ということで、長々と『フットルース』組の新人公演『JIN-仁-』メンバーの話をしておりましたが。
 よーやく主演コンビの話です。

 『フットルース』でもカップルだった、咲ちゃんとさらさちゃん。

 咲ちゃんは1年半ぶりの4回目の主演、さらさちゃんは初ヒロイン。
 ジーターとユーリーンが大好きだったので、このふたりのカップルがもう一度見られる!ってだけで、テンション上がりました。


 咲ちゃんは抜擢が早すぎて、学年からすりゃうまいけど、ぷくぷくまるまるオンナノコまんまのうちから主演独占、オイシイ役独占、無理な立ち位置連続で、組ファンどん引き、拍手皆無の初日、とか、いろいろいろいろありました。

 でも確実にうまくなっているし、かっこよくなってきている。
 今年になってからの伸びはすごい! 特に『フットルース』のイケメンぶりときたら……!!

 と、期待値は高かったっす。

 なんつーか、今回が初主演なら良かったのに、と思いました。

 無理な抜擢で反感買いまくるよりも、ちゃんと実力とビジュアルが付いてきて「あの子誰、カッコイイ」「あの子が主演したら、絶対観に行く!」と観客に思わせてから、ここぞとばかりに主演させれば、観客は「あたしたちの思いが届いた!」と驚喜して駆けつけるのにねえ。
 主演独占に見合うだけのモノを放てない場合、劇団の思惑と観客の気持ちは反比例するのにねえ。

 仁先生@咲ちゃんは、ふつうにうまかったです。

 ……そう、ふつうに。
 新人公演として。


 「主役」って、特別のことなんだなと思う。

 『フットルース』で、主人公の友だちのひとりとして、モブより一歩前、という立ち位置にいるときは、そりゃステキだった。
 イケメンで目を引いた。小芝居も楽しかった。

 『JIN-仁-』本公演で、悪役としてちょろっと出てきてキメポーズにキメ台詞を言う、それもまたステキだった。
 体格イイし、声も通るし、オイシイ役だった。

 しかし。
 脇としてかっこよかったりおいしかったりするのと、真ん中で2時間近くすべてを牽引するのは、まったく別のことだ。

 咲ちゃんは、ふつうにうまい。
 なにが出来ない、というわけじゃない。
 歌も芝居もダンスも破綻はない。
 あとはカラダが絞れていないとか、所作がゆるいとか、男役として年月を積まないとどーしよーもない部分くらいしか、目に見えて欠けているところはない。

 ふつーにできる、ふつーにうまい。
 ……それだけで、何故こうも「足りない」感が残るんだろう?

 脇でちょこっとおいしいことをする分には、とてもステキなスターさんなのに。

 なにかひとつでも、圧倒的なものがあれば、チガウのかな。

 なにかがとてつもなく欠けていたとしても、それを覆い隠してしまうくらい、とんでもないナニかが。
 歌唱力でも空回りするくらいの熱度でも、なんでもイイから、ナニか。

 そしてそれは、新公主演3連続やって、バウ主演もやって、その他いろんな公演で主要キャラやって、経験値だけでいったらそのへんの上級生スターよりはるかに高い、そういう「安定期に入った人」が出すのは難しい「ナニか」なのかもしれない。

 無理な抜擢をせず、少しずつ大切に育てて、はじめての主演にこの素材をぶつけてくれたら、どんな爆発力を見せてくれたんだろうか?
 安定ではなく、崖っぷちの情熱を。

 はじめての主演でこの出来なら、それだけで騒がれたろうになあ。
 咲ちゃんのキャリアだと、「出来て当たり前」だもんなあ。

 うまかったよ。
 いい新公主演ぶりだった。
 キムくんを忠実になぞっている感じ。彼から出来るだけ多くのモノを吸収しようとしているのがわかる。

 でも、主演って、真ん中のスターって、難しい。……そう思った。


 初ヒロイン、咲@さらさちゃんは……。

 役と立場を、ほんっとーに選ぶ人だなあ、と、思った……。

 さらさちゃんのパーツが派手で造作の大きい顔は、舞台人として武器だと思う。どこにいてもわかるし、表情もよく見える。
 ただ、「タカラヅカのヒロイン」という狭く小さなカテゴリからは、大きくはずれていると、思う……。

 現代の結命役はいいんだけど、日本髪が致命的に似合わない……。

 本公演の茜ちゃんもそうなんだけど、あちらはヒロインじゃないので、ファニーフェイスでも「かわいい」で済む。
 しかし、ガチにヒロインとなると……「チガウ」としか。

 また、彼女の芝居の質も、ヒロインとはチガウ気がする。
 大芝居というか、技術に頼っている感じというか。まず外側の芝居をどーんと見せつけて、そこから奥がわかりにくい。
 技術に頼った芝居が強くて、その強さばかりが目について、それ以上の心の動きがわかりにくい。
 植田歌舞伎っぽい感じ?
 たぶん、わたし好みのお芝居ではなかったんだと思う。

 ユーリーンがそうだったように、脇にいるときはそれが心地いい。
 スポットライトや物語の中心が彼女には当たっていないため、歌舞伎的な強く大ぶりな芝居をしてくれると、目に入りやすい。
 真ん中を見ていても、同時に、脇でなんかやっている彼女が視界に入る。芝居は真ん中だけでするものじゃないし、世界は主人公だけで作られているわけじゃない、脇の子たちも生き生きと生活している……それが世界観を深めている。
 さらさちゃんの濃さと大きさは、その舞台の世界観を多層的にするのに必要だった。

 でも、彼女が真ん中だと……物足りない。
 大きいばかりで、繊細さがチガウ。や、芝居なんて好みでしかないから、わたしにとって、というだけで、世間様の感想はわからないが。
 あくまでも、わたしにとっては、違った。

 外見か芝居か、どちらかがわたしの求める「ヒロイン」と合致していればよかったんだけど……両方かけ離れていたので、今回はきつかった。

 アントワネット役だったら、ハマったかもなー。
 それを思うと残念だ。


 さらさちゃん、うまいのに。華と押し出しのある、よいスターさんなのに。
 ヒロイン決まったときは喜んだ。実力派キターーッ、と。
 ショーでもさらさちゃんのボンバーなダンスを見るの好きなのに。目を奪う子なのに。

 主演って、真ん中のスターって、難しい。……そう思った。


 あくまでも新人公演、あくまでも現時点でのことだから、彼らがこの先どんだけステキに花開いて、真ん中とは彼らのためにあるっ!という、スターさんになるかもしれない。
 ソレに期待する。

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