吠える負け犬・その2。@ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌
2013年2月20日 タカラヅカ BJ@まっつが、カイト@咲ちゃんを嫌いなのは、よくわかる。
『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』第1幕にて、BJはカイトに対してブチ切れる。
足が不自由なカイトは、自分のすべての不幸をそのせいにしていた。安上がりな自己憐憫と自己正当化、責任転嫁。さいてーだ。
カイトが幼稚で卑劣で、クズなのはかまわない。そんなの、カイトの勝手だ。勝手に不幸でいればいいし、もっと不幸になればいい。
BJは最初、カイトを嘲笑っている。「金がないと殺されるかも」と言うカイトに、「知ったことか。どうせ博打でつくった借金だろう」と。
BJがキレるのは、そこにピノコ@ももちゃんがいるから。
ほんのついさっき、ピノコはBJを助けるためにカイトを超能力で攻撃した。
つまりピノコは起きているし、BJとカイトの会話を聞いている。
「足が不自由だから幸せになれない」という泣き言も、「(身体が不自由なら)死んだ方がマシだ」「どうせまともに生きられない」という決めつけも、全部全部、ピノコは聞いている。
BJを守るために超能力を使ったピノコが、沈黙している。カイトを攻撃することもなく。
彼女はどんな想いで、カイトの言葉を聞いたのか。
カイトに金を渡して追い払ったあと、BJは再度ピノコに語りかける。
ついさっきも同じよーなことを言って、同じよーな流れで歌い出したよね。
でも、この2曲のピノコへの歌は、意味合いがぜんぜん違うんだ。
1回目のときはやさしく希望に満ちた歌だったのに、2回目はかなしい苦痛を含んだ歌になっている。
生まれてくるべきではなかった。
求められていない、居場所がない、しあわせになれない。
カイトの決めつけはピノコに対してであり、自分自身に対してでもある。
そして。
ピノコと自分を重ねている、BJのことでもある。
存在を許されない彼ら。
誰にも理解されず、孤独の底にいる彼ら。
だからBJは、ピノコを助けなければならない。彼自身が、生きるために。
そこまでカイトを嫌っていたのに、次にカイトと会うとき、BJは態度を一変させている。
ヤクザ同士の抗争で、傷ついたカイトはエリ@あゆみちゃんに支えられてBJの家までやって来た。
ケガ人だから助ける。だって、医者だから。
……という範囲を、超えた態度なんだ、BJ。
カイトを追ってきたヤクザ@真地くんたちの銃口に身をさらし、カイトを守る盾となる。
それはカイトが、生きたいと切望して、ここまでやって来たからだ。
最初に会ったとき、自暴自棄だった強盗が。
「自分が殺されるかもしれない」からと強盗を思いつくような幼稚で自分勝手な青年。うまくいかないと、駄々をこねるだけ。
あのままのカイトだったら、BJのところまで来ずに、そうそうにあきらめていただろう。自分の不幸を呪って、他人を恨んで。自分では、なにもせずに。
それが、恋人らしい女の子と一緒に、BJを頼ってきた。
BJの家って、町中ではなく、崖の上にあるんでしたっけね。ただ医者にかかりたいだけなら、そんなところまで来るはずがない。
カイトは、おぼえていたんだろう。自分にやさしくしてくれた、ぶっきらぼうな医者のことを。
叱り飛ばし、金をくれた。自分と同じ「生まれてくるべきではなかった」子を、助けようと必死になっている変わり者。
カイトの気持ちがわかるから、BJにスイッチ入った。
「いやしくも私は、自分の患者を見殺しにしたことは一度もないんだ」「この男は絶対に渡さん」……ピノコに語りかけていた、あの言葉だよ?
見捨てたりしない、助けてやる……。
“お前は今 怯えながらも ひたすら生きようとしている"……。
カイトを抱きしめるBJが、やさしすぎてびびる(笑)。
BJせんせ、落ち着いて。それ、ピノコちゃうから! せんせよりはるかにでかい(縦にも横にも)男の子だから!! せんせにそんなことされたら、誤解しちゃうから! いろいろとやばいから!!
と、心配しちゃうくらい、この瞬間カイトへの心の向き方が一途で無防備で、こわいです、BJ先生。
おかげでカイトくん、すっかり誤解しちゃってるしねー。
BJに治療費のことを言われるまで、なんか思い込んでたみたいよ?
「あんたやっぱり、金だけの人なのかな」「なんだと思ってたんだ」……ほんとに、なんだと思ってたんだ(笑)。
命懸けで銃口の盾になってくれた人ですよ?
生きるか死ぬかのときに、抱きしめてくれた人ですよ?
耳元で、やさしい声(しかもあの美声、かつ無意味にセクシーヴォイス!)でささやいてくれた人ですよ?!
そりゃオチるわ……吊り橋効果ありすぎるだろ……。
一生かかって、BJに治療費を払う……つーか、関わり続けるんだろーなー。
つか「一生」って、それプロポーズ……ゲフンゲフン。
エリは出来た子だから、カイトがどんだけBJせんせ大好きで、なにかっちゃーせんせのことをうっとり話しても、それごと全部受け止めてくれるんだろうなー。
いやその、腐った意味は置いておいても、カイトの物語はピノコやBJ自身とリンクした、ドラマティックな物語だと思うんですよ。たかが日本のヤクザの抗争で、規模は小さいけど、心のドラマとして。
バイロン@ともみんの話は1幕ラストで完結してるよーなもんだし(相愛の恋人同士の痴話喧嘩以上の事象を描いてないからなー)、ストーリーのあるカイトの方をじっくり描いて欲しかった。
ともみんとせしこのいちゃいちゃは大好物なので、毎度がっつり堪能しましたし、熱血侯爵様がツボ過ぎるので楽しかったけれど、それとは別に、「作品」として、カイトとバイロンの物語の尺の取り方が間違っているだろうと。
……まあいろいろ事情があったのかなと思う。
カイトを襲ったヤクザたちは、「このままで済むと思うなよ」と捨て台詞を残しているけれど、それはBJの「私の患者は、お前らの世界の人間も大勢いるんだよ」が関係して、問題なしになったんだろーなーと思う。
BJ先生が一言、裏社会のボスに脅しをかければ、それで解決。「あのBJ先生になんてことを……!」てなもんで。
や、なんかすでにホロボロンテさん@『エロイカより愛をこめて』的な展開しかアタマに浮かばない……暗黒街のボスがBJせんせの大ファンなんだよね……それで誰もBJに手を出せないのよね……(笑)。
生まれてきたことを恨んでいたら、誕生日なんか祝えない。
カイトはBJによって生まれ直した。それは、人間のこぶの中から生まれ直したピノコと同じように。
「誕生日おめでとう」
カイトの言葉は、自分自身に向けたものでもある。
居場所のなかった負け犬は、この「世界」を受け入れ、歩きはじめた。
『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』第1幕にて、BJはカイトに対してブチ切れる。
足が不自由なカイトは、自分のすべての不幸をそのせいにしていた。安上がりな自己憐憫と自己正当化、責任転嫁。さいてーだ。
カイトが幼稚で卑劣で、クズなのはかまわない。そんなの、カイトの勝手だ。勝手に不幸でいればいいし、もっと不幸になればいい。
BJは最初、カイトを嘲笑っている。「金がないと殺されるかも」と言うカイトに、「知ったことか。どうせ博打でつくった借金だろう」と。
BJがキレるのは、そこにピノコ@ももちゃんがいるから。
ほんのついさっき、ピノコはBJを助けるためにカイトを超能力で攻撃した。
つまりピノコは起きているし、BJとカイトの会話を聞いている。
「足が不自由だから幸せになれない」という泣き言も、「(身体が不自由なら)死んだ方がマシだ」「どうせまともに生きられない」という決めつけも、全部全部、ピノコは聞いている。
BJを守るために超能力を使ったピノコが、沈黙している。カイトを攻撃することもなく。
彼女はどんな想いで、カイトの言葉を聞いたのか。
カイトに金を渡して追い払ったあと、BJは再度ピノコに語りかける。
ついさっきも同じよーなことを言って、同じよーな流れで歌い出したよね。
でも、この2曲のピノコへの歌は、意味合いがぜんぜん違うんだ。
1回目のときはやさしく希望に満ちた歌だったのに、2回目はかなしい苦痛を含んだ歌になっている。
生まれてくるべきではなかった。
求められていない、居場所がない、しあわせになれない。
カイトの決めつけはピノコに対してであり、自分自身に対してでもある。
そして。
ピノコと自分を重ねている、BJのことでもある。
存在を許されない彼ら。
誰にも理解されず、孤独の底にいる彼ら。
だからBJは、ピノコを助けなければならない。彼自身が、生きるために。
そこまでカイトを嫌っていたのに、次にカイトと会うとき、BJは態度を一変させている。
ヤクザ同士の抗争で、傷ついたカイトはエリ@あゆみちゃんに支えられてBJの家までやって来た。
ケガ人だから助ける。だって、医者だから。
……という範囲を、超えた態度なんだ、BJ。
カイトを追ってきたヤクザ@真地くんたちの銃口に身をさらし、カイトを守る盾となる。
それはカイトが、生きたいと切望して、ここまでやって来たからだ。
最初に会ったとき、自暴自棄だった強盗が。
「自分が殺されるかもしれない」からと強盗を思いつくような幼稚で自分勝手な青年。うまくいかないと、駄々をこねるだけ。
あのままのカイトだったら、BJのところまで来ずに、そうそうにあきらめていただろう。自分の不幸を呪って、他人を恨んで。自分では、なにもせずに。
それが、恋人らしい女の子と一緒に、BJを頼ってきた。
BJの家って、町中ではなく、崖の上にあるんでしたっけね。ただ医者にかかりたいだけなら、そんなところまで来るはずがない。
カイトは、おぼえていたんだろう。自分にやさしくしてくれた、ぶっきらぼうな医者のことを。
叱り飛ばし、金をくれた。自分と同じ「生まれてくるべきではなかった」子を、助けようと必死になっている変わり者。
カイトの気持ちがわかるから、BJにスイッチ入った。
「いやしくも私は、自分の患者を見殺しにしたことは一度もないんだ」「この男は絶対に渡さん」……ピノコに語りかけていた、あの言葉だよ?
見捨てたりしない、助けてやる……。
“お前は今 怯えながらも ひたすら生きようとしている"……。
カイトを抱きしめるBJが、やさしすぎてびびる(笑)。
BJせんせ、落ち着いて。それ、ピノコちゃうから! せんせよりはるかにでかい(縦にも横にも)男の子だから!! せんせにそんなことされたら、誤解しちゃうから! いろいろとやばいから!!
と、心配しちゃうくらい、この瞬間カイトへの心の向き方が一途で無防備で、こわいです、BJ先生。
おかげでカイトくん、すっかり誤解しちゃってるしねー。
BJに治療費のことを言われるまで、なんか思い込んでたみたいよ?
「あんたやっぱり、金だけの人なのかな」「なんだと思ってたんだ」……ほんとに、なんだと思ってたんだ(笑)。
命懸けで銃口の盾になってくれた人ですよ?
生きるか死ぬかのときに、抱きしめてくれた人ですよ?
耳元で、やさしい声(しかもあの美声、かつ無意味にセクシーヴォイス!)でささやいてくれた人ですよ?!
そりゃオチるわ……吊り橋効果ありすぎるだろ……。
一生かかって、BJに治療費を払う……つーか、関わり続けるんだろーなー。
つか「一生」って、それプロポーズ……ゲフンゲフン。
エリは出来た子だから、カイトがどんだけBJせんせ大好きで、なにかっちゃーせんせのことをうっとり話しても、それごと全部受け止めてくれるんだろうなー。
いやその、腐った意味は置いておいても、カイトの物語はピノコやBJ自身とリンクした、ドラマティックな物語だと思うんですよ。たかが日本のヤクザの抗争で、規模は小さいけど、心のドラマとして。
バイロン@ともみんの話は1幕ラストで完結してるよーなもんだし(相愛の恋人同士の痴話喧嘩以上の事象を描いてないからなー)、ストーリーのあるカイトの方をじっくり描いて欲しかった。
ともみんとせしこのいちゃいちゃは大好物なので、毎度がっつり堪能しましたし、熱血侯爵様がツボ過ぎるので楽しかったけれど、それとは別に、「作品」として、カイトとバイロンの物語の尺の取り方が間違っているだろうと。
……まあいろいろ事情があったのかなと思う。
カイトを襲ったヤクザたちは、「このままで済むと思うなよ」と捨て台詞を残しているけれど、それはBJの「私の患者は、お前らの世界の人間も大勢いるんだよ」が関係して、問題なしになったんだろーなーと思う。
BJ先生が一言、裏社会のボスに脅しをかければ、それで解決。「あのBJ先生になんてことを……!」てなもんで。
や、なんかすでにホロボロンテさん@『エロイカより愛をこめて』的な展開しかアタマに浮かばない……暗黒街のボスがBJせんせの大ファンなんだよね……それで誰もBJに手を出せないのよね……(笑)。
生まれてきたことを恨んでいたら、誕生日なんか祝えない。
カイトはBJによって生まれ直した。それは、人間のこぶの中から生まれ直したピノコと同じように。
「誕生日おめでとう」
カイトの言葉は、自分自身に向けたものでもある。
居場所のなかった負け犬は、この「世界」を受け入れ、歩きはじめた。
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