英雄であるということ。@Samourai
2012年1月3日 タカラヅカ
1月は忙しい。特に前半、わたしはなにかと身動き取れない日々になる。
だから年末から上演している公演は、年末の内に観劇しておきたかったのに。
チケットが手に入らず、1月にズレ込んだ。
うああ、なんでこー忙しいんだ、って全部自分勝手なだけなんだけど!(笑)
んで、どんなに忙しくても、もう一度観たかったんだ。
雪組DC公演『Samourai』。
泣きました。
とっても気持ちよく、大泣きしました。
日本が明治になった頃、前田正名@キムは念願のフランス・パリ留学を果たした。しかしそこで待っていたのは差別の日々。日本人なんて人間扱いされやしねえ。それでも日本人の誇りを胸に、正名と相棒の渡会@ちぎは留学生やってましたと。
そんな折、普仏戦争勃発、フランス政府瓦解。パリの人々は政府のやり方を認めず、独自でプロイセンへ抵抗する。正名と渡会もパリ市民として、パリの侍として戦争に加わる……てな話。
あ、あらすじにヒロイン・マリー@みみちゃんの名前が出てこない……。
とっても谷作品。ストーリーもテーマも。そして、キャストも。
谷せんせのお気に入りさんばっか集めてあるなーと。
歌ウマのがおりくんが「声」をテーマにしたバウに出ないことが残念だったりしたんだが、考えてみりゃわかる、彼は谷せんせのお気に入りの生徒のひとりじゃん、と。
演出家も人間、役者への好みはある。この演出家だといつも扱いがイイとか良くないとか、あるもんなー。
キムちぎヲヅキがおりホタテあんなさらさ……あたりは、谷せんせ好きなんだろうなーと思う、過去の役付から見ても。
そういう、好きに自由に構成する公演は、演出家も出演者も、やりがいがあるだろう。
原作は未読だけれど、主人公が、ナニかしているあたりが、原作のおかげかなと思う。
谷せんせの大好きな「英雄モノ」って、主人公がみんなから愛され、親友も仲間も部下もみんなみんな主人公のために笑って死んでいき、敵からは特別に憎まれて(愛と憎しみは同義語、愛の反対は無関心)、「大切な命」「命は宝」とことさら持ち上げるくせにその命を簡単に投げ出すことが萌え、という価値観で形成されている。
で、その英雄な主人公はナニもしない。
……とゆーのが、パターンなんですよ。周りが勝手にいろいろやって死んでいくけど、主人公はナニもしないの。だけど英雄なの。
あ、子守歌だけは歌うか。ここぞってときに歌って、みんなを泣かせる(笑)。主人公がするのって、それくらい。
それがお約束なのに、正名は実際に自分でも動いているので、「おおっ、原作付きってすごい!」と思った。
んで、これも谷せんせのお約束、英雄に、女は要らない。
恋愛要素は少なめ……ってゆーか、作者は、興味がない。
男が男のために命を懸けるのが尊いわけで、女のためなんて不純。女は飾り。いなくてヨシ。
谷作品ならばヒロインはお飾りだと覚悟しましょう。主人公はすべての人から愛されるので、もちろんヒロインもいつの間にか主人公にめろめろだけど、主人公は別にヒロインのことなんてなんとも思ってない。ヒロインがいることになっているので、形式上好きということにしているだけ。
それより、男たちの友情だーの、生きるの死ぬのの方に、重点と情熱を懸けている。
マリー@みみちゃんはまだ、マシな描かれ方だわ……。数々の谷作品のヒロインに比べたら。
んで、谷せんせの真の萌えは、主人公も非業の最期を遂げることこそにあるので、正名が生き残るのは残念なんだと思う。
困った萌えだよな-。
まあ、正名は生き残っちゃうけど、それまでにさんざん「大切な命」を失う仲間たちを惜しんで嘆きまくれるので、気は済んでいるのかもしれない。
谷せんせの「皆殺しこそカタルシス」だと思っているところは、好きじゃない。
死を描いて涙を誘うのはいちばん簡単な方法、ドーピングだと思っている。それで1位取っても実力じゃないよね的な。
でもたまになら受け入れられる。
谷せんせも最近はあまり、皆殺しやらなくなったし。
で、好きこそものの上手なれ、谷せんせは皆殺しが上手。
せっかく人の命を使ってドラマを盛り上げているんだから、ヘタに描かれたらつまらない。
男役をとことんかっこよく描き、観客の涙を搾り取ってくれなきゃだわ。
実際そうやって描かれた『Samourai』は、格好良かった。
ツッコミどころや間違っているところがどれだけあろうと、作者のすげー意気込み、パッションは伝わる。
「俺はコレが描きたいんだっ。うおお、これぞ美学、かっけーーっ!!」と、唾飛ばしながら興奮して表現しているのが、伝わってくる。
タカラヅカの範囲内で、タカラヅカの表現方法を採りながら、自分の萌えを本気で描いている様にドキドキします。
そのアツさに、巻き込まれます。
また、出演者が全霊をあげてソレに応えてるし。
キムくんたちの熱演で、間違いもツッコミもぶっ飛ぶし。
素直に、カッコイイ、と喝采し、その死に泣くの。
キムくんは、どこまで巧くなるんだろう。
粗のある脚本とキャラクタを、熱量と実力でもって息づかせる。
大地にしっかりと、足を付けて。
個人の力ではどうすることもできないものに立ち向かう、やるせない勇気ってのは、一見無駄なんだけど、男には必要なんだよ。
長いものに巻かれろ、保身で日和見してろって、そんな生き方だけが能じゃないんだよ。
嫌なことを嫌だという、間違ったことを間違っているという。
そんなシンプルな力、素朴な勇気が、必要なんだ。
シンプルで素朴だからこそ、難しい。
もっと複雑に考えて、身動きできなくなるのが人間だから。
全滅必至の戦いに打って出る正名たちはバカだけど、だからって、諾々と従ったら、どうなる?
陰でどれだけ不満を並べても、ちゃんと意思表示しないことには伝わらない。
どんなにちっぽけでも、無意味でも、「嫌だ」と言う人間がいた。「間違っている」と言う人間がいた。
その事実を、刻むんだ。
全滅しちゃったとしても、その事実は消えない。
無駄だとか、なにもしなかった奴らに言わせるな。
意味を決めるのは、自分自身だ。
……そんな、生き方。
バカだけどね。
好きだよ。
正名の生き方は、見ていて拳を握っちゃうんだな。よしっ、て。
キミを笑うヤツとは、友だちになりたくないよ。キミを誇りする人とこそ、語り合いたいな。
そう思える。
脚本や演出のツッコミどころとは別にね(笑)。
ところで気になるのは、彼の髪型だ(笑)。
パリに渡った正名くんは、衣服を改め髷を切る。
で、マリーに「馬子にも衣装ね!」と言われるわけなんだけど。
なんで、地髪だとあかんのん……?
せっかく変身して出てきたのに、カツラの微妙さに「……マリー、趣味悪い……?」と思っちゃったよ……。
その後、もう一段階髪型変わるので、少しマシになってたけど。何故にアンドレ@『ベルばら』……?
ふつーでいいのに。
だから年末から上演している公演は、年末の内に観劇しておきたかったのに。
チケットが手に入らず、1月にズレ込んだ。
うああ、なんでこー忙しいんだ、って全部自分勝手なだけなんだけど!(笑)
んで、どんなに忙しくても、もう一度観たかったんだ。
雪組DC公演『Samourai』。
泣きました。
とっても気持ちよく、大泣きしました。
日本が明治になった頃、前田正名@キムは念願のフランス・パリ留学を果たした。しかしそこで待っていたのは差別の日々。日本人なんて人間扱いされやしねえ。それでも日本人の誇りを胸に、正名と相棒の渡会@ちぎは留学生やってましたと。
そんな折、普仏戦争勃発、フランス政府瓦解。パリの人々は政府のやり方を認めず、独自でプロイセンへ抵抗する。正名と渡会もパリ市民として、パリの侍として戦争に加わる……てな話。
あ、あらすじにヒロイン・マリー@みみちゃんの名前が出てこない……。
とっても谷作品。ストーリーもテーマも。そして、キャストも。
谷せんせのお気に入りさんばっか集めてあるなーと。
歌ウマのがおりくんが「声」をテーマにしたバウに出ないことが残念だったりしたんだが、考えてみりゃわかる、彼は谷せんせのお気に入りの生徒のひとりじゃん、と。
演出家も人間、役者への好みはある。この演出家だといつも扱いがイイとか良くないとか、あるもんなー。
キムちぎヲヅキがおりホタテあんなさらさ……あたりは、谷せんせ好きなんだろうなーと思う、過去の役付から見ても。
そういう、好きに自由に構成する公演は、演出家も出演者も、やりがいがあるだろう。
原作は未読だけれど、主人公が、ナニかしているあたりが、原作のおかげかなと思う。
谷せんせの大好きな「英雄モノ」って、主人公がみんなから愛され、親友も仲間も部下もみんなみんな主人公のために笑って死んでいき、敵からは特別に憎まれて(愛と憎しみは同義語、愛の反対は無関心)、「大切な命」「命は宝」とことさら持ち上げるくせにその命を簡単に投げ出すことが萌え、という価値観で形成されている。
で、その英雄な主人公はナニもしない。
……とゆーのが、パターンなんですよ。周りが勝手にいろいろやって死んでいくけど、主人公はナニもしないの。だけど英雄なの。
あ、子守歌だけは歌うか。ここぞってときに歌って、みんなを泣かせる(笑)。主人公がするのって、それくらい。
それがお約束なのに、正名は実際に自分でも動いているので、「おおっ、原作付きってすごい!」と思った。
んで、これも谷せんせのお約束、英雄に、女は要らない。
恋愛要素は少なめ……ってゆーか、作者は、興味がない。
男が男のために命を懸けるのが尊いわけで、女のためなんて不純。女は飾り。いなくてヨシ。
谷作品ならばヒロインはお飾りだと覚悟しましょう。主人公はすべての人から愛されるので、もちろんヒロインもいつの間にか主人公にめろめろだけど、主人公は別にヒロインのことなんてなんとも思ってない。ヒロインがいることになっているので、形式上好きということにしているだけ。
それより、男たちの友情だーの、生きるの死ぬのの方に、重点と情熱を懸けている。
マリー@みみちゃんはまだ、マシな描かれ方だわ……。数々の谷作品のヒロインに比べたら。
んで、谷せんせの真の萌えは、主人公も非業の最期を遂げることこそにあるので、正名が生き残るのは残念なんだと思う。
困った萌えだよな-。
まあ、正名は生き残っちゃうけど、それまでにさんざん「大切な命」を失う仲間たちを惜しんで嘆きまくれるので、気は済んでいるのかもしれない。
谷せんせの「皆殺しこそカタルシス」だと思っているところは、好きじゃない。
死を描いて涙を誘うのはいちばん簡単な方法、ドーピングだと思っている。それで1位取っても実力じゃないよね的な。
でもたまになら受け入れられる。
谷せんせも最近はあまり、皆殺しやらなくなったし。
で、好きこそものの上手なれ、谷せんせは皆殺しが上手。
せっかく人の命を使ってドラマを盛り上げているんだから、ヘタに描かれたらつまらない。
男役をとことんかっこよく描き、観客の涙を搾り取ってくれなきゃだわ。
実際そうやって描かれた『Samourai』は、格好良かった。
ツッコミどころや間違っているところがどれだけあろうと、作者のすげー意気込み、パッションは伝わる。
「俺はコレが描きたいんだっ。うおお、これぞ美学、かっけーーっ!!」と、唾飛ばしながら興奮して表現しているのが、伝わってくる。
タカラヅカの範囲内で、タカラヅカの表現方法を採りながら、自分の萌えを本気で描いている様にドキドキします。
そのアツさに、巻き込まれます。
また、出演者が全霊をあげてソレに応えてるし。
キムくんたちの熱演で、間違いもツッコミもぶっ飛ぶし。
素直に、カッコイイ、と喝采し、その死に泣くの。
キムくんは、どこまで巧くなるんだろう。
粗のある脚本とキャラクタを、熱量と実力でもって息づかせる。
大地にしっかりと、足を付けて。
個人の力ではどうすることもできないものに立ち向かう、やるせない勇気ってのは、一見無駄なんだけど、男には必要なんだよ。
長いものに巻かれろ、保身で日和見してろって、そんな生き方だけが能じゃないんだよ。
嫌なことを嫌だという、間違ったことを間違っているという。
そんなシンプルな力、素朴な勇気が、必要なんだ。
シンプルで素朴だからこそ、難しい。
もっと複雑に考えて、身動きできなくなるのが人間だから。
全滅必至の戦いに打って出る正名たちはバカだけど、だからって、諾々と従ったら、どうなる?
陰でどれだけ不満を並べても、ちゃんと意思表示しないことには伝わらない。
どんなにちっぽけでも、無意味でも、「嫌だ」と言う人間がいた。「間違っている」と言う人間がいた。
その事実を、刻むんだ。
全滅しちゃったとしても、その事実は消えない。
無駄だとか、なにもしなかった奴らに言わせるな。
意味を決めるのは、自分自身だ。
……そんな、生き方。
バカだけどね。
好きだよ。
正名の生き方は、見ていて拳を握っちゃうんだな。よしっ、て。
キミを笑うヤツとは、友だちになりたくないよ。キミを誇りする人とこそ、語り合いたいな。
そう思える。
脚本や演出のツッコミどころとは別にね(笑)。
ところで気になるのは、彼の髪型だ(笑)。
パリに渡った正名くんは、衣服を改め髷を切る。
で、マリーに「馬子にも衣装ね!」と言われるわけなんだけど。
なんで、地髪だとあかんのん……?
せっかく変身して出てきたのに、カツラの微妙さに「……マリー、趣味悪い……?」と思っちゃったよ……。
その後、もう一段階髪型変わるので、少しマシになってたけど。何故にアンドレ@『ベルばら』……?
ふつーでいいのに。
コメント