未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 書きたいことがあり過ぎて、ちっともまとまらないので、最初から。

 はじまり方は『JIN-仁-』とかぶる。
 舞台中央に手術台、一般人が一生口にすることのないオペ開始の台詞。……キムくんの台詞の難しさは半端なかったなと(録音だけど)。

 ↑ と、最初書いていたけど、情報いただきました。キムくんのあのめちゃくちゃ難しい台詞、録音じゃなくて生台詞なんだって!! 本人舞台にいないけど、いるのはダミーだけど、声は生なんだって! すげえ!! なんであんなものすごい台詞、一度も噛まずに言えるんだ?! ……さすがキムくんだわ……。

 このはじまり方に、「ああ、雪組は医療ものがつづくな」としみじみする。
 ……まっつは医者役者、これで何回目の医者役?

 まずBJの手術開始の台詞からはじまり、開演アナウンスはそのあと。

 手術シーンはスクリーン越しのシルエットで表現。
 その前で、「BJの影」が踊る。
 えーと。今回「影」多すぎ(笑)。しかも、随時入れ替わる。
 オープニングのBJの影は豪華キャスティング。ともみんや咲ちゃんまで入ってる。
 ここのともみんがすげーかっこいい。黒髪! 黒髪!

 一度だけ、この「手術室」のスクリーンが、降りてこないアクシデントがあった。たしか、よりによってヤンさんがモニターで見ていた日(笑)。
 わたしはぼんやりさんなので、最初スクリーンが降りてないことに気づかなかった。BJの影さん見てたら、舞台セットの動きなんか気にならないもの。
 ふつーは、影たちの登場と共にスクリーンが降りてくるのに、それがナイ。
 あれ、なんかライトがまぶしい……舞台上にあるライトが、客席を直撃して目が痛い……。
 と思って、はじめて「あるべきものがナイ」ことに気づいた。
 その目を直撃するライトは、スクリーンにシルエットを映し出すための投影機の役割のものだった。

 ちょ……っ、手術室むき出しっ。
 BJ@まっつ、むき出しっ。

 えーと。
 やっぱ、変な姿です。いくら舞台とはいえ、手術している人たちと、なんか踊ってる人たちが同じ場所にいるのは。
 スクリーンはなくてはならないねー。

 シルエットとはいえ、生で演じているわけだから、スクリーンがあってもなくてもまっつは同じように手術の演技をしている。
 その姿を、ガン見しました。ライトまぶしかったけどっ。

 背中っ、背中っ、白衣まっつの背中っ。
 手の動きっ、白衣まっつの手の動きっ。
 手袋を取って、こちらへ向き直って。

 えーと、演じている人たちはいつ、「やべーよ、スクリーンねえよ!!」って気づいたんだろう。
 あるべきはずのセットがないと、いろいろ困るよね。どうフォローすればいいのか、びびるよね。

 しかしBJはんなこたぁおくびにも出さず、「BJ」のまま正面に向き直る。

 ふつーなら、スクリーンを両手でかき分けて出てくるのに、ナニもないから、そのまま前へ。

 BJが料金交渉を大臣たちとしている間、看護師役のふたりはちょースピードでそれぞれ袖にはけていくんだが、「手術は中断しているだけ、また続けますよ」という内容なので、それって変だよなあ。
 なのにスクリーンがないから、空っぽの手術室が丸見えのまま。
 ……大変だニャ。


 まあ、それはともかく。
 ベンリー・キッチンジャー@りーしゃ、ペロリー・クリキントン@雛ちゃん、マトマラン大臣@大樹くんという、役名が発表になったとき「大丈夫か」と思った、あの人たち登場の場面。
 名前を遊んでいるだけで、至極まともでした。
 ……まあねえ、舞台上で呼び合うことがなければ、名前なんてただの記号だから、なんだっていいわけなんだけど。

 りーしゃはもう中堅なんだねえ……。
 若手ばっかのこの舞台で、いろいろがんばってました。
 雛ちゃんは無理なくいい女、大人の女。

 金にがめついBJに、がんがん噛みつくヒステリックなふたりと違い、大臣は冷静です。
 大樹くん、いいなあ。2幕のいかにもイマドキの若者って感じのチャラい空港職員との差別化がいい。

 友人に「あの大臣と空港職員やってた子って……」と聞かれたときに、意気揚々と「『フットルース』でハンバーガー食べてた子! つか、いつもなにかしら食べてばっかいた子!」と評して、友人を困惑させてしまいました。
 そんなんじゃ、伝わらないよねええ。
 『フットルース』のみみちゃんの妄想場面で、下手端で踊ってた子、と言うべきだったか。(伝わらない?)

 まあともかく、ここでのポイントは、金の話をするBJ先生の、下卑た表情です。

 まつださん……。

 まっつさんは、貴族キャラ、知的キャラです。プガチョフを演じたときに「品がありすぎる」ことがマイナスになったくらい、「品」を標準装備している人です。

 でもまっつってさー、ときどきすっごく野卑な表情するよねー。
 全ツ『Red Hot Sea II』の縄の男とかさー。

 下劣!って感じの、いやな笑い。
 露悪的というか。
 この男、マジやばい。そう思わせる、いやらしさ。

 わたしは、大好物です。

 まっつってさー、マジな悪役似合うと思うのー。
 プガチョフみたいな「英雄」でもなく、海馬教授みたいな「マッド・サイエンティスト」でもなく、張良みたいな「信念の人」でもなく。
 ほんとーにどうしようもない、唾棄すべき悪人。「ほんとはいい人なんです」も「彼がこうなったのは、仕方のないことなんだ」もなく、ほんとに容赦なく、ただの悪人。
 観客がなんの遠慮もなく憎み、ムカつける人。主人公がやっつけて「すーっとした!」と思える人。
 ……あー、でもやっぱ、まっつだと「やっつけられて、かわいそう」になっちゃうのかなあ? 体格が華奢だしなあ。

 でも、ほんとに下卑た表情得意だよなあ。惚れぼれ。

 BJが手術室に戻ったあと、大統領の側近たち@りーしゃ・雛ちゃんがBJを罵るわけだが。
 ここのポイントは、トラヴィス@ホタテはBJを罵らないことですわ。
 大臣にくっついて登場した、大統領警護官トラヴィス。彼が口を出す立場でないことはわかるが、これだけ感情的に誰もがBJを罵っている場面だ、それに乗ることは可能。
 口を出さなくても、表情で感情を表すことはできる。
 しかしトラヴィスはBJを責めない。悪意や嫌悪などの先入観はないようだ。

 トラヴィスはただ、困惑している。

 これって、重要なことだと思う。
 このあと、この同じメンバーで「オープニング・ショー」がはじまる。
 BJがどんだけ悪どい医者であるかを、されど天才であるかを、ミュージカル的に表現。
 もちろんトラヴィスも一緒になって歌い踊る。だから、その前段階で、彼もBJを責めていても、おかしくはないんだ。

 でも、それをしない。

 みんながBJを罵っている場面で、中立であること。
 これが、その後のトラヴィスというキャラクタに大きく影響する。
 ここでりーしゃたちと同じようにしていたら、そのあとのBJの警護の、意味が違ってくるもの。

コメント

日記内を検索