その日、群青の空から白い翼が墜ちた。

 サンパウロの豪邸で、寿美礼は夫の自家用機が墜落したことを知った。この瞬間から彼女は、「世界一裕福な未亡人」となった……。

 日本のとある南の島。飛行機でしか本土と行き来できない緑あふれる孤島に、富豪専用の会員制ホテルがあった。セレブたちが休暇を過ごす優雅な隠れ島で、青い空を見つめ絶望を胸に宿す孤独な青年がいた。ホテル従業員(ガテン系)の真飛だ。
 兄が殺人を犯し逃亡中……「殺人犯の弟」である真飛の人生は暗い。非難と差別、貧乏……人の目から逃げるように小さな島で暮らす彼には、空に対する無性の憧れがあった。俺に翼があれば……。
 そんな彼の前に、白い翼が舞い降りた。ホテルの送迎機から島に降り立ったのは、金色の鳥かごを持った、黒衣の未亡人だった。黒いベール、黒いドレス、空っぽの鳥かご……神秘的な美貌と孤独の影……。

 翼を失った女と男、寿美礼と真飛はこうして出会った。

 己れの人生に絶望している真飛は、「世界一裕福な未亡人」寿美礼に謂われのない反感を持つ。真飛には彩音という恋人があり、ふたりしてこの島を出るための資金を必要としていた。「あの未亡人を騙して、金を取ろう」……300億ドルもの遺産を得た女だ、真飛と彩音が夢を叶えるために多少金を騙し取ったとしても大したことはないだろう。
 真飛は肉体労働で鍛えたセクスィなカラダとワイルド系の美貌を利用して、寿美礼に恋を仕掛ける。心に傷を負った富豪未亡人と、地位も金もない男の南の島での身分違いの恋……ムード満点、ロマンスの王道。

 翼が欲しい。
 ないものを求めてあがく男と、空っぽの鳥かごを持った女。
「まるでイカロスね」
 繰り返される神話と、現実の人間たち。

 真飛は気付いていない。彼女が金持ちだから、彼女の持つ金が欲しいから、というのは言い訳に過ぎない。彼女に近づくための、恋を語るための。
 はじめて島の空港で出会ったときから、真飛は寿美礼に惹かれていた。魅せられていた。
 彼女の持つ、孤独と闇に、共鳴していた。
 恋を仕掛けて、金を巻き上げる……そのための愛の言葉、そのためのくちづけ。言い訳を繰り返しながら、真飛は寿美礼に溺れていく。

 ホテル従業員・彩音もまた、自由という名の翼を欲していた。飲んだくれの父親悠真にはした金で売られた彼女は、叔母であるホテルオーナー夏美の養女となるしかなかった。
 夏美はホテルを守る後継者を必要としており、養女にした彩音を金持ち男と政略結婚させるつもりなのだ。
 壮は大金持ちの三代目社長。白いスーツに白のエナメル靴でキメた、キザで嫌味な二枚目の典型。金と権力がすべて、それを持たないモノは虫けらだとナチュラルに信じ込んでいるステキな価値観の持ち主。しかもバツイチで子持ち。
 こんなアホ男と結婚なんてとんでもない。夏美の手を逃れ、島を出るのだ。そのためには手段を選ぶ余地などない。彩音を妹のようにかわいがってくれる寿美礼を、真飛とふたりして利用するのは、仕方ないことなのだ……。

 若く美しい彩音との結婚に魅力がないわけでもなかったが、そこに愛などあろうはずがない。狡猾な色男・壮は、寿美礼が「世界一裕福な未亡人」だと知るなりターゲットを彼女に替えた。セクスィでハンサムで金持ちの自分になびかない女などこの世にいないと本気で信じ込んでいる。
 真飛が寿美礼に近づいているようだが、びんぼーな使用人などまともな人間が相手にするわけはないと心から思っているので、彼の目に映る真飛は邪魔なハエでしかない。
「真飛の兄は殺人犯だそうですよ。人殺しの家族は人殺しと同じ、なにをするかわからない。こわいですねえ。でも大丈夫ですよ、寿美礼さんは私がお守りしますからね、はっはっはっ」
 なーんてことを、白い歯をキラキラさせつつ人前で言えちゃったりするステキ人格。

 そこへ寿美礼の弟愛音が転がり込んできた。わがまま放題、非常識で暴力的な愛音は彩音をレイプしそうになったり真飛と対立したり忙しい。
 本能と衝動だけで生きる彼は、なりゆきで壮の一人娘すみ花を抱いてしまう。半分レイプだったよーな気もするが、一夜明けるとすみ花はめろめろ、愛音の彼女気取りなのでこれはこれで良かったのか。
 何事にもいい加減なトラブルメーカーの愛音だが、実の姉・寿美礼に対する愛情と執着、独占欲は、異常なほどだった。

 愛憎渦巻く人間関係の中心にいる寿美礼は、実はいくもの顔を持つ女だった。
 哀れな未亡人、気品ある穏やかな美女というのは、その一面に過ぎない。

 寿美礼は上流階級の出ではなく、その美貌を武器に底辺から成り上がってきた女だった。翼を求め、あがいてきた人間だった。
 大富豪だった夫に見初められたのも彼女が仕掛けたものであり、その夫の突然の死に対しても、彼女に殺人の容疑が掛けられていた。

 ホテル宿泊客で自称小説家一花(眼鏡着用)は「職業的好奇心」で寿美礼のことをいろいろ嗅ぎ回り、知り得た情報を真飛に報告してくる。

 寿美礼はサンパウロでヴァンピーロ(吸血コウモリ)と呼ばれた女だった。

 夫殺しの容疑を掛けられた女と、殺人者の兄を持つ男。同じ痛みは寿美礼と真飛を強く結びつける。
「わたしは夫を愛していた。殺してなんかいない」
 そう訴える寿美礼の言葉を、真飛は信じたが……。

 寿美礼の亡夫の弁護士未涼がサンパウロからやってきた。寿美礼が夫殺しの犯人だと疑う遺族から、調査を依頼されているのだ。
 未涼はある「証拠」を持っていた。寿美礼の夫が、寿美礼との離婚を考え、書類を作成していたのだ。そのことを知った寿美礼が離婚される前に夫を殺した……そう決定づけることが出来る。
 その証拠書類を遺族に渡すのが未涼の仕事のはずだったが、彼は寿美礼に取引を要求してきた。彼女自身が欲しいと。

 「世界一裕福な未亡人」寿美礼を得ることができた男は、「世界一裕福な人間」になる。

 亡き夫の愛した島とホテルを守るため、ホテルオーナーの夏美も寿美礼を利用すべく策をめぐらせはじめていた。ホテルは経営難で、このままでは悪徳投資家梨花にすべてを奪われてしまう。
 夏美はその昔、梨花の婚約者だった高翔を奪って結婚し、ふたりの愛の巣としてこの島で暮らしてきた。梨花はそのことを恨み抜き、高翔が死んだあとになっても夏美への復讐心だけで動いている。

 梨花は夏美を破滅させるためだけに壮と組み、壮は金目当ての悠真を手下にする。
 彩音は叔母と父の間で悩み、寿美礼に奪われた真飛を取り戻したくて悩む。

 寿美礼に愛をささやく壮も、未涼も、手段を選ばない。彼女が夫殺しのヴァンピーロであっても関係ない。欲しいのは美しく蠱惑的な彼女自身、そして彼女が持つ莫大な財産。
 寿美礼が一瞬でも隙を見せれば食らいついてくる。脅迫、取引、要求。寿美礼もまた、自身の肉体と財産をエサに男たちをあやつる。

 寿美礼を愛し、守りたいと切望する真飛も、もとは同じ穴の狢だ。それでもたしかに愛し合っていた……と、真飛は思ったのに、寿美礼は身を翻す。真飛を利用し、陥れる。

「太陽に近づきすぎたイカロスは翼を失い、地に墜ちるのよ」

 寿美礼の真意は、そして愛はどこにあるのか。

 翼を求めて傷つけ合う、地上を這いずる者たちの愛と憎しみの物語。


          ☆

 とまあ、罪なく意味なく妄想配役。
 「Bamboleo」つながりで、寿美礼サマと彼の花組で、『金色の翼』。
 2007年7月〜9月まで、フジテレビ系列昼の帯ドラマ枠で放映されていた昼メロ。主題歌が「Bamboleo」。
 『ラブ・シンフォニー』でまっつやオサ様が歌っているアレです。
 『金色の翼』で毎日聴いていただけに、初日にまっつが同じ曲を歌ってくれてびっくりした(笑)。

 このドラマの素晴らしいところは、主要男キャラ全員と、ヒロインの濡れ場があることですかねっ。
 寿美礼サマがヒロインだと、真飛、壮、みわっち、まっつまで全員ラヴシーン有りです、はい。

 孤独、狂気、倦怠と情熱をひそませる美貌の未亡人、ヴァンピーロと呼ばれる魔性の女を寿美礼サマで見たい、つーのと、愛欲に濡れるワイルドMまとぶが心から見たいのもあるが、安っぽい金持ち色男(属性ドS)@壮くんが、実はいちばん見たかったりする(笑)。みわっちを縛り上げてハァハァ鞭打つ壮くん、なんてすごいですよね。反対に、壮くんを縛り上げて鞭打つ寿美礼サマ、つーのもすごい絵面ですが。

 あ、主題歌はまっつでお願いします。はい。


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