フェルゼンを主人公に物語を構成するなら、どうするか。自己満足上等、頭の体操、楽しく『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』をいじくってみる。

 第2幕は革命。
 ここで描くのは、バージョンアップして「最終形態」になったフェルゼン。
 もうなにごとにも動じない、人生悟り済み。愛に生きる、アントワネットのそばを離れない。
 だから、革命勃発、誰もが国王一家を見捨てて逃げ出す中、フェルゼンだけは決して見捨てない。
 国王一家救出に奔走。
 しかし歴史の流れを止めることは出来ずに、アントワネットは処刑される。

 構成としては、最初に「最終形態へ変化」、フランスへ戻って「両思い」、革命勃発で引き裂かれ、危険を冒して再会、はじめて結ばれる「成就」、そしてアントワネットの死による「永遠の別れ」。

 流れとしては「別れ別れ」→「再会して愛爆発!」、「別れ別れ」→「再会して愛爆発!」、の繰り返し、上がって下がってのジグザググラフみたいな感じ?

 2幕オープニングは、なんと戦場から。
 幕開きはショーパートだからねー、派手に群舞が必要。
 アメリカ独立戦争です、ええ。そこでかっこよく戦うフェルゼン。
 ダンスの合間に「愛に生きるぜ俺は」的な歌を歌ったり?
 戦友との会話をちょろっと入れて、フェルゼンがいるのがアメリカ遠征軍だということを観客に伝え、かつ、「死亡フラグ」をわざと立てる。
「恋人がいるんだろ? 何故志願してきたんだ?」と、ナニも知らない戦友。
「天に問うためさ。生きて戻ることが出来たなら、この命、愛のためだけに捧げる……たとえ、それが罪であっても」
 「この戦闘が終わったら、結婚式だ!」が死亡フラグであるように、この思わせぶりな会話のあと、フェルゼンは仲間をかばうなりして凄絶に撃たれるのだ。
 フェルゼン、死んじゃうの?! と観客をびっくりさせつつ、場面転換。

 いつものベルサイユ。戦場とうってかわって、対照的に華やかに。
 そこで贅沢三昧、一部の取り巻き以外にはすっかり嫌われているアントワネット。オスカルはそんなアントワネットをたしなめるけれど、アントワネットには通じない。
 華やかに無神経に過ごしていながら、アントワネットが孤独であることを表現。
 そこへ、悟りを開いたフェルゼン登場。
「この命も心もすべて燃えつくすまで、アントワネット様におささげいたします」
 生と死の狭間で、ほんとうに大切なモノがナニかを知ったんだな。

 フェルゼンは、王妃としてアントワネットにどう生きるべきかを語る。教える。
 私欲で群がってくる貴族たちを遠ざけろ、ぜいたくをするな、公務を果たせ……王妃として当たり前のことをしろと説く。
 自分は影として、表には出ず、アントワネットを支える覚悟。
 だからその思いのまま、オスカルに会う。「わたしの分もアントワネット様をお守りしてくれ」
 フェルゼンを愛しているオスカルは苦しむけれど、なにしろ最終形態フェルゼンなので、その毅然とした姿に感じ入り、自ら恋に終止符を打つ。
 アンドレとの会話でそれを表現し、「1幕ラストで黒オスカル、黒アンドレに見えたけど、なんだ、ちゃんとふたりともいいキャラじゃん!」とフォローしつつ、オスカルにはアンドレがいるから大丈夫だよなと匂わせて。

 革命の説明は最小限に。
 アントワネットの今までの行いがツケになって、とんでもない状況になっているとだけわかればいい。
 フェルゼンに「アントワネットを頼む」と言われたオスカルだけど、民衆に対しての考え方はまったく逆、相容れないことを表現。アントワネットは平民たちを武力で押さえつけることを当然としている。
 ふたりの亀裂から、「革命」の派手な場面へ。
 オスカルと衛兵隊センターでの群舞でもなんでもいい、あーゆーノリで。しかし、あまり尺は取らないし、ここはメインではない。
 本舞台でドンパチやって「革命だーー!」とか騒いでいるときに、花道から銀橋へ、フェルゼンと従者のやりとり。
「フランスへ行くなんて、死にに行くようなものです!」と止めるのを振り切って。
 革命のダンスやコーラスの最中、愛に生きるフェルゼンの歌声が響く。

 そして、オープニングへつながる。
 革命の大騒ぎ場面で、オスカルもアンドレも倒れた。
 しんと誰もいなくなった舞台にひとり立つアントワネット。
 そこへ登場したフェルゼン、オープニングと同じ台詞、

「ともに死ぬためにもどってまいりました…
あなたの忠実な騎士(ナイト)にどうぞお手を…」

 ここでふたりの愛は晴れて「両思い」になる。
 なにしろ、「いまこそ、あなたの盾となり、あなたをささえ、あなたを愛するのはこのわたくしなのだと…ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンなのだと、フランス国民のまえに名のりでましょう!」だからなー。
 ここで2幕はひと区切り。

 2幕後半、まずは不穏な、なにかに追い立てられるような感じで、国王一家がパリに移され、ヴァレンヌ逃亡事件→失敗と出来事を早回しに。細かいことはいいから、あらすじだけをフェルゼンが語ればヨシ。
 場面としては、逃亡失敗でアントワネットたちが民衆に罵られるところだけでもいいかもなー。
 それによって国王一家の立場がさらにやばいものになった、追い詰められてさあ大変!な状況だとわかればいい。

 そんな国王一家を救おうと、必死になっているフェルゼン。
「プロシアもロシアもオーストリアさえ……ヨーロッパの王のだれひとりとして力をかしてくれる者はいなかった……」
 ということで、ひとりでテュイルリー宮へ忍び込むために、がんばる。忍び込むのはひとりだけど、協力者はいていいから、この「忍び込み」場面をサスペンス的に盛り上げる。侵入するために、フェルゼンは仮面着用。……んな姿だとますます怪しいってもんだけど、伏線なんで大目に見てくれ。

 そして苦労の末、フェルゼンはアントワネットと再会する。
 これが、最初で最後の夜。ふたりははじめて結ばれる。

「あなたのためにアントワネットは生まれてきました。この髪もこの胸も、血のさいごのひとしずくまで、すべて、すべてただあなただけのものです」……アントワネットのこの壮絶な台詞が好き。だからこの場面こそが、ふたりの愛の絶唱。

 ふたりを裁く者は、ただ神のみ。

 そーして結ばれたあと、「成就」したんだからハッピーエンドへ転がるかと思うとそうじゃない。
 せっかく命懸けでやってきたのに、ルイ16世もアントワネットも、脱出を拒む。
「国民との約束を破るわけにはいかない」……ふたりとも、国王として、王妃として、全うしようと覚悟を決めている。

 植爺版の「牢獄」場面に相当する「最期の別れ」だけど、アントワネットは突然「母なんです」と子どもを免罪符にしたりしない。
 王妃として務めを果たそうとする。

 フェルゼンを見送るアントワネット、ふたりの最期の別れには、あざとくふたりの出会い、仮面舞踏会が本舞台で再現される。
 テュイルリー宮侵入のためにフェルゼンが付けていた仮面は、あのときと同じ。
 アントワネットも何故かあのときの仮面を付け、時が戻ったかのように華やかな世界が展開される。

 そこには、死んだはずのオスカルもアンドレも、その他時代を彩った人々すべてが登場する。
 美しいベルサイユ。美しいパリ。
 華やかなテーマソング、わっかのドレスの貴婦人たち、宮廷服、軍服の貴公子たち、これぞタカラヅカ!!
 出会うべくして出会った、運命のふたり、フェルゼンとアントワネットが踊る。
 愛を歌う。

 そこからアントワネットひとり、後ろの階段を上っていく。
 貴族たちだけじゃない、舞台には民衆たちもいる。
 すべての登場人物たちが人形のように静止して見守る中、アントワネットは消え、取り残されたフェルゼンが永遠の愛を歌って幕。

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