主人公とヒロイン。@新人公演『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』
2013年7月30日 タカラヅカ 別モノ過ぎてウケた。
新人公演『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』ってば、本公演とぱきっと別モノになってましたー。
本公演は「出来事をたどっていく」ことが最重要、みたいな印象がある。わたしには。
ストーリーのわからない初見だけでなく、2回目もやっぱりそう感じられた。
えんえん説明ばかり受けているような。
それが新人公演では、ラブストーリーだった。
びっくりだ。
その昔、『La Esperanza』(正塚晴彦作)という作品があった。
本公演はキャストの魅力だけで楽しく観られたけれど、まちがっても恋愛モノではなかった。主人公はヒロイン位置にいる女性にまったく恋愛感情はなさそうだった。愛だの恋だのは念頭にない、自分探しストーリーだから仕方ない……そう思って眺めていた。
だがしかし。
新人公演では違った。
ガチにラブストーリーだった。
主人公とヒロインのせつない恋物語だった。
同じ脚本、同じ演出なのに、演じる人が違うとここまで変わるのかとアゴが落ちた。
……それを、思い出したよ。
正塚作品は総じて恋愛色少なめ。
押さえた展開やわずかな台詞の中に、どんだけ「恋愛」を出せるかで、作品がまったく変わってくる。
『La Esperanza』もそうだったけれど、それにはヒロインの力が大きい。
正塚作品のヒーローは「男は黙って・・・」という、正塚おじさんの憧れ炸裂キャラが基本なので、恋に振り回されちゃうと主役像から逸脱する。
正塚ヒーローって、「受け身」なんだよね、すべてにおいて。
事件が起こって「仕方なく」動き出す。女に愛され「仕方なく」恋愛する。
「フッ、仕方ないな……」と言いながら、なにかをする。「やれやれ……」と言いながら、アクションを起こす。
自分からがっついたりしない、それは「かっこ悪い」。求められて重い腰を上げる、それこそが「ヒーロー!!」だと思ってるんだろう。
そんなドリーム炸裂した主人公を「上げる」恋愛をするには、なんつったってヒロインの力。
めっちゃいい女のヒロインが、熱っぽくドラマティックに恋愛し、クールな主人公にすがりついてきてはじめて、「やれやれ……」という恋愛が成立する。
カーラ@みゆちゃん、すごい。
この「どーしよーもない正塚芝居」を、ちゃんと「恋愛ドラマ」に押し上げる熱演……!!
彼女がきちんと恋愛しているから、ラブストーリーになる。
無駄に愛を叫ぶべたべた脚本は好きじゃないので、わたしは正塚おじさんの「押さえた台詞の応酬」によって作り上げられる「ラブストーリー」が、実は好物だ。
ただ、なにしろ直接的に台詞によって説明されないもんだから、足りない役者が演じると、恋愛の見えないたるいだけの話になってしまう。
役者さえ合えば、正塚作品はものごっつー深みを持つ。
『ルパン』がいい出来の作品だとはまったく思っていないが、それでも正塚らしさはあるわけで、それは役者が変わるだけでこんだけ変わるのかと改めて刮目した。
みゆちゃんの芝居力はすげーなー。
的確に「核」を取り出して、良く見えるところに差し出してくる。
欲しいモノを差し出してくれるから、こちらはただ素直に受け取って、あるがままに酔えばいい。
『春の雪』『月雲の皇子』と、みゆちゃんを視界の中心に据えておくだけで、だーだー泣ける、なんて気持ちのいいヒロイン力の持ち主。
『春の雪』はともかく、『月雲の皇子』なんてあんな半端な描かれ方だったのに、それでもみゆちゃんが力尽くで演じきってたもんな。
ヒロインだけどんだけよくっても、その相手役が良くなければ成り立たない。
今回、みゆちゃんのすごさを再確認したけれど、たまきち良い、と久しぶりに思った。
久しぶりに……いや、ある意味、はじめて。
抜擢が早く、キャリアが十分すぎる弊害で、劇団推しの御曹司様には自然とハードルが高くなってしまう。
そこそこ出来ていた、とか、まあまあ良かった、程度だと「いつもと同じ」「ふつー」になってしまう。だってそんだけの機会を独り占めしてきたんだもん。
たまきちくんはほんと、いつも「まあ良かったんじゃないかな。なにも発見はないな」というところに落ち着いていて、悪目立ちするほどヘタでない以上、記憶にも視界にも留まってくれなかった。
主演バウですらそんな感じ。たまきちならこんな感じ、と想像するラインあたりの出来だから、特にナニも感じないというか。
反対に、『ロミオとジュリエット』の死だとかロミオだとか、『ベルばら』のジェローデルだとか、役によってはまったくもって柄違い、見ていて気の毒になるという、苦手ジャンルがはっきりしまくっていることだけが、記憶に残っている。
大人の役は得意だけれど、それは「ヒゲが似合う」ってことだけで底上げされるというか、「たまきちかっけー!」と思うときって大抵おっさん役だった。
真ん中として育てられている人だし、おおらかな明るさと大きさを持つ人だから、ふつーの主人公役もふつーに出来る。
抜擢当初は「学年のわりにうまい」から「良い」と思えたことが、抜擢状態が当たり前になってくると学年ではなく経験値に照らし合わせて判断するようになるから、評価基準が変わってくるのは仕方ない。
彼がはじめて抜擢された『ラスト プレイ』では「良い」と思ったけれど、それはあくまでも「初抜擢の研2でこれはすごい」という意味だ。
そっから先はしばらく「学年のわりに、良い」が続き、ついには「機会独占しているわりには、ふつー」になった。
「新人公演主演4回目」「バウ主演済み」という肩書きゆえに上がった評価基準で。
久しぶりに……あるいははじめて、「たまきちが、良い」と思った。
ルパンってこんな人だったんだ?! 『ルパン』ってこんな話だったんだ?!
……本公演で見えないモノがいろいろ見えて、アゴ落ちっぱなし(笑)。
正塚の「受け身」の「男は黙って・・・」の、クソ難しい主人公を、説得力をもって共感出来る「人間」に仕上げている。
みゆちゃんとの相性の良さもあるかもしれない。
みゆちゃんに愛されている、そして自らも彼女を愛しながらあえてその愛に背を向ける姿が、めちゃくちゃかっこいい。
正塚が目指したモノ、って、コレぢゃないの……?
ただ立っているだけで「ヒーロー」だった。
彼が主役だということを、納得出来た。
たまきちに合った役と作品、そして相手役だったんだろう。
タカラヅカスターなんてもんはオールマイティのスペシャリストである必要はまったくない。それは脇の人が担うべきこと。真ん中は、自分の得意分野で観客を魅了すればいい。
たまきちにはいわゆる「耽美」「中性的妖しさ」系は似合わない。だけど、男臭さ、おっさんぽさは抜擢当初からずば抜けている。「男装したオンナノコ」が多い昨今、貴重な持ち味。
だから今磨くべきは、「度量の大きな役」を演じて魅力的に見せること。
ストイックなヒーローを演じて、包容力を見せること。
バウ主演を経て、今まさに成長著しいってことかぁ。
役割を見事に果たしてくれて、うれしい驚き。
いやあ、面白かったわあ、新公。
そして、たまきちと正反対の魅力を持つまさおには、いろいろと難しい役と作品だったんだろうなあ。真ん中を輝かせるための役や作品を書くことが、座付き作家の仕事なんだけどなあ。
本公演は本公演として、キャストの魅力で楽しめているけれど、……正塚ェ。
そーいやたまきちくんの最初の抜擢、研7のみりおくんよりおっさんの役を研2で見事に演じきった『ラスト プレイ』も正塚作……たまきちが、正塚芝居のハマる役者だってことも、大きいのか。
新人公演『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』ってば、本公演とぱきっと別モノになってましたー。
本公演は「出来事をたどっていく」ことが最重要、みたいな印象がある。わたしには。
ストーリーのわからない初見だけでなく、2回目もやっぱりそう感じられた。
えんえん説明ばかり受けているような。
それが新人公演では、ラブストーリーだった。
びっくりだ。
その昔、『La Esperanza』(正塚晴彦作)という作品があった。
本公演はキャストの魅力だけで楽しく観られたけれど、まちがっても恋愛モノではなかった。主人公はヒロイン位置にいる女性にまったく恋愛感情はなさそうだった。愛だの恋だのは念頭にない、自分探しストーリーだから仕方ない……そう思って眺めていた。
だがしかし。
新人公演では違った。
ガチにラブストーリーだった。
主人公とヒロインのせつない恋物語だった。
同じ脚本、同じ演出なのに、演じる人が違うとここまで変わるのかとアゴが落ちた。
……それを、思い出したよ。
正塚作品は総じて恋愛色少なめ。
押さえた展開やわずかな台詞の中に、どんだけ「恋愛」を出せるかで、作品がまったく変わってくる。
『La Esperanza』もそうだったけれど、それにはヒロインの力が大きい。
正塚作品のヒーローは「男は黙って・・・」という、正塚おじさんの憧れ炸裂キャラが基本なので、恋に振り回されちゃうと主役像から逸脱する。
正塚ヒーローって、「受け身」なんだよね、すべてにおいて。
事件が起こって「仕方なく」動き出す。女に愛され「仕方なく」恋愛する。
「フッ、仕方ないな……」と言いながら、なにかをする。「やれやれ……」と言いながら、アクションを起こす。
自分からがっついたりしない、それは「かっこ悪い」。求められて重い腰を上げる、それこそが「ヒーロー!!」だと思ってるんだろう。
そんなドリーム炸裂した主人公を「上げる」恋愛をするには、なんつったってヒロインの力。
めっちゃいい女のヒロインが、熱っぽくドラマティックに恋愛し、クールな主人公にすがりついてきてはじめて、「やれやれ……」という恋愛が成立する。
カーラ@みゆちゃん、すごい。
この「どーしよーもない正塚芝居」を、ちゃんと「恋愛ドラマ」に押し上げる熱演……!!
彼女がきちんと恋愛しているから、ラブストーリーになる。
無駄に愛を叫ぶべたべた脚本は好きじゃないので、わたしは正塚おじさんの「押さえた台詞の応酬」によって作り上げられる「ラブストーリー」が、実は好物だ。
ただ、なにしろ直接的に台詞によって説明されないもんだから、足りない役者が演じると、恋愛の見えないたるいだけの話になってしまう。
役者さえ合えば、正塚作品はものごっつー深みを持つ。
『ルパン』がいい出来の作品だとはまったく思っていないが、それでも正塚らしさはあるわけで、それは役者が変わるだけでこんだけ変わるのかと改めて刮目した。
みゆちゃんの芝居力はすげーなー。
的確に「核」を取り出して、良く見えるところに差し出してくる。
欲しいモノを差し出してくれるから、こちらはただ素直に受け取って、あるがままに酔えばいい。
『春の雪』『月雲の皇子』と、みゆちゃんを視界の中心に据えておくだけで、だーだー泣ける、なんて気持ちのいいヒロイン力の持ち主。
『春の雪』はともかく、『月雲の皇子』なんてあんな半端な描かれ方だったのに、それでもみゆちゃんが力尽くで演じきってたもんな。
ヒロインだけどんだけよくっても、その相手役が良くなければ成り立たない。
今回、みゆちゃんのすごさを再確認したけれど、たまきち良い、と久しぶりに思った。
久しぶりに……いや、ある意味、はじめて。
抜擢が早く、キャリアが十分すぎる弊害で、劇団推しの御曹司様には自然とハードルが高くなってしまう。
そこそこ出来ていた、とか、まあまあ良かった、程度だと「いつもと同じ」「ふつー」になってしまう。だってそんだけの機会を独り占めしてきたんだもん。
たまきちくんはほんと、いつも「まあ良かったんじゃないかな。なにも発見はないな」というところに落ち着いていて、悪目立ちするほどヘタでない以上、記憶にも視界にも留まってくれなかった。
主演バウですらそんな感じ。たまきちならこんな感じ、と想像するラインあたりの出来だから、特にナニも感じないというか。
反対に、『ロミオとジュリエット』の死だとかロミオだとか、『ベルばら』のジェローデルだとか、役によってはまったくもって柄違い、見ていて気の毒になるという、苦手ジャンルがはっきりしまくっていることだけが、記憶に残っている。
大人の役は得意だけれど、それは「ヒゲが似合う」ってことだけで底上げされるというか、「たまきちかっけー!」と思うときって大抵おっさん役だった。
真ん中として育てられている人だし、おおらかな明るさと大きさを持つ人だから、ふつーの主人公役もふつーに出来る。
抜擢当初は「学年のわりにうまい」から「良い」と思えたことが、抜擢状態が当たり前になってくると学年ではなく経験値に照らし合わせて判断するようになるから、評価基準が変わってくるのは仕方ない。
彼がはじめて抜擢された『ラスト プレイ』では「良い」と思ったけれど、それはあくまでも「初抜擢の研2でこれはすごい」という意味だ。
そっから先はしばらく「学年のわりに、良い」が続き、ついには「機会独占しているわりには、ふつー」になった。
「新人公演主演4回目」「バウ主演済み」という肩書きゆえに上がった評価基準で。
久しぶりに……あるいははじめて、「たまきちが、良い」と思った。
ルパンってこんな人だったんだ?! 『ルパン』ってこんな話だったんだ?!
……本公演で見えないモノがいろいろ見えて、アゴ落ちっぱなし(笑)。
正塚の「受け身」の「男は黙って・・・」の、クソ難しい主人公を、説得力をもって共感出来る「人間」に仕上げている。
みゆちゃんとの相性の良さもあるかもしれない。
みゆちゃんに愛されている、そして自らも彼女を愛しながらあえてその愛に背を向ける姿が、めちゃくちゃかっこいい。
正塚が目指したモノ、って、コレぢゃないの……?
ただ立っているだけで「ヒーロー」だった。
彼が主役だということを、納得出来た。
たまきちに合った役と作品、そして相手役だったんだろう。
タカラヅカスターなんてもんはオールマイティのスペシャリストである必要はまったくない。それは脇の人が担うべきこと。真ん中は、自分の得意分野で観客を魅了すればいい。
たまきちにはいわゆる「耽美」「中性的妖しさ」系は似合わない。だけど、男臭さ、おっさんぽさは抜擢当初からずば抜けている。「男装したオンナノコ」が多い昨今、貴重な持ち味。
だから今磨くべきは、「度量の大きな役」を演じて魅力的に見せること。
ストイックなヒーローを演じて、包容力を見せること。
バウ主演を経て、今まさに成長著しいってことかぁ。
役割を見事に果たしてくれて、うれしい驚き。
いやあ、面白かったわあ、新公。
そして、たまきちと正反対の魅力を持つまさおには、いろいろと難しい役と作品だったんだろうなあ。真ん中を輝かせるための役や作品を書くことが、座付き作家の仕事なんだけどなあ。
本公演は本公演として、キャストの魅力で楽しめているけれど、……正塚ェ。
そーいやたまきちくんの最初の抜擢、研7のみりおくんよりおっさんの役を研2で見事に演じきった『ラスト プレイ』も正塚作……たまきちが、正塚芝居のハマる役者だってことも、大きいのか。
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