1回観る分には楽しかったけど。
 花担の友人たちが肩を落としていることは、重々承知しています、『戦国BASARA』。リピートするのは、キツイよねえ……。
 題材がどうこうというより、演出が。

 すでに外部で舞台化済みの題材をタカラヅカに持ってくるんだ、当然「タカラヅカ」としての演出をするんだと思った。
 『銀河英雄伝説』といえば艦隊戦、宇宙空間での壮大な戦闘をどうするんだよ → んなもん、群舞で表現に決まってるじゃないか! と、思ったように。

 『戦国BASARA』ってアクションアリだよね? いちおー戦国時代モノなんだし?
 しかも、とっても動きにくそうな二次元衣装着てのバトルだよね?
 で、ソレを女の子たちだけの歌劇団でどう表現するか、って、そりゃ考えるまでもなく、歌とダンスででしょう!

 アクションゲームが原作でも、演目が発表になったときはなんの疑問もなかった。
 アクションなんかまともにやるわけないじゃん、歌とダンスで表現、外部舞台ときっちり差別化。
 らんとむ率いる花組で上演、てことはダンスダンスダンス! ダンシング・ミュージカルですな!
 タカラヅカでわざわざ上演する以上、タカラヅカの得意分野、タカラヅカならではの表現方法で、原作を再現するのですな!

 そう、思ってワクテカした。

 制作発表を見て、「動きにくそうな衣装だな」とは思ったけれど、実際の舞台、特にダンスシーンが同じ衣装とは限らないし、特撮ヒーローがアップになる変身シーンだけゴツ重そうな衣装で、通常の演技場面はもっと軽量化されたものを身にまとっているように、使い分けるんだと思った。
 みりおくんが謙信役だというのも、そーゆー意味で納得。あまり激しいダンスをしなくて済みそうな役を、ダンス苦手な人に振ってきたな、と。


 まさか、ダンス軽視、アクション重視だとは、思わなかった……。

 えーと。
 タカラジェンヌは、女の子です。
 若く美しい女性たちが、男役娘役と分かれ、異世界を作り上げています。
 男役は、男性ではありません。
 男性がやってカッコイイことをそのままやらせても、カッコイイとは限りません。
 まったく別モノだもの。だから、いいんだもの。

 なのに。

 男性と同じく筋力任せのアクションをして、なんになるの……?

 男性ほどカッコ良くなるわけないじゃん。
 重そうだな、大変そうだな、となるに決まってるじゃん。男性以上の筋力は持ってないんだから。

 動きにくそうな衣装、重そうな武器で、お約束通りの周囲に気を配ったぎこちない動き、やらされてる感満載の殺陣、もちろん迫力などなく、「タカラヅカだもん、この程度だよな(溜息)」でしかないアクションシーンがてんこ盛り、大盤振る舞い。
 誰得なの……?

 派手な演出、映像に高速セリ多用にスモークに本物の水。
 奇をてらっていろんなことはやっている。
 大がかりだからなんか、派手な気はする。
 でも、せっかく派手な大変そうなことをやっているのに、苦労しているほどの効果は得られていない。

 華麗なダンスで表現してくれればいいのに。
 らんとむさんのダンス力を盛大に発揮して、「力任せに武器振り回す」以外の戦闘表現を、「こんなに観てて楽しい・美しい表現方法があったんだ!」と観客が感嘆するような演出を……。

 しょぼん。

 演者たちがすごーくがんばっていることがわかる、そりゃそうだ絶対大変だよあれ、とわかるアクションシーンが、いちばん見ていて無理があってつまらない、という矛盾。
 いちばん体力筋力的に辛いことならば、それこそがいちばんカッコイイことであるべきなのに。
 辛いばっかで結果が伴わない、って、観ている側もつらくなる……。
 がんばっているのも大変そうなのも一目瞭然だから、応援したい、盛り上げたいと思うけれど、目に映るものは微妙でしかなくて。てゆーか大変そうなのが一目瞭然で観客がアスリートを応援するサポーター状態になる舞台って、エンタメって、どうなの?

 スズキケイめ……。


 衣装はオープニングなどの要所要所のみ正式版で、あとは動き重視の軽量版にして、マジなダンスパフォーマンスに変更しちゃえ。
 揺れているだけのどーでもいいダンス、無理なことがわかるアクション、全部刷新! 戦闘画像が欲しいなら、スクリーンにCGで合戦シーン流しておけばいいじゃん。それをダンスで表現してるんですよと、ミュージカル手法に馴染みのナイ人にもわかるように。
 幸村@らんとむがうだうだゆってる場面も本格的なダンスシーンに変更。

 あと音楽がいまいち残念な気もするんだが……もっとミュージカル的に深みのあるモノにならんかったんかなー。

 オリジナルヒロインの扱いが難しいのはわかる、いのり@蘭ちゃんの設定は、いい落としどころだと思った。
 ただそれをどう描くか。……スズキケイ、情緒足りないよね、演出(笑)。ベタか繊細か、どっちか突き抜けちゃえばいいのに。どっちつかずで、観ている側も気持ちが吹っ切れない。

 情緒足りない人がそれらしきことをやるとどうなるか。
 夢@くまくまの、わからなさってば。

 幸村の心情を表すダンサー、この世のモノではない、他の人には見えていない存在、いわゆる「コロス」なんだけど……この使い方が、ひどい(笑)。
 ナニを表現したいのか、幸村がナニを悩み、ナニを客席に伝えようとしているのか、どちらへ向かうのか、まったくもって「ミュージカル的表現」として成功していない。

 幸村がナニ悩んでんのか、ナニ言ってんのか、わかんねー……。

 自分の至らなさで信玄@みつるが傷つき、力不足に落ち込む、というのはわかる。
 でもその前からテーマ的に存在する「夢」の中途半端さがひどい。
 せっかくタカラヅカならではの美しい表現方法であるはずなのに、このはずしっぷりときたら。

 スズキケイの情緒の限界は、星の見える海辺でのラヴソングなのかな。

 ではせめてフィナーレで、タカラヅカの得意分野、蘭蘭コンビの魅力爆発を……! と思ったら、拍子抜けの日舞だし。

 蘭寿さんの魅力を最大限発揮させてやってくれよ……あの幸村をやった人が、フィナーレではがらりと変わって、色気ゆんゆんの大人の男で登場、客席を圧倒するところが観たかったよ……。


 コラボだし、祭り公演だし、ストーリーはシンプルでいいと思っている。
 ゲームのイメージを大切にしつつ、タカラヅカ男役の格好良さ、ミュージカルの楽しさを体感出来れば、それだけで十分だと思っている。
 それだけでいいのに、何故別のことをしようと躍起になって、盛大にすべってるんだ?

 今の『戦国BASARA』の演出が、「タカラヅカの『戦国BASARA』」として正しいモノだとは、残念ながら思えない。

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