主人公にするにはエピソードが足りなさすぎて、脇一直線の原作フェルゼン。彼を主人公に、わたしならどうするか。
 『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』自己満足語り、続き。

 1幕は三角関係。
 恋愛はエンタメ、好いた惚れただけで十分ドラマになる。
 アンドレ→オスカル→フェルゼン→アントワネット。
 フェルゼンとアントワネットは両思いだけど、この中でアントワネットひとり人妻。誰ひとり手放しでハッピーにはならない布陣。
 アンドレまで書いている暇はないだろうからそこは投げっぱなし上等、ただ画面に入れておけば役者が勝手に芝居するし、観客も脳内補完するだろう。
 メインはフェルゼン、アントワネット、オスカルの3人、三角関係。

 「出会い」-仮面舞踏会、「恋が深まる過程」-落馬事件ときて、あと必要なのは「障害」と「別れ」。

 原作で、フェルゼンは二度フランスを去っている。
 まだ恋愛以前、淡い感情のうちに一度去り、次は本気で恋愛爆走したあと、戦争へ行くことで去っている。
 短い舞台で2回「別れ」をやるのはややこしいから、ここはひとつにまとめる。
 てことで、フェルゼンがフランスを去るのは戦争ネタのみにする。

 主人公はフェルゼンなので、彼の心や行動を中心に物語を組み立てなければならない。
 運命の人アントワネットと出会った、だけど問題山積み、自分ではどうしようもない、んじゃあとは天命を待つ。
 戦争に行き、命ぎりぎりのところで人生を考え直す。

 だから1幕ラスト場面は「出征するフェルゼン」。
 いろんなことに行き詰まり板挟みになり、こうする以外なかった……というところまで、彼が追い詰められる。
 と、このラストシーンを目標に、「障害」をぶち上げる。

 なんでフェルゼンとアントワネットの恋が禁忌なのかというと、不倫だからだ。まあ、身もフタもない(笑)。ただの不倫なら略奪愛もアリかもしれんが、アントワネットはフランス王妃だった。国がかかってきちゃーどーしよーもない。

 落馬事件のころは、アントワネットはまだ責任のない王太子妃だった。
 でもそのあとすぐに国王崩御、アントワネットの夫が国王になる。
 立場が変わったのだから、以前のように無邪気に青春していられない。

 障害としてフェルゼンの前に立ちふさがるのは身分、立場。世間の目。
 自分が悪く言われるだけならかまわないけど、より攻撃されるのはアントワネット。
 だから彼は、身を引くしかなくなる。

 この「障害」を「メルシー伯爵の何十行にも渡るお説教」で説明するのではなく、貴族の人々、平民の人々の歌やダンスで表現すればいいんじゃね?

 そんななか、落馬事件でそれぞれ愛やらとまどいやらを歌ったテンションの続き、同じ曲で、フェルゼンとアントワネットは「わすれてください今は、わたくしが王妃であることを!」「アントワネット様、お慕いしておりました……!」で盛り上がり。
 おいおい、落馬事件のころと立場チガウし、周囲の目も違ってるんだけど? と、ラヴラヴシーンの背景に不穏な空気を混入。

 その一方で、オスカルもアンドレを話し相手に苦悩中。
 オスカルには周囲の反応が見えている。このままではフェルゼンのためにもアントワネットのためにもならない。

 わかりやすくするために、アンドレに思考を導いてもらうとか。
「いちばん手っ取り早く、お前の立場的にも正しいのは、王妃の不倫を糺弾し、フェルゼン伯爵を追放すること」
 そんなことできるわけない、王家を守り、世間の溜飲を下げられるとしても、それじゃアントワネットもフェルゼンも傷ついてしまう。
「心がなにより大切ってことで、ふたりの恋を応援するか? 国も義務も関係ない、愛こそが至高だと」
 そんなことできない、他国から嫁いだ王妃の不倫、国内だけでなく、へたすりゃ国際問題、国家存亡まで言及する事件。
「じゃ、どうするんだよ。ま、このまま放置しておけば、いずれどちらかの結末にたどり着くだろうよ」
 不倫をやめさせ、フェルゼンに咎を負わせるか、不倫をこじらせ国際問題に発展し、フランス自体が傾くか。

 突きつけられる救いのない二択は、オスカルだけでなくフェルゼンにも届いている。(アントワネットにはまーーったく届いてない・笑)
 苦悩するフェルゼンとオスカル。
 フェルゼンの後ろではアントワネットが「愛してる~~、この愛ナシでは生きていけない~~♪」とか歌い踊り、さらにフェルゼンを追い詰める(笑)。
 苦悩するオスカルの後ろで、アンドレがぽつんと核心を突く。
「3つめの選択肢もあるんだけどな。国のため、ふたりのためだという顔をして別れさせ、傷心のフェルゼン伯爵の心をオスカルが捉える」
 ザ・魔性の女コース。

 1幕のテーマは三角関係、オスカル様にも恋愛要素をがっつり担ってもらいましょう。
 アンドレの「魔性の女」発言のあと、ぴたりと音楽やみ、オスカルは苦悩から突き抜けて、フェルゼンのもとへ。
 アントワネットとの不倫が問題になっていると忠告に行く。
 原作知らない人からすれば「え、オスカル、自分の恋大事で、ふたりを別れさせるの?!」と取れる行動、ミスリード。アンドレにしても「オスカルに卑怯な真似をたき付けるひどい男?」とミスリード。

 ただし、オスカルの忠告以前に、フェルゼンは心を決めていた。
「アメリカ遠征軍へ志願した」
 オスカルがーーん! 別れてくれとは言うつもりだったけど、戦場へ行けとは言ってない!! 「生きて帰れるかどうかさえわからない!!」
 後ろにいるアントワネットも遅れてがーーん!
 生きて二度と会えないかもしれないのに、アントワネットはフェルゼンのもとへ行けない、彼女の嘆きの歌声を遮るようにセリが上がり、盆は回り、アントワネットはフェルゼンから遠ざけられる。
 アントワネットを取り巻く壇上の貴族たち、登場してくる兵士たち、フェルゼンもまた銃を取り、兵士たちのセンターに立つ。
 わかりやすく台詞で言ってもいいかもね。
「これ以上アントワネット様のおそばにいれば、あの方の立場を危険なものにしてしまう。だが、あの方のおそばにいて、この燃え上がる情熱を押さえつけることは出来ない」……わざわざ「真実の愛? それはなんだ?」とどーでもいいことをだらだら演説したりしない、独白としてぴしっと終了。
 アントワネットは玉座を思わせる高台から涙ながらに、オスカルは本舞台で剣を抜いて捧げ、貴族たちはそれぞれダンスなり歌なり役目をこなし、イケコの1幕ラスト的に盛り上がりつつ、「この愛がゆるされないというならば、天がわたしを裁くだろう」……マント付きフェルゼンが銀橋で見得を切って、幕。

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