大八車の彼ですよ、彼!@若き日の唄は忘れじ
2013年8月27日 タカラヅカ 『若き日の唄は忘れじ』のプロットで「うまいなあ」と思うのが、金井村の藤次郎@香音くんの使い方。
まだ平和だった牧家に、大八車に野菜を山ほど積んで現れる。「火事お見舞いに」と演説をはじめる。
火事は牧家じゃないからぽかーん、いきなりKYな登場にびっくり。
地理がよくわかんないんだけど、文四郎@えりたんたちが住むご城下より少し離れた、高台(山側?)にある村なのよね、金井村。んで川があって、時々氾濫があり、農民たちは苦労している、と。「この川を下っていくとご城下に着く」ってことだが、川は一本?
ネットもテレビもない時代、少し離れると情報は伝わりにくい。
同じ藩内とはいえ、金井村の農民たちにはご城下のことはあまりよくわかっていない。
だから、間違った情報を信じて、城下町までやって来た。
牧家が火事に遭い、家屋丸焼けで難儀していると。
意気揚々と演説する藤次郎に、泣けてくるんですが。
ろくに情報の入らない田舎の村で、「牧様のお宅が火事に遭ったらしい」と聞き、「そら大ごとだべ」と騒ぐ。牧様は恩人、大切な人。なにかしたい、助けになりたい、力になりたい。
そう思って、野菜を持ち寄る。自分たちに出来るのはこんなことぐらい。こんなことでしかないんだけど、自分たちにできる精一杯を、誠意を込める。
無力で善良な人々が、ただ、善意だけで動く。
そんな村人の「心」を大八車に乗せて、村の総代の藤次郎が、胸を張ってやって来る。
着いたのは夕方、重い荷物を押して、半日がかりでやって来たんだろう。その労力。
恩人を助けたい、よろこんで欲しい、それだけの思いで、車を押して来たんだろう。
もう、その心持ちだけで、泣けるじゃないですか。
大八車の重さは、「心」の重さなんですよ。他人の役に立ちたい、という純粋な心。優しい心だけで出来上がってるの。
村人たちがそんなに牧様を好きなのは、彼らが大変なときに助けてくれたのが、牧様だから。
川が氾濫して大変なことになっていたとき、率先して助けてくれたのが文四郎の父、牧助左衛門@はっちさん。
村人たちはその恩を強く心に刻んでいる。
そうやって意気揚々とやって来たのにただの誤報、カンチガイだとわかって。
まあいいや、とにかく上がって茶でも飲んでと声をかけられて。
この他愛ないエピソードわかる、牧助左衛門が人格者だということ。
無名の百姓たちが心酔しているような人だということ。
火事は誤報、ナニしに来たんだこの人、と立場のない藤次郎に優しく気安く「上がって行け」と声をかけるのもまた、いいんだよな。
百姓なんて庭先で相手してもいいのに。そうする人たちだって多いんだろうに。
助左衛門さんはちゃんと「客人」として礼を尽くすんだ。
牧助左衛門は、人格者。
そう印象づけたあとでの謀反→処刑はショッキング、そしてその裏にある謀略を想像させる効果がある。
同時に、助左衛門に心酔している金井村総代の藤次郎、彼がクライマックスで文四郎とおふく@あゆっちを助けるために一肌脱ぐ、伏線にもなっている。
そりゃこの男なら、命懸けで文四郎のために動くだろうよ、と。
……はっちさんと香音くん、天下の悪役役者ふたりを起用しなくても、という気もしないでもないんだけど(笑)、ふたりがとっても善人な芝居してるのもツボ。
それともうひとつ、ひそかな伏線。
火事が誤報だった、と聞いた藤次郎は絶句する。勇んで出てきた分、この空回り決定の事実にアタマ真っ白。
そんな藤次郎を放っておいて、同行の奥さん@ありちゃんが間髪入れず「では**(聞き取れない)お見舞いで!」と、なにかしら季節の事柄にことつけてのお見舞いの品だと、強引にねじ込んでしまう。
この機転! 奥さん、アタマいー!!
夫を立てて脇役に徹しているのに(挨拶に行くのは藤次郎のみ、奥さんは荷車のところにいる)、いざとなると夫を差し置いてばんっと仕切っちゃう。
夫の挨拶に、妻が横から叫ぶ、口を出す……男尊女卑の日本では叱咤の対象かもしれない行為を、藤次郎は別に怒ることなく、妻の言葉に追従。あー、奥さんしっかり者で、藤次郎さんはけっこう手綱握られてるんだろうなあ。
で。
後半、クライマックスの欅御殿脱出行にて、ふくと文四郎を手引きする腰元@ひなちゃんが、この藤次郎の……てゆーか、この奥さんの娘だってのが、納得。
藤次郎は人のいいだけの田舎のおっちゃんかもしんないけど、奥さん一筋縄ではいかないよ、娘は奥さん似だよ、だから「おふく様危うし!」てときにパパに連絡取って、船の用意なんかさせちゃうよ!
藩主の別邸である欅御殿があるのは金井村。
藤次郎は金井村の総代。貧しい村かもしんないけど、総代ならある程度の暮らしをしているだろうし、その娘なら教養もあるんだろう。
しかも、奥さんしっかり者だし、娘がしっかり者なのも想像が付く。そりゃ百姓の娘としては大出世、藩主の御殿に勤めていても不思議じゃない。
なんてリアリティ。
ええ、藤次郎が船の用意をして「ここぞ!」ってときに登場したことより、それを手引きした娘に感心したの、わたし。
文四郎が屋敷に来て事情を話して……るときには、動いていたってことよね? 欅御殿の武士たち、磯貝さん@朝風くんや北村@レオくんがなーんも出来ずに、まず文四郎の話すらまともに受け止めていない段階で。
たぶん、父親からさんざん聞かされて大きくなったんだろうなー。
「牧様は素晴らしいお人だぞ、牧様のおかげで金井村はあるんだぞ、牧様はお亡くなりになったが、ご子息の文四郎様は牧様譲りの男前で剣の達人で人格者で……」「あー、はいはい、耳にタコ」→「牧文四郎と申す、お取り次ぎ願いたい」「はっ、牧文四郎って、あの牧文四郎様?! 耳タコの?! ちょ……っ、おとっつぁんに知らせないとっ!!」
……でないとあり得んタイミングだもんな(笑)。
すばらしいプロット、うまい伏線だと思うの、金井村の藤次郎!!
まだ平和だった牧家に、大八車に野菜を山ほど積んで現れる。「火事お見舞いに」と演説をはじめる。
火事は牧家じゃないからぽかーん、いきなりKYな登場にびっくり。
地理がよくわかんないんだけど、文四郎@えりたんたちが住むご城下より少し離れた、高台(山側?)にある村なのよね、金井村。んで川があって、時々氾濫があり、農民たちは苦労している、と。「この川を下っていくとご城下に着く」ってことだが、川は一本?
ネットもテレビもない時代、少し離れると情報は伝わりにくい。
同じ藩内とはいえ、金井村の農民たちにはご城下のことはあまりよくわかっていない。
だから、間違った情報を信じて、城下町までやって来た。
牧家が火事に遭い、家屋丸焼けで難儀していると。
意気揚々と演説する藤次郎に、泣けてくるんですが。
ろくに情報の入らない田舎の村で、「牧様のお宅が火事に遭ったらしい」と聞き、「そら大ごとだべ」と騒ぐ。牧様は恩人、大切な人。なにかしたい、助けになりたい、力になりたい。
そう思って、野菜を持ち寄る。自分たちに出来るのはこんなことぐらい。こんなことでしかないんだけど、自分たちにできる精一杯を、誠意を込める。
無力で善良な人々が、ただ、善意だけで動く。
そんな村人の「心」を大八車に乗せて、村の総代の藤次郎が、胸を張ってやって来る。
着いたのは夕方、重い荷物を押して、半日がかりでやって来たんだろう。その労力。
恩人を助けたい、よろこんで欲しい、それだけの思いで、車を押して来たんだろう。
もう、その心持ちだけで、泣けるじゃないですか。
大八車の重さは、「心」の重さなんですよ。他人の役に立ちたい、という純粋な心。優しい心だけで出来上がってるの。
村人たちがそんなに牧様を好きなのは、彼らが大変なときに助けてくれたのが、牧様だから。
川が氾濫して大変なことになっていたとき、率先して助けてくれたのが文四郎の父、牧助左衛門@はっちさん。
村人たちはその恩を強く心に刻んでいる。
そうやって意気揚々とやって来たのにただの誤報、カンチガイだとわかって。
まあいいや、とにかく上がって茶でも飲んでと声をかけられて。
この他愛ないエピソードわかる、牧助左衛門が人格者だということ。
無名の百姓たちが心酔しているような人だということ。
火事は誤報、ナニしに来たんだこの人、と立場のない藤次郎に優しく気安く「上がって行け」と声をかけるのもまた、いいんだよな。
百姓なんて庭先で相手してもいいのに。そうする人たちだって多いんだろうに。
助左衛門さんはちゃんと「客人」として礼を尽くすんだ。
牧助左衛門は、人格者。
そう印象づけたあとでの謀反→処刑はショッキング、そしてその裏にある謀略を想像させる効果がある。
同時に、助左衛門に心酔している金井村総代の藤次郎、彼がクライマックスで文四郎とおふく@あゆっちを助けるために一肌脱ぐ、伏線にもなっている。
そりゃこの男なら、命懸けで文四郎のために動くだろうよ、と。
……はっちさんと香音くん、天下の悪役役者ふたりを起用しなくても、という気もしないでもないんだけど(笑)、ふたりがとっても善人な芝居してるのもツボ。
それともうひとつ、ひそかな伏線。
火事が誤報だった、と聞いた藤次郎は絶句する。勇んで出てきた分、この空回り決定の事実にアタマ真っ白。
そんな藤次郎を放っておいて、同行の奥さん@ありちゃんが間髪入れず「では**(聞き取れない)お見舞いで!」と、なにかしら季節の事柄にことつけてのお見舞いの品だと、強引にねじ込んでしまう。
この機転! 奥さん、アタマいー!!
夫を立てて脇役に徹しているのに(挨拶に行くのは藤次郎のみ、奥さんは荷車のところにいる)、いざとなると夫を差し置いてばんっと仕切っちゃう。
夫の挨拶に、妻が横から叫ぶ、口を出す……男尊女卑の日本では叱咤の対象かもしれない行為を、藤次郎は別に怒ることなく、妻の言葉に追従。あー、奥さんしっかり者で、藤次郎さんはけっこう手綱握られてるんだろうなあ。
で。
後半、クライマックスの欅御殿脱出行にて、ふくと文四郎を手引きする腰元@ひなちゃんが、この藤次郎の……てゆーか、この奥さんの娘だってのが、納得。
藤次郎は人のいいだけの田舎のおっちゃんかもしんないけど、奥さん一筋縄ではいかないよ、娘は奥さん似だよ、だから「おふく様危うし!」てときにパパに連絡取って、船の用意なんかさせちゃうよ!
藩主の別邸である欅御殿があるのは金井村。
藤次郎は金井村の総代。貧しい村かもしんないけど、総代ならある程度の暮らしをしているだろうし、その娘なら教養もあるんだろう。
しかも、奥さんしっかり者だし、娘がしっかり者なのも想像が付く。そりゃ百姓の娘としては大出世、藩主の御殿に勤めていても不思議じゃない。
なんてリアリティ。
ええ、藤次郎が船の用意をして「ここぞ!」ってときに登場したことより、それを手引きした娘に感心したの、わたし。
文四郎が屋敷に来て事情を話して……るときには、動いていたってことよね? 欅御殿の武士たち、磯貝さん@朝風くんや北村@レオくんがなーんも出来ずに、まず文四郎の話すらまともに受け止めていない段階で。
たぶん、父親からさんざん聞かされて大きくなったんだろうなー。
「牧様は素晴らしいお人だぞ、牧様のおかげで金井村はあるんだぞ、牧様はお亡くなりになったが、ご子息の文四郎様は牧様譲りの男前で剣の達人で人格者で……」「あー、はいはい、耳にタコ」→「牧文四郎と申す、お取り次ぎ願いたい」「はっ、牧文四郎って、あの牧文四郎様?! 耳タコの?! ちょ……っ、おとっつぁんに知らせないとっ!!」
……でないとあり得んタイミングだもんな(笑)。
すばらしいプロット、うまい伏線だと思うの、金井村の藤次郎!!
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