駆け抜ける、一瞬の風のように。@JIN-仁-/GOLD SPARK!
 芝居に、「中詰め」がありました。

 ショーのお約束。
 オープニング/場面1/場面2/中詰め/場面3/フィナーレ……という構成における意味での、中詰め。
 オープニングに匹敵する、出演者総ラインアップの華やかな場面。

 雪組公演『JIN-仁-』『GOLD SPARK!』初日観劇。

 芝居の演出は、サイトーくん。
 いいときと悪いときの当たり外れの振り幅が大きく、幕が上がるまで不安の方が大きいサイトーヨシマサ。

 今回は、わたしの好きな方のサイトーくんでした。
 いい悪いではなく、好き嫌いの話です。

 すなわち。
 おもちゃ箱をひっくり返して、ハイスピードで人生謳歌。
 繊細さだーの深みだーのはないけれど、とにかく色とりどりで落ち着きなく、愉快に突っ走って「完」、という作風。

 サイトーくんは、詰め込みまくった方が面白い。
 ヘタに余白があると、余計なことして話(キャラ)が歪む。
 それよりも、あれもこれもと話(キャラ)を詰め込んで、具が多すぎておにぎりうまく握れない!くらいの濃度がいい。

 大きなストーリーがどうこうより、キャラとエピソード拾っていくだけで終始するから、「キャラ物」と割り切っていられる。
 そのラノベ的というか、真夜中の1クールで終わるアニメ見てるみたいなお気楽さがいい。

 こーゆー世界観なので、中詰めがあっても変じゃない。
 ストーリーに関係なく、ただキャラの盛り上がるショー場面がどーんと入る。
 『花恋吹雪』でさんざんやってた、アレ。『エル・アルコン』でやってた、アレ。
 ああ、これが出るなら安心だ、これは良いサイトーくんだ(笑)。

 わかりやすく登場人物全員が「使命」「使命」と口々に言ってくれる。おかげで、原作の持つ深みや旨味は全部、お手軽な「特撮モノ」「ヒーローアニメ」的テーマに統一されちゃう。
 こんだけ「描くこと」を小さくまとめれば、あとは「キャラ物」としてがちゃがちゃやってても、なんとか話がまとまって見えてくれるってもん。

 考えすぎないで、あとはキャラに萌えていればそれでよし。

 役が多いって、いいね!!

 観劇予習のためHPの「主な配役」をプリントアウトした人がさー、「『銀英伝』が長いのは覚悟していた。でも『JIN-仁-』はさらに長かった!」と感嘆していたのを、思い出した。
 配役欄の、物理的な長さ。スクロールしてもスクロールしても、配役がある。
 ふつーの作品より役が多く、配役ページが長い『銀英伝』。それよりもさらに、役の多い『JIN-仁-』! 『銀英伝』でA4用紙2枚だったのが、『JIN-仁-』では3枚いったってゆーからなー(笑)。

 舞台の上にやたらめったら人がいて、彼らがみんな、それぞれに人生送っているわけですよ。役があって、生活してるの。
 RPGの、ただ歩いていて、話しかけると「ここは江戸よ」と一言だけ決まった台詞を言って通り過ぎる、何回話しかけても「ここは江戸よ」と同じ台詞しか言わないNPCじゃない!っていうか。

 役があってキャラクタがあって、下級生たちまですげー勢いで芝居している。
 それを眺めているだけでも楽しい。
 で、また、キャラクタが、合っている。
 主要キャラから、モブの人々まで!

 主人公の南方仁@キム。

 タカラヅカ的な、心に傷を持つ美形天才ドクター。

 この潔い設定!
 現代日本の外科医のくせに、ロン毛でちょいやさぐれハート(笑)。天才だっつーのが周知の事実。「神の手を持つ医者」だと言われている。

 江戸時代の人が、現代医学を知る仁先生のことを「神の手」と言うのはわかる。
 そうじゃなくて、現代でも「神の手」なの。

 原作ともドラマともチガウ、あくまでも「タカラヅカ」の仁先生。

 キムくんへのアテ書き。
 それが、心地いい。

 仁先生にひたすらついて行く咲@みみちゃんもまた、キムみみふたりの関係に自然とオーバーラップする。

 人間関係のドロドロ、策謀や裏切り、その他いろいろのアレなことは一切描かず、「人間っていいな!」だけを描いたストーリー。
 出てくる障害は誤解とか時代・歴史上の仕方ないこと、であって、「仁先生はゴッドハンド」「仁先生はハートフル」ってだけで、全部、超えていける。この単純明快な、ストーリー展開!

 単純だからこそ、心地よい。
 余計なことに気を取られず、シンプルに人情劇に酔っていられる。

 夕霧@あんなちゃんのとこから最後まで、なんやかんやで泣き通したよ……。
 それまでだって、いろいろこみ上げるものはあったのに、杏奈様は反則だよ……ルーシーちゃん……!!

 原作モノなのに、有りモノの主人公とその相手役なのに、キムみみが好きだーー!と叫べる作品。それくらい、ふたりに重ねて泣ける。

 ナガさんは違和感なくいつものナガさん、わたしたちのナガさん!
 はっちさんかっこよすぎるっていうか、花担やってた身としては、こちらも違和感なくいつものはっちさん。

 みっちゃんも安定のクオリティ。見事に締めてくれる。
 芝居があまりに専科さんなのでびびったが、ショーではちゃんと「スター!」さんな扱いだった。

 龍馬@ちぎはこれまた見慣れた感じ。新公も観たし、渡会も観たし、的な?
 愛されキャラで、ちぎくんぴったり。

 とみもんとせしるのカップルが「江戸っ子」的にかっこいい。痛快。つか、せしる美女……いなせ……。

 大ちゃんは期待通りの大ちゃん。突き抜けたキャラが素敵!! おフランスだもん、そうでなきゃね!!

 あゆっち、芝居はうまいし華はある、そこはもう「さすが!」なんだが……顔の輪郭だけはどうにも「野風」「呼び出し花魁」という説得力に欠ける……でももうこれは、仕方ないのか……。
 アントワネットも、似たよーなカツラになるよなあ。デコ全開にボリューミ~な感じ……が、がんばれあゆっち……。

 まつださんは、いろいろ慣れなくて混乱。いや、わたしが(笑)。
 まず若者役、つーのがすでに、混乱だわ……。

 冒頭、サイトーくんお馴染みの映像キターー!と思ってぼーっと油断してたら、まつださん登場だもん……びびったわー。な、なるほど、サイトーだもんなあ。(赤ん坊アニメの微妙さの方が強く焼き付いてましたわ・笑)


 ショー『GOLD SPARK!』は、あっという間。
 1場面が短い上に、前半と後半のメインとなる場面が両方ともストーリー仕立てなので、あっけなさに拍車が掛かる感じ。
 後半はクライマックスだからそのままとしても、前半はストーリーに頼らず、「ショー」としてガンガン行くべきだったのでは? とは、思う。

 でも、楽しく観ました。
 つかこっちも泣いた……。あー消耗した……。


 芝居もショーも楽しく通えそうで、良かったっす。
 本公演が2作連続このクオリティって、なんてありがたいんだろう。……これで退団公演でなければ、通常も公演でさえあれば、言うことないのに。

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