『Young Bloods!! 』を全組観て思ったこと。

 出演者がみんな、ほんとーに一生懸命だ。
 うまいとかヘタだとか、きれーだとかそーじゃないとか、そーゆー次元ではなく、ただもーひたすら一生懸命だ。主演はもとより、最下級生の脇役に至るまで、みんなみんな等しく一生懸命。
 一生懸命な若者たちを見るのは心地いい。努力する姿は美しい。
 どの子もみんな一生懸命、真正面から小細工ナシに不器用なまでに一生懸命。
 それが素晴らしいことは前提として。

 努力とは、別の話。

 5組5公演の、それぞれ主演者たちの、立ち位置のちがいが興味深い。

 星組のれおんは、ある意味ストイックだった。
 自分のやるべきことを知り、黙々と仕事をこなしている印象。
 その「やるべきこと」が、「やらなければならないこと」なのか「やりたいこと」なのかは、わたしにはわからなかった。
 まあ、「やるべきこと」をやる人は好きなので(てか社会人の基本?)それはいいんだけど。

 月組のまさきは、アグレッシヴだった。
 敷かれたレールがどうあれ、自分の力で真ん中を目指す力。野心と情熱。
 「やりたいこと」「欲しいモノ」を明確に、なりふりかまわず手を伸ばしている印象。
 「やりたいこと」のために、「やらなくてもいいこと」までがむしゃらにやってしまう貪欲さ。

 花組のそのかと宙組のいりすは、現状維持が自己目標?
 やりたいとかやらなくてはならないとか、それ以前の状態。ただがむしゃらに、目の前にあることをこなしている。壁を越えることだけに夢中で、その壁が何故そこにあるのか、何故越えなければならないのか、越えた先になにがあり、どうしたいのか、なにも考えていない印象。
 目の前より未来が見えていない?

 雪組のかなめは、さらに謎。
 れおんほど黙々と仕事をしている風でもなく、まさきのようにやりたくてやっている風でもなく、そのかやいりすほどいっぱいいっぱいになっている風もなく。

 エリート輩出を目的とした特別進学クラスっちゅーのがあったとする。れおん、まさき、そのか、いりす、かなめはそこの同級生。
 医者の家に生まれた跡取り息子れおんは、よい医者になるのは義務だからと黙々と勉強をしている。もともとの素質に加え、幼い頃から英才教育を受けてきたので、とりあえずの実力はある。ただ義務感の方が先に立って、彼自身がほんとーに医者になりたいのか、どんな医者になりたいのかはよくわからない。
 ふつーの家に生まれたまさきは、「絶対ビッグになってやる! 世の中金と名誉だ!」となりふりかまわず猛勉強中。英才教育なんか受けてないけど、そんなの関係ない、要は結果を出せばいいんだろ? 奨学金を得て特別進学クラスに編入、鼻息荒らし。
 一般クラスにいたのに、なんかこの間受けた試験がみょーによかったらしいそのかといりす。今回から突然特進クラスに編入、えええ、俺たちここにいていいの? とりあえずがんばんなきゃ! キョドりつつも鋭意努力中。共に体育会系男子、そのか@柔道部、いりす@ラグビー部。
 宿題はするけど、予習復習はしないかなめ。それでも及第点はあるし、推薦入学も決まってるし推薦落ちても他にいくらでも生きる方法はあるし、がつがつしなくてもいっか。ずば抜けて美形でサワヤカ、ふつーにカノジョ有り。
 ……てゆー感じに思えた。

 キャラ立ってておもしろいなヲイ。どの乙女ゲーだ(笑)。

 彼らがみな一生懸命で努力していることは前提として、そんな印象を持ったわけね。

 「真ん中に立つ」エクササイズとしてのワークショップ。
 だがこの「真ん中に立つ」意味が、ひとりずつによってちがっていたからさ。
 それがおもしろくもあり、歯がゆくもあった。

 れおんは、ワークショップなんかしている立場の子じゃない。本公演でアンドレやってるよーな大スター様が、なんで今さらひよっこたちと同じ舞台に立つのよ。高校球児が小学生野球チームを相手にホームラン打って、だからなんだというんだ。
 伸び悩みが原因で、喝入れのために監督から小学生チームへ放り込まれた高校生ってとこか?
 どれだけ足踏みしていても、彼の目の前にはもうすでに途中下車できないレールが敷かれている。そこをあざやかに走っていくしかないんだ。
 ゴールが見えた窒息感に背を押されるように、立場に相応しい成果を求められ、黙々と階段を上る姿は、彼ののびやかな芸風を微妙に歪めているよーな気もする。……いや、翳りがあった方が今後いい男になるかもしんねーから、これでいいのかな?
 ワークショップに出演している場合ではないのに、出演するしかなかった歪みを、彼がどう受け止めて成長していくのか。
 良くも悪くも分を知る男だなー。

 まさきにとって、このワークショップは、「輝かしいオレ様の歴史のはじまり」なんだろうな(笑)。今までくすぶっていたことこそが、まちがい。
 新公主演より先に、バウホールで主演する。これを成功させて、若手路線に名乗りを上げる。
 栄光まで駆け上がる(笑)、その心に描いたサクセスロードのスタート地点。

 そのかといりすは、敗者復活メンバー。新公主演はできなかったけれど、まさかのバウ主演。
 でも「よーし、これを機に路線狙うぜ!」てな意気込みは感じられず、ただ確実にこの公演を成功させることのみに集中した模様。
 主演経験によって、舞台人としてのスキルが上がった。それがいちばんの財産です、てか?

 かなめは謎。どーゆーつもりで真ん中にいたのか、よくわかんにゃい。
 昔のたかちゃんを、さらに背骨の通ってない幼い感じにしたみたいな子だ。よく言えば野心がない? いや、舞台人にとってそれは、よい意味にはならないか。

 
 通常バウ主演をする人たちは「路線」と言われる人たちで、将来トップスターになるかもしれない立場にいる。
 だから、みんな出来はどうあれ立場はどうあれ、心の「立ち位置」は同じよーなもんなんだよな。
 ワークショップと銘打ったって、ソレで主演をするのは路線だけだもんよ。
 でも今回の『Young Bloods!! 』は、従来の路線以外の顔ぶれを主演とした。
 主役だから「真ん中に立つ」ことになった彼らは、実際真ん中に立ちながらも、そこにいる意味がぜんぜんチガウ。
 おもしれー。

 おもしろかったよ、『Young Bloods!! 』。
 ほんとうに。


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