及第点はあるけれど、それがあまり力になっていない、という印象を持った。星組新人公演『ロミオとジュリエット』

 主役のロミオ@礼くんはもちろんうまい。
 ヒロイン・ジュリエット@美伶ちゃんも、課題はいろいろあるけど、十分うまかった。

 あと死@れいやくんがすげー美しくして、乳母@風ちゃんはほんとにのびのびとうまかった。神父@ひろ香くんもよくやっていた。本役より大人っぽくてこわいキャピュレット夫人@あんるちゃんもさすがだし。ベンヴォーリオ@夏樹くんもかっこよかった。

 それぞれ個々にうまい、新公としての及第点は得ている……けれど、それが作品全体の、なんつーんだ「物語」としてのクオリティにつながっていないような。

 個人技ばかり見せられてもな……。

 えーっとまず、ベンヴォーリオ@夏樹くんとマーキューシオ@紫藤くん、別に仲良くないよね? ベンはマーさんのこと眼中にないよね? マーさんはひとりで空回ってるし、ロミオも別に、彼らの親友じゃないよね?
 乳母はジュリエットのこと、母性を持って愛してないよね? 自分のことは大好きだけど。
 神父様はロミオをかわいがっているのかもしれないけど、なんかこの人に頼るのは間違ってる感がしてならない。やさしくしてくれる=頼り甲斐のある人ぢゃないんだよ、ロミオ……。

 キャピュレット卿@レイラはこれでもかという色男。ビジュアル特化、他はいろいろがんばれ!(特に歌)だし。
 ティボルト@麻央くんに至っては、「それぞれうまい、及第点」の人々の中、逆の意味で目立ちまくり。

 ひとりずつがうまくて、それぞれ強くて、その強さをひけらかしていて、でも調和しない。
 自分のうまさや得意分野を抑えてでも、周囲を見回したり合わせたりは、……現時点ではできないのか。下級生だもんね。

 新人公演なんだから、それでいいのかもしれない。
 よくやっていた、及第点はあった……それでいいはず。

 でもこの残念感は、ものすごくうまい・おもしろい人が、いなかったことにあるのかなと。

 個人技としてみんなそれなりで、まとまりも方向性もナイけどふつーによく出来た新公だった。
 でも、それ以上がない。
 せっかく大作『ロミオとジュリエット』なのに。

 新人公演ってこんなもんだっけ? わたしの期待値が大きすぎたせい?
 でもさ、雪組・月組の『ロミジュリ』新公は、面白かったんだよなあ。
 月組は神父がスポットライト浴びて慟哭芝居カマして、そこで場内の温度をぐわーっと上げ、ラストシーンまで力業でつなげてしまった。
 雪組はなんつってもベンヴォーリオ。彼のソロで場内の空気が動き、歌い終わったときにはただならぬテンションになっていた。空気が動く、という快感を客席で感じることが出来た。(後日彼は、このソロを歌っている間の記憶がない、と話していたんだっけ? 舞台の神様が舞い降りた瞬間だったのかな)

 主役でなくてもいい。
 誰かひとり、劇場の空気を変えるくらいのナニかをぶちかましてくれたら、新公自体の色が変わったんだと思う。

 新人公演なんだから、雪も月も出来映え自体は星と変わってないんだと思う。ただ、空気をひとつにするナニかが、後半ぽーんと飛びだして来たか否かで。
 舞台は生き物、そして新公は特に影響を受けやすい。キャリアやスキルがない分、ナマの感情が伝染しやすいんだと思う。緊張の伝わり方も半端ナイし。
 誰か突出して空気を動かせば、素直な若者たちはそこへなだれ込み、一緒になって駆け抜けていく。新公の楽しさって、そういうところにもある。本公演はもっと理性的だから、集団ヒステリー状態になることなんて、そうそうないもの。
 誰かひとりでいい、突き抜けて面白い人、空気を動かす人がいれば。
 星組は、それがないまま、同じテンションとカラーで終わっちゃった印象。

 「舞台」って、「ミュージカル」って、難しいんだなあ。

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