異端審問あれこれ。@ドン・カルロス
2012年5月15日 タカラヅカ 『ドン・カルロス』の感想をぽつぽつと。
ある意味いちばん衝撃的だったのは、階段に挟まれているにわにわかもしれない。
異彩を放つ異端審問長官@にわにわ。
クライマックスの異端審問場面において、不安な音楽ののち舞台が明るくなると、セットの階段が真ん中にふたつどーんと配置されている。
そのふたつの階段の間に、にわにわが、いる。
顔色の悪い、あの異端審問長官の姿で。
無表情に。
階段に、挟まれている。
や、正確には、階段と階段の間、の、さらに後ろに坐っているわけなんだが、ぱっと見、階段の間にいるように見える。
階段の間は人ひとりぎりぎり入れるかな、ぐらいなので、センター席からしかちゃんと見えない。
しかしセンター席からは、見えてしまう。
階段に挟まれた、顔色の悪いにわにわが。
はじめて見たときは、衝撃だった。
ナニ……っ?! あたしはナニを見ているの? 見てはならないモノを、見てしまったのか……ッ?!
その、挟まれた状態でも十分アレな画面なのに。
さらにこのにわにわは、動く。……上に。
せり上がっていくんだな。
だもんで、階段に挟まったまま、ずんずん上にあがっていくの。
笑えるよ?
すごい画面なんだもん。
びっくりして、混乱して、ただもお、笑うしかない。
センターに坐ったときのお楽しみです。
階段に挟まれたにわにわ。さらに、挟まったまませり上がるにわにわ。
……キムシンェ。
フェリペ二世@まっつの「ちょ、とーちゃん落ち着け(笑)」というネタではじまった、この騒動。
やっぱりこの人騒がせとーちゃんゆえに、話は終わる。
真面目に考えるといろいろアレな話なんだが。
ちゃんと会話しろよ、夫婦の会話、親子の会話をしておけば、こんな騒ぎになってないんじゃん。
とゆー、それだけのことに思えるけど、それができない王家という特殊な家族の物語だから、仕方ない。
仕方ないことが積み重なって、誰もが真剣に生きて、傷ついてきて。
そうして、ここにたどり着いた。
キムシン的キーワード「見殺し」を口にするフェリペ二世。
彼は、過ちを認めることのできる人間だった。
自分の過ちゆえに、大ごとにしてしまった。
だから彼は、公の場で過ちを認める。
なあなあにしない。誤魔化さない。
公明正大な君主。
だからこそ、臣下は王を讃えるんだ。
フェリペ二世が「この恥は取り返しのつくものだ」と言った瞬間に、その場の貴族たち全員が起立し、「♪太陽の沈むことなき帝国 その未来に栄光あれ」と歌うのが好き。
王が偉業を為したときに歌うのではなく、「過ちを認めた」ときに歌うのよ?
「過ちを認める」ことこそを偉業だと、尊敬していると、訴えるの。
こういう人だから、好きなんだ。こういう人だから、ついていくんだ。その意思表示。
……そんな中、ひとりぷるぷる震えているポーザ侯爵@ちぎが好き過ぎる(笑)。
トレド大主教@ナガさんの厳格さと温かさがいい。
ナガさんが雪組を離れる、最後の作品、最後の役がこうであることに、キムシンの愛情を感じる。
内輪受けでしかないとしても、こういう配役をするところが、タカラヅカの良さだと思う。
多くは語らない、さらりとした台詞の中にこめられたドラマが好き。
なにもかも終わったあと、フアナ@リサリサの計らいで、カルロス@キムのマントを持って現れたレオノール@みみ。
「この人は昨夜、私からも逃げようとしたのですよ」と、フアナは言う。
「もう王宮には帰れません」とカルロスに告げたレオノールは、フアナに呼び止められても、逃げるしかなかったんだろうなあ。
会わせる顔がない。大恩あるフアナに背を向けなければならないレオノールの悲しみや、申し訳なさを思うと、それだけで切ない。
フアナもまた、そんなレオノールの気持ちや立場を理解した上で、脅しつける勢いで、足を止めさせたんだろう。
牢獄で会ったカルロスが、ボロボロのレオノールに声を詰まらせていた。
この時代の女性が、自分で服を破り、脚を見せるなんて、わたしたちの感覚ではわからないほどの恥辱なんじゃないの?
それこそ、もう真っ当な生活は望めないほどの恥。それでもレオノールは自らドレスを破き、石垣を登った。
カルロスが死ねば、彼女も命を絶ったろう。その未来が、結果が、当たり前に見える。浮かぶ。
フアナもまた、それだけの想いを背負って、受け止めて、レオノールを引き留めたんだ。つかまえたんだ。
カルロスが死ねば、レオノールも死ぬ。レオノールが死ねば、カルロスも死ぬ。
愛する若者たちふたりの命を背負い、足を止めさせた。思いとどまらせた。
破滅へ向かうことを、許さず。
そんな女同士のドラマが浮かぶ、台詞ひとつで。
いいよなあ。
……ほんとに。
最初にフアナ様へ相談しておけば、万事解決だったのに、フェリペ二世め。
賢いフアナ様は、カルロスとレオノールの身分違いの恋に引導を渡すため、レオノールに縁談を用意する。
カルロスの友人のフェルディナンド@咲ちゃん。
フアナ様が勝手に準備しただけで、フェルディナンドがレオノールに恋して、とかではないと思う。
レオノールは両親(後ろ盾)を失った下級貴族の出なんだろうな。最初はフアナの侍女として、次に王妃の女官として、知性教養共にばっちり教育済みだろう。今売り出し中の青年貴族の奥方にするのに、ちょうどいい。……王子の妻、王妃には相応しくないとしても。
カルリートとノーラになって、旅立っていくふたり。
銀橋でいちゃいちゃするふたりを残し、フェリペ二世がみなを下がらせるのがイイ。……うん、見てられないよね(笑)。
しあわせな、しあわせな、物語。
音楽が残念、中堅どころの使い方が残念など、言いたいことはあるけれど、大好きな作品。
しあわせなまま、観ていたかったよ。
ある意味いちばん衝撃的だったのは、階段に挟まれているにわにわかもしれない。
異彩を放つ異端審問長官@にわにわ。
クライマックスの異端審問場面において、不安な音楽ののち舞台が明るくなると、セットの階段が真ん中にふたつどーんと配置されている。
そのふたつの階段の間に、にわにわが、いる。
顔色の悪い、あの異端審問長官の姿で。
無表情に。
階段に、挟まれている。
や、正確には、階段と階段の間、の、さらに後ろに坐っているわけなんだが、ぱっと見、階段の間にいるように見える。
階段の間は人ひとりぎりぎり入れるかな、ぐらいなので、センター席からしかちゃんと見えない。
しかしセンター席からは、見えてしまう。
階段に挟まれた、顔色の悪いにわにわが。
はじめて見たときは、衝撃だった。
ナニ……っ?! あたしはナニを見ているの? 見てはならないモノを、見てしまったのか……ッ?!
その、挟まれた状態でも十分アレな画面なのに。
さらにこのにわにわは、動く。……上に。
せり上がっていくんだな。
だもんで、階段に挟まったまま、ずんずん上にあがっていくの。
笑えるよ?
すごい画面なんだもん。
びっくりして、混乱して、ただもお、笑うしかない。
センターに坐ったときのお楽しみです。
階段に挟まれたにわにわ。さらに、挟まったまませり上がるにわにわ。
……キムシンェ。
フェリペ二世@まっつの「ちょ、とーちゃん落ち着け(笑)」というネタではじまった、この騒動。
やっぱりこの人騒がせとーちゃんゆえに、話は終わる。
真面目に考えるといろいろアレな話なんだが。
ちゃんと会話しろよ、夫婦の会話、親子の会話をしておけば、こんな騒ぎになってないんじゃん。
とゆー、それだけのことに思えるけど、それができない王家という特殊な家族の物語だから、仕方ない。
仕方ないことが積み重なって、誰もが真剣に生きて、傷ついてきて。
そうして、ここにたどり着いた。
キムシン的キーワード「見殺し」を口にするフェリペ二世。
彼は、過ちを認めることのできる人間だった。
自分の過ちゆえに、大ごとにしてしまった。
だから彼は、公の場で過ちを認める。
なあなあにしない。誤魔化さない。
公明正大な君主。
だからこそ、臣下は王を讃えるんだ。
フェリペ二世が「この恥は取り返しのつくものだ」と言った瞬間に、その場の貴族たち全員が起立し、「♪太陽の沈むことなき帝国 その未来に栄光あれ」と歌うのが好き。
王が偉業を為したときに歌うのではなく、「過ちを認めた」ときに歌うのよ?
「過ちを認める」ことこそを偉業だと、尊敬していると、訴えるの。
こういう人だから、好きなんだ。こういう人だから、ついていくんだ。その意思表示。
……そんな中、ひとりぷるぷる震えているポーザ侯爵@ちぎが好き過ぎる(笑)。
トレド大主教@ナガさんの厳格さと温かさがいい。
ナガさんが雪組を離れる、最後の作品、最後の役がこうであることに、キムシンの愛情を感じる。
内輪受けでしかないとしても、こういう配役をするところが、タカラヅカの良さだと思う。
多くは語らない、さらりとした台詞の中にこめられたドラマが好き。
なにもかも終わったあと、フアナ@リサリサの計らいで、カルロス@キムのマントを持って現れたレオノール@みみ。
「この人は昨夜、私からも逃げようとしたのですよ」と、フアナは言う。
「もう王宮には帰れません」とカルロスに告げたレオノールは、フアナに呼び止められても、逃げるしかなかったんだろうなあ。
会わせる顔がない。大恩あるフアナに背を向けなければならないレオノールの悲しみや、申し訳なさを思うと、それだけで切ない。
フアナもまた、そんなレオノールの気持ちや立場を理解した上で、脅しつける勢いで、足を止めさせたんだろう。
牢獄で会ったカルロスが、ボロボロのレオノールに声を詰まらせていた。
この時代の女性が、自分で服を破り、脚を見せるなんて、わたしたちの感覚ではわからないほどの恥辱なんじゃないの?
それこそ、もう真っ当な生活は望めないほどの恥。それでもレオノールは自らドレスを破き、石垣を登った。
カルロスが死ねば、彼女も命を絶ったろう。その未来が、結果が、当たり前に見える。浮かぶ。
フアナもまた、それだけの想いを背負って、受け止めて、レオノールを引き留めたんだ。つかまえたんだ。
カルロスが死ねば、レオノールも死ぬ。レオノールが死ねば、カルロスも死ぬ。
愛する若者たちふたりの命を背負い、足を止めさせた。思いとどまらせた。
破滅へ向かうことを、許さず。
そんな女同士のドラマが浮かぶ、台詞ひとつで。
いいよなあ。
……ほんとに。
最初にフアナ様へ相談しておけば、万事解決だったのに、フェリペ二世め。
賢いフアナ様は、カルロスとレオノールの身分違いの恋に引導を渡すため、レオノールに縁談を用意する。
カルロスの友人のフェルディナンド@咲ちゃん。
フアナ様が勝手に準備しただけで、フェルディナンドがレオノールに恋して、とかではないと思う。
レオノールは両親(後ろ盾)を失った下級貴族の出なんだろうな。最初はフアナの侍女として、次に王妃の女官として、知性教養共にばっちり教育済みだろう。今売り出し中の青年貴族の奥方にするのに、ちょうどいい。……王子の妻、王妃には相応しくないとしても。
カルリートとノーラになって、旅立っていくふたり。
銀橋でいちゃいちゃするふたりを残し、フェリペ二世がみなを下がらせるのがイイ。……うん、見てられないよね(笑)。
しあわせな、しあわせな、物語。
音楽が残念、中堅どころの使い方が残念など、言いたいことはあるけれど、大好きな作品。
しあわせなまま、観ていたかったよ。
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