どんどん暴走するオサ様の、公演後半のお楽しみはVSモーリスだった。

 『アデュー・マルセイユ』ムラ公演ね。東宝がどうなるのかはわかんない。

 ジェラール@オサはICPOの捜査官。密輸犯のふりをして潜入捜査中。悪党たちとは仲良くしなければならない……はずなのに。
 モーリス@壮とは、大ゲンカ中。
 ヲイヲイ、ハズされたらどーするんだよ、実際モーリスは「あいつを仲間からハズせ!」と騒いでるじゃん(おじさんたちには相手にされていないが)。

 壮くんは不思議なほどオサ様と相性がいい。
 雪にいたときは演技のアレさ、空気の読めなさで浮きまくっていたのに、花ではすっかり馴染んでいる。日替わりオサ様とたのしそーに絡んでいる。
 『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』のときもそうだったが、オサ様は壮くん相手だといろいろ仕掛けやすいのかもしれない。他の誰と絡むときよりアドリブ度が高い。
 シモン@まとぶに対する、「その場限りのお遊び」としてなにかするんではなく、「物語の中での変化」だから、ジェラールとしてモーリスとして楽しめるのも愉快。
 ええそして、「お遊び」でしかオサ様と絡めないまとぶさんがどんどんコワレていく(酔っぱらいやりすぎ。あそこまでグタグダにせんでも……)のが、愛しかったりもする(笑)。

 まあなんにせよ、ジェラールVSモーリス。

 ジェラールさんは、なんであんなにモーリスくんを嫌いですか?

 最初に石鹸工場で出会ったときから、反感ゆんゆん。
 モーリスは「好青年」の皮をかぶっているので好意的なんだが、ジェラールは敵意むき出し。モーリスの活躍ぶりを「大忙しだな」と皮肉にしか聞こえない声で言い捨てたり。
 思い出の神殿でバザーをやる、つーんで一瞬盛り上がっても、その場所を使えるように動いたのがモーリスだとわかると顔をこわばらせる。(モーリスも、ここですごーく得意そうにするんだが・笑)

 マリアンヌにも興味なさそうだから、「かわいいあの子に近づくキザな奴!」と反感を持つわけでもないだろうに。
 ただたんに、モーリス単体で気に入らないらしい。

 ……そんな、理由もなく嫌わなくても……(笑)。
 まあ、若くてハンサムで地位も名誉も金もあって善人ぶっていて、ムカつく要素はいくらでもあるが、そこで反感あからさまなのはジェラールというキャラにそぐわない気がする。
 けど、脚本関係なし、寿美礼サマ爆走前提の花組公演だから、彼が一貫してさえいれば問題なし。

 ええ、ジェラール的には、一貫している。
 モーリスが、キライ。彼のやることなすことムカつく。

 興味なくスルーしていたはずの初日付近とはちがい、出会いのときから「キライ」オーラ放出。
 ジェラールがどれだけモーリスを意識し、彼の存在に反応しているか。……ええっと、ヒロインの立場は?と、思う日も何回もあった……。

 ホテル・ネプチューンの悪党ズたちの会合に、モーリスが現れたときの憮然とした面持ち。リシャールやペランとは反応がチガウ。
 モーリスはこのとき得意満面だからなー。腹にイロイロ溜め込んでいるジェラールの顔色を読むこともなく、隣に坐ってフレンドリーな態度を取ってみたり。

 モーリスはジェラールを嫌っていないんだよね、このときまでは。
 ルイ・マレーを見つけ、仲間に引き込むようお膳立てをしたのは僕の手柄♪と思っているせいか。
 年配者しかいないチームで、同年代の仲間参入がうれしいのか。
 ジェラールが一方的にモーリスを嫌っている……のはジェラールという色を付けにくい男に、「人間らしさ」を感じさせてくれてなんだかうれしい。
 
 そしてもっとも愉快なことになっていた、バザー場面。

 八百長大作戦で「僕が相手だ」といそいそとジャケットを脱ぐモーリス。「かかってこい」ポーズのうさんくささも際立つモーリス。
 ダニエル@さおたと対峙するも、あっけなくジェラールにダニエルを倒されてしまい、見せ場を失ってしまうモーリス。

 ここのふたりの反目の仕方は、日替わりですっげーおもしろかった。

 マリアンヌに「ありがとう」と握手をさせられたあと握力比べになったり(もちろんモーリスが負ける)、手を引き合ってにらみ合ったり、振り払いたいモーリスの手をジェラールが離さなかったり、モーリスが叩くような勢いで振り払ったり、もーいろいろありすぎて。

「作戦だったんだ!」
「もっとマシな手を考えろ」
 このやりとりも、怒鳴り合いだったり、ブリザード吹く冷ややかさだったり、手振り付き(それは置いといて、みたいな)だったり、顔近すぎだったり、激昂しすぎたジェラールが台詞変えてたり、毎回違っておもしろすぎ。

 そのあとの台詞のないところも、ずーっとケンカしていて。
 石鹸輸出の話になると、「先生、僕宿題やりました」「まあ、いい子ね」「先生、僕は宿題の他に予習もしましたっ」って、先生の歓心をかいたくて張り合っている小学生みたいに、これでもか、と相手を出し抜くためだけの会話を続けて。

 楽が近づく頃になると、オサファン的見どころのひとつとして定着していたんで、シモンやジャンヌたちが物語を進めているのに、観客は無言でケンカしているオサと壮くんを見て爆笑していたりと、ちょっといびつなことになっていた。
 初見の人はなんでみんなが笑ってるのか、わかんなかったろうなあ。ふつーに台詞を言っている人を見ていたら、ケンカしてるのなんかわかんないし。つか、ケンカしているのがおかしいって、見てもわかんないだろうし。

 とにかくジェラール、モーリスに反応しすぎ。
 ジェラール、君さぁ、マリアンヌのことほんとはどーでもいいんだろ。彼女の話はちっとも聞いてないわけだし。モーリスと張り合うためだけに、彼女にちょっかい出してるよね……?

 いっちばんVSモーリスでウケたのは、いつの回だったかな。
 バザー場面、神殿でマリアンヌとふたりきりになったときのジェラールさん。
 柱にもたれたり、客席に背中を向けたりしながらマリアンヌの話を聞いているところで。

 マリアンヌの台詞の中で、わたし的にいちばんツボっているステキ台詞。
「彼の好意は重荷なの」

 うわっ、言い切ったよこの女!! という、「そりゃそーだろーけど、ソレを言っちゃあオシマイだよな」というステキ台詞。

 この台詞を聴いた途端、ジェラールが、吹き出した。

 えええ。
 ジェラールさん今ぶはって笑った? 笑ったよね? 吹き出したよね?!

 それまで背を向けていたジェラールが、満面の笑みで振り返り、突然マリアンヌに対し口説きモードになる。

 そのあからさまさに、爆笑しそーになった。
 つか、吹き出したジェラールさんに、吹き出したよー。そこで笑うかオマエ。
「重荷って言われてやんの〜〜(笑)」……って、そーゆーこと?

 もともとジェラールは「重荷なの」と言われるまで黙って話を聞いていて、その台詞を機に口説きモードにチェンジすることになってるんだけど(わかりやすい男だなヲイ)、あまりにうれしそうだとマリアンヌを好きだというより、「モーリスの女を取ってやれ」という気持ちに見えるぞっと(笑)。

 男の意地の張り合い、男の子のケンカ的で、かわいいから大好きなんだけどな。
 ついでにゆーと、モーリスへの意地悪でマリアンヌを口説く、ジェラールがそーゆーまちがった人であっても、わたし的にはぜんぜんOKですから。だって最初から仕事を忘れてあんなに「キライだっ」を全開にしてるんだもん。一貫してるんだもん。
 たんに寿美礼サマが暴走しているだけで深い意味はないにしても、見ていてすげーたのしい。萌える(笑)。

 強い感情は、それだけで周囲を動かすから。
 コワレていようとまちがっていようと、モーリスを嫌いなジェラールさんは好きだ(笑)。


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