラールに役目を任せ、案の定ジェラールが民衆に好イメージを植え付けたのを見て微笑んでるし。
 モランさんのダークな外見と言動なら、ジェラールの語る「キレイゴト」に反応してもよさそうなもんなのに、それがない。
 ジェラールのめんどくさい部分(革命の是非について悩んでいたり、マッダレーナにこだわったり)を、ニヤニヤ眺めていたりな。

 モランさんは、「この薄い世界観と薄いキャラクタなら、当然こうだよな」というテンプレから、反応が微妙に違っている。
 それは演じているみーちゃんの色であり、効果なのかなと思う。
 脚本にあるのはテンプレートまんまの薄いキャラでしかないんだけど、みーちゃんが濃さと深さを持って演じ、見ているモノへ、テンプレとはチガウ想像を許してしまう。

 いや、ありがたい。
 おかげで『愛と革命の詩』が10倍楽しい(笑)。

 モランさん@みーちゃんが暴力的に色っぽくて。
 彼の荒ぶる闇が、同僚で隙だらけのジェラールを食い荒らす。

 そしてジェラール@みりおくんは、自棄になっていても迷っていても、魔を寄せ付けない「強さ」がある。
 闇に蹂躙されてなお、決して汚れない、食い尽くされない「美しさ」がある。

 だからこのふたりは「成り立つ」と思う。
 モランは愛なく「手近だから、面倒がないから」とジェラールを抱き、ジェラールは愛なく「こんなことに意味などない」とモランの好きにさせる。


 シェニエ@らんとむの裁判で、ジェラールが突然告発を取り下げたとき、モランさん、驚いたよなあ、ショックだったよなあ。
 ジェラールのことはなにもかも知っている、知り尽くしている、と身と心で思い込んでいたのに、まさかの裏切り。
 当のシェニエさん置き去りで、痴話喧嘩をはじめるモランとジェラール(笑)。

 モランは、自惚れていたから。
 ジェラールのことはなんでも知ってるって。
 彼の悩みも迷いも知り、その上で余裕ぶっこいてニヤニヤしていた。マッダレーナのことにしても、「わかっている」顔をしていた。
 「わかっている」から、興味もない。必要なときに抱ければいい。党の看板としての仕事を過不足なくこなしてくれればいい。
 それが。
 実は「わかって」なんかいなかったんだ。そう、突きつけられた。
 だからパニックになって、取り乱す。声を荒らげる。余裕なんかなくし、感情的になる。

 モランとジェラールが「はじまる」のは、これからだと思う。

 モランがジェラールに、本当の意味での興味と、執着や愛情を持つのは、この裁判のあとだと思う。

 や、「愛」の物語が、わたしの脳内をどどーっとあふれ、突き抜けていきましたよ!(笑)

 裁判の直後、激昂したモランさんがジェラールを押し倒し、暴力的かつ一方的な蹂躙、しかしより傷つくのはモランさんの方、最後は自分の方が耐えられなくなってその場から逃げ出してしまう。
 カラダを傷つけられたくらいで傷つかないジェラールさんは、むくりと起き上がってマッダレーナのところへ、そこで彼女の頼みを聞く。
 「責任はすべて私が取る」とマッダレーナと死刑囚を入れ替え、戻って来たジェラールを陰から見つめるモラン。ジェラールが仕事をしやすいように、実はひそかに動いていたのよ。
 公の場で党への背信行為をしたジェラールは、やがて裁かれることになる。
 それを助けるのがモランさん。
 ジェラールに自殺願望はないから、「逃げろ」と言われて断る理由はない。でも、自分の裏切りをあんなに責めたモランが何故、危険を冒してまで自分を助けようとするのかがわからない。
 モランは語らない。実はジェラールを愛していること……愛してしまったことは。
 肝心なことは言わず、悪びれた揶揄の言葉だけで、ジェラールを逃がす。
 でも、最後の最後、ここで別れるぞ、ってときに、突然腕を引き、激しいキス。
 カラダの関係はあっても、唇をかわしたことはほとんどなかった、欲望を満たすだけの間柄だったはず、なのに。
 驚くジェラールにニッと笑って、「早く行け!」→追っ手を食い止めるモランさん。
 ジェラールは逃げ延び、その後モランさんはロベスピエール失脚と共に破滅する。
 断頭台へ上がる姿は、ロベスピエール恐怖政治の負の側面を担った悪役、いつもの揺るがない「黒い」姿。なにひとつ揺らぐことなく、役目を終える。
 彼の心のうちは、誰にも語られなかった。理解を求めも、しなかった。
 生き延びたジェラールだけが、モランの本当の姿に思いを馳せる……。

 という、「これぞ『愛と革命の詩』!」(笑)。
 ジェラールに手を噛まれ、彼を愛するようになるモランさんの心の動きや、眼中になかったモランに助けられ、彼の愛に気づくジェラールの心の動きを、丹念にねちっこく描きたいもんですわ。


 『近松・恋の道行』のときもそうだったけれど、出番が終わったあと、物語が終わったあとの「彼の人生を知りたい」と思わせるのが、役者・春風弥里のすごさだと思う。

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