わたし的に「疲れる」構成だった『ファントム』新人公演

 問題の出演者たちは。

 えー、まずわたし、プログラムのりせの写真を見て、おどろきました。

 誰コレ。……(間)……えっ、りせ?! まじっすか!!

 りせくん。ナゼにそんなに、太ってしまわれたの? 美貌だけがキミの武器だったんぢゃあ……?
 フェイスラインが別人。
 本公演も観ているけど、従者はわたしいつも決まった人を見ちゃってるからなあ。初日に位置確認したのみで、あとはちゃんと見ていたとは言えないもんなあ。
 変わり果てた姿に、新公で改めて驚いたよ。

 ヴィジュアルはともかく。

 実際に公演を観て、りせくんが歌をがんばったことは、よーっくわかった。練習したんだねえ。
 その昔、マリコさんがトートをやっているときものごっつー太ってたが、「さきちゃんは歌を歌うために、先生の指導でわざと太ったのよ」とファンの人が言っていたから、りせも同じなのかもしれない。
 スマートなままのりせでは、歌えなかったのかな。あのフェイスラインが、声を出すために必要なのかも。

 とゆー、りせエリック。歌はいいんだ。思っていたよりずっと歌えている。それはよかったんだけど……えーと。

 りせ、演技してた?(笑)

 わたしは「りせエリックを見てみたい」と思っていたひとりだ。
 だがそれは、宙『ファントム』の話だ。花組公演の幕が上がる前の話だ。

 まだまともに本公演語りしてないのでアレだが。
 初演の宙『ファントム』と今回の花『ファントム』では、エリックのキャラクタが、別物だ。

 わたしが「りせで見たい」と思ったのは、宙エリック。
 ゆがみと毒を持った無邪気であわれな殺人鬼だ。
 花の、いたいけなお子ちゃまエリックが見たかったわけぢゃないっ!!(笑)

 もちろん、明確な演出意図があって、花エリはお子ちゃまなのだろう。実際脚本も変わっている。
 大人の男もゆがんだ怪人も演じられる役者があえて「いたいけな子ども」を演じる深さもわかる。
 でも、「見た目がガキ」なのも事実。
 ……その「見た目」を、まんま写されても、こまるよ。

 「大人」が「ガキ」だから意味があるのであって、「大人を演じるスキルがないから、まんま子どもです」とやられても、反応に困る。

 えーと。
 りせエリックって、高校生くらいかな? 外見も中身も。うまくいっているときはおとなしいけど、キレると突然怒鳴ったりする男の子。怒鳴るだけで、暴力はふるわない。あ、テーブルの上のモノを落としたりとか、モノにあたることはする。へなちょこだけど、へなちょこだと思われるとムカつくので、学生鞄にはいつもナイフを入れている。使ったことはない。中学のときはいじめられっこだったので、遠くの高校に進学した。今でも家の近所でいじめっこを見かけると黙って遠回りをする。趣味はインターネット。
 ……てゆー感じ?(首傾げ) や、深い意味はないっす。

 歌はよくなっていたけど、それ以外の部分に疑問符がとびかってしまった。
 どういう役作りだったんだろう。わたしにはそれがわからなかった。

 宙の「怪人」エリックが本役だったら、りせも本気でかっこつけて、毒全開で演じてくれたのかなぁ、と、ソレがちと残念だ。
 いや、オサを手本にしてただのヘタレくんにしちゃうくらいだから、たかこが手本だとしても意味はなかったかもしれないが。

 そこにいるのがエリックであるのか、エリックだとしてなにを考え、なにがしたいのかよくわかんなかったんだけど……GOGOりせ! 負けるなりせ!!

 途方に暮れたよーな立ち姿がかわいいぞ(笑)。

 
 でもってヒロイン・クリスティーヌ@きほ。

 きほちゃんのいいところは、いつも戦闘意欲に満ちあふれているところ。

 プライド高いんだろーな、気ィ強いんだろうな、と見ていて思えるところ。
 舞台人として、それらは美点だと思っているよ。

 ただ。

 戦闘意欲満々のクリスティーヌって、役柄的にどうなの(笑)。

 いや、やる気にあふれていてすばらしいっすよ。
 もー、笑顔全開でねー。その笑顔が、「クリスティーヌの笑顔はこうよ、こうっ!!」という気合いのもとにはりついたよーな笑顔でねー(笑)。

 う・わー。
 すごいことになってんなあ。
 と、たのしく注目してました。

 実際、プレッシャーも意気込みもすごかったろうと思うよ。
 本役の彩音ちゃんが歌の実力不問、雰囲気重視のクリスと言われているだけに、本来の歌姫クリスとして実力を発揮することを前提とされていたもんな。
 引くに引けない状況というか。

 見ている側の期待が大きすぎたせいもあるのだろうけれど、最初歌声が安定しないのがとても気になった。
 きほちゃんならもっと歌えるよね? と、思ってしまうから。

 そーしていつでもにこにこ、はりついたよーな笑顔。

 えーっと。
 そーゆー役作りなんだろうか。

 わたしには、クリスティーヌがアタマのゆるい女の子に見えた。

 知能の発達がひととチガウもんだから、なにを言われてもわからない。世界には善意しかないと信じて、いつもにこにこしている。バカにされても笑われても、だまされて毒を飲まされても、腹をたてることすらない。なにもわかっていない。ただ、笑い続ける。
 エリックをこわがらないのも、そのため。
 キャリエールが「危険だ」と言う意味も、まったくわかってない。
 「顔を見せて」とエリックに歌いかけるのも、なにもわかっていないから。そして、顔を見て逃げ出すのも、なにもわかっていないから。
 カラダは大人、でも知能は幼児程度。

 そーゆー役作りも、アリだと思う。
 ドラマとかに出てくるそういうハンデを持って生きる人たちは大抵「天使」として描かれるし。
 クリスティーヌが「天使のように純粋な心を持った少女」だなんて嘘くさい、ほんとーはたんに幼児程度の知能しか持っていないから、計算だとか他人の悪意だとかがわからなかっただけよ。……という解釈もリアリティがある。

 リアリティはあるけど……わたしは、ちょっと引いた(笑)。
 こわいよ、このクリスティーヌ……。
 あの、心の見えない、いつも同じはりついたよーな「天使の笑顔」が……。

 きほちゃん、やっぱなんか、やりすぎてないか……? 「天使」だとか「母性」だとか「慈愛」だとかを表現しようとがんばりすぎて、チガウものに到達しちゃった?
 気合いが入ってるのも見えるんだけど……その力こぶも含め、ありえない「笑顔」がこわいよー。『スカウト』の、気が触れていたときのサーシャと同じ笑顔っつーのは、やばいだろクリス……。

 このちょっとホラーなクリスティーヌと、ヘタレわがままガキのエリックは、似合いといえば似合いだったが、ふたりでいても互いに愛がまったく見えないあたり、どーしたもんかとうろたえた。

 おもしろいなあ、新公。しみじみ。


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