月組2回目の『エリザベート』だらだら感想の続き。
 

 シシィVSゾフィー、午前5時の女の戦い。

 ゾフィー@あいちゃんは、わたしにはよくわからなかった。
 吊り上げて描いた眉のせいなのか、表情もあまり変わらないような。「ゾフィー」としての規定演技はわかるんだけど、それ以外の部分が伝わらず。初日のせいかな。

 彼女とガチンコ勝負するシシィ@カチャもまた、エリザベートとしての規定演技はしているんだけど、それ以上でもなくて……。
 うーん、こまったなー。

 原作無視でいっそ、あいちゃんがいつもの美女メイクで、現役美女母として、小娘嫁と対峙してくれても良かったのに。それはそれでこわい戦いになると思うんだが……。クールビューティなゾフィーって絶対怖さ倍増だよー。

 そしてシシィの歌唱で最大の見せ場である「私だけに」になるわけだが。
 シシィとしての技術的価値を左右する重要な場であるだけに、客席の集中度もすごい。

 よく歌っていたと思う。圧倒的に経験不足な若者なのに、よくやっていたかなと。特にうまいとかいうわけじゃないけど、
 つか、このプレッシャーの中で、ほんとによくやってるよ、カチャ。

 それにしてもカチャ、細い。いづるんに「お願い服を着て、二の腕や脚は出さないで」と祈るときのよーなキモチになる、細い細い二の腕だった。
 

 さて、役代わりな人々、お待ちかねの本登場だ、エルマー@もりえ。やっぱスタイルいいよね。シュテファン@みりおくんは、やっぱ美しいし。でもってジュラ@るうくんなんだ!(だから配役わかってなさすぎ)

 今にはじまったことじゃないが、何度見ても革命家たちのカーテン前は違和感ありまくる。
 いちいち相手の名前を呼んでから会話をするのって、変。
 初演ではエルマーとシュテファンの名が出るだけで、ジュラは名無しのままだった。や、役名はあるけど、会話中では呼ばれないの。日常会話で3人しかいない場合、いちいち名前呼ばないよね。んなことしなくても誰に言っているのかわかるし。
 それがいちいち名前呼んでから話すから、すごく嘘臭い。真剣に革命目指しているのか、革命って言いたいだけなのか、名前を連呼したいだけなのか。
 いらん台詞削ってほしいっす。台詞さえ多く喋らせれば役者を大切にしているって思うの、勘弁してほしいなー。や、役者さん的には台詞の行数が多いとうれしいのかもしんないけど。

 革命家トリオも、ここはまだ顔見せって感じだよなー。

 
 そして個人的にかなりおどろいた、カフェの場面。
 いやその、若者たちがまるまると噂話を歌っているのは、いいのよ。
 ツェップス@一色氏を見て「眼鏡ハァハァ」しているぐらいで、わたし的にはどうということもなかったんだか……。

 ちょっと待て。
 ここはウィーンのカフェだぞ?

 なんでシュヴァルツェンベルク@マギーがいるんだ??

 宮廷側の人間が、市民側に立って歌ってちゃ駄目でしょー?! と、マジでびびった(笑)。
 さらによく見れば、重臣ズみんないるんだもんよ。
 なんで??

 月組って人数少ないんだっけ? 重臣ズがアルバイトしなきゃいけないくらい、人がいないのか?
 そりゃ、マギーたち組の中堅どころの出番が多いのは、ファンとしてはうれしいけれど、彼らが出ている分、市民たちという「若手枠」が削られているわけで、将来的にそれっていいことなんだろうか、と老婆心。

 
 でもって、フランツ@きりやんの、「開けておくれ」場面。

 萌え。

 うおおお、きりやさんステキ~~。
 ヒゲのない若いころよりも、壮年以降が絶対イイのよこの人!!
 ガウン姿で妻の寝室訪ねちゃってさ。鍵掛けられててショック受けてさ。そんでもって扉の前で泣き言並べてさ……!
 青年時代の謁見の場とか舞踏会でのシシィへの態度とかさ、やさしいとか誠実とか母の言いなりで可哀想とか、そーゆーものだけぢゃないしたたかさ、計算高さ、総じて「大人」である印象のある人だっただけに。
 その強い男が泣き言並べて、でもところどころプライドの高さみたいなものが垣間見えて、なんかいちいち萌えなんですけど?!

 なんかフランツが「都合の良すぎない、リアルな男」に思える。

 本当は寛容でやさしい人なのに、使命に忠実なため冷酷な判断も下さなければならない。妻と母の間で板挟み、妻を愛しているから妻を取る。立場をわきまえるゆえに不器用にしか生きられない。
 という「フランツ」としての記号は、ヒロインであり彼の妻である「エリザベート」から見て「都合のいい男」だ。つまりは、タカラヅカ観客である女性の目からしても。
 2番手級のスターが演じる、「女性から見てステキな男性」だ。
 エリザベートとはすれ違っちゃっているけど、フランツって十分いい男じゃん、トートといいフランツといい、いい男ふたりに愛されてエリザベートってばゼイタクもん。……と思わせなければ、女性向け作品は成り立たないから。
 だからこそ、フランツはエリザベートから見て「都合のいい男」である必要があった。

 が、きりやんのフランツはそこまで都合よく見えない。
 彼はリアルにひとりの男である、気がする。

 扉の前でエリザベートに拒否られたときの傷つき方が、ただ「拒絶されて悲しい」とか「ショックだ」とかだけではなく、今一瞬ムカついただろ? という感じがして(笑)。
 や、それでふつーだって。
 仕事でくたくたになって帰って来たのに、なに不自由ない額の給料預かって専業主婦してる妻が、寝室に鍵掛けてんですよ? 男ならムカつきますって。
 でも根がやさしい人で、妻にベタ惚れだから譲歩して「開けておくれ」と言ってみる。やさしいこと、妻を愛していることと、「閉め出しされたことがわかった瞬間ムカついた」こととは別ですよ。同時に存在して当然ですよ。
 また、プライドが傷ついた、のもあるだろうな。仕事でくたくたになって帰って来たのに、なに不自由ない額の……以下略。

 そーゆー、人間としての感情の生理現象がリアルに感じられて、萌えだ、きりやさんのフランツ。

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