壮一帆が、ステキに大爆笑。

 全国ツアー『ベルサイユのばら−オスカル編−』さいたま市文化センター観劇は、わたしのヅカファン人生の中でも記録に残るタイトスケジュールだった。
 行きバス10時間、東京埼玉間の電車往復1時間半、観劇3時間弱、帰りバス9時間。
 移動していない、動かない地面にいたのは何時間だ? ほんとーに観劇以外なにもせずにとんぼ返り。だって翌8日が星組ムラ公演チケット発売日だったんだもの。
 わたしのよーな一般人が、トップのサヨナラショーを観られるとしたら、梅田のチケット抽選で当てるぐらいしか方法がないもんよ。
 一縷の望みを掛けての体力勝負。結果は。

 白紙を引きました。

 …………。

 ……わーんわーんわーん。

 
 盛大にヘコみつつも、疲れがピークを超していたので、並びに集まった仲間たち相手に、とても陽気にソウドレがどれほどステキかを、語りまくっていたよーな気がする。

 はい。
 みんなのアイドル、壮一帆くんのことですよっ。
 ドリーズ総見のあった『お笑いの果てに』で、わたしたちの腹をよじりきってくれたステキスタァ壮くん。彼のオモシロ個性にわたしたちは釘付けでした。
 その他にも『霧のミラノ』の素敵な浮きっぷりとか、『DAYTIME HUSTLER』のトンデモ熱演とかで、いつもいつもわたしたちの話題をさらうニクいヤツ。リーマンヘアもイカス、オサレさん♪
 美貌の無駄遣いという点では、薄くてスベりつづけるかっしーと並ぶ、こまったちゃん壮一帆。
 わたしと友人たちの間でそーゆーポジションにいる壮くんなんですが。

 全ツ『ベルばら』の、壮一帆は、ものすごーく良かったのだ。

 びっくりだ。
 壮くんの演技がよかったことなんか、はぢめてですよお客さん!(失礼な)

 なにがイイってあーた。

 植田歌舞伎、ハマりまくり!!

 そうか、そうだったのか。
 植田芝居向きの人だったんだ。だから、他の芝居はあんなに浮いて浮いてキツいことになってたんだ。
 ひとりだけ演技ヘタでそのくせ爆走しているよーに見えたのは、ひとりで歌舞伎的芝居をしていたせいだったんだ。

 同じ植田歌舞伎でも、脇役ぢゃだめなのね。脇だと結局空気読めないハンパな芝居になるだけだから。
 主役クラスで、ストーリーと関係ないファンファーレやライトをあびて演じる、「真ん中こその、さらに大仰な芝居」をやってこそ映える人だったんだ。

 もー、プロローグから、ツボ入りまくり。

 ソウドレが白いマントで登場するなりあたしゃ、爆笑をこらえるのに必死。
 すげえよ壮一帆! きらきらしてる! 輝いてるよー!
 壮くんの素晴らしいところって、全身全霊をあげて、「自分スキ!」と叫んでいるところだ。
 いいよなあ、あの自信、前向きさ。オサ様のナルシスぶりとはまたチガウ、前向きで力強い陶酔ぶりがツボ。
 アンドレ役がうれしーんだなあ。よろこびに満ちあふれていて、微笑ましい。

 でも君ソレ、アンドレぢゃないから(笑)。ただの壮一帆だから。
 そのカンチガイぶりがツボに入っちゃって、プロローグからもー大変。

 そのあと、芝居本編に突入すると、壮一帆はさらにパワーアップする。

 ……今までも、壮くんの芝居力の低さというか、ぶっちゃけ大根ぶりには瞠目していたんだけど。

 今回ほどそれが際立っていたことはない。

 ソウドレひとり、盛大に浮きまくり!!

 おいおいおい、おもしろすぎるよキミ、空気読めよ〜〜!!(笑)

 そう。
 相手役が水くんだったことが、破壊力を増したと思う。

 水くんの演技は、かなりナチュラルなのだ。

 主役がナチュラルだから、とーぜん他の人たちもそれに準じた芝居をしている。
 なのに。

 壮くんひとり、植田歌舞伎ぶっちぎり!!

 なんなのコレ! ここまで合ってない芝居する主役とそのダーリンってアリ?!

 2幕になると、抱腹絶倒。
 毒殺シーンですよ、毒殺シーン!
 壮一帆の真骨頂! コレを見ずして壮一帆を語るなかれ、つーくらいすげえ。

「おれはおまえを、ころそうとしたのだあぁぁああっっっ」
 どっかーーん!!

 少年マンガの効果とかを背景に飛び散らせたいですな。「どーんっ!」とか「ばばーんっ」とか。あくまでもひらがなでヨロシク。

 空気読め。たのむから、空気読んでくれ。

 相手役も芝居もなにも見ず感じず、自分の芝居だけを爆走する壮一帆に、ハートを撃ち抜かれました。
 たすけて。
 声殺して笑うのにも限界つーものがね……し、しぬかとおもった……。

 
 ええ。
 すばらしいです、ソウドレ。

 全ツ『ベルばら』を観た人たちが、口を揃えて言うのですよ。

「壮くんが、おもしろかった」

 おもしろいて。
 おもしろいでいいのか、壮一帆?!(笑)

 いいのだ。

 実際、心奮えるくらい、おもしろかったのだから。

「いや、この場合、正しいのは壮くんですよ。他の人は誰も植田歌舞伎やってないから。歌舞伎で正しく歌舞伎を演じていたのは壮くんひとり、正しいのは壮くんひとりです」

 という意見も正しい。
 『ベルばら』は植田歌舞伎。もう死滅してくれもかまわない、古い古い文化。でもま、とりあえず文化は継承する人が必要だ。植田歌舞伎を正しく演じられる人が必要だ。
 壮くんはただひとり、正しく歌舞伎を貫いたのだから、とやかく言われる筋合いはない。

 でもなあ。
 ただひとり、つーのが問題なんだよなあ。

 べつに壮くん、「植田歌舞伎を継承するために、周囲がナチュラルに演じていても、オレひとりでも歌舞伎演技を通してやる!」と使命感に燃えて演じていたわけじゃないでしょう?
 いつもの壮くんらしく、周囲の芝居の空気読んでないだけで(笑)。

 でもソレが、素敵なのよねえ。

 ひとりで浮き上がってるのに気づきもせず、「アンドレ役うれしい!」「オレってかっこいー」「自分スキ!」と盛大に叫び続ける姿が、地団駄踏んで転げ回りたいくらい、ステキ。

 うん。
 マジでわたし、そういう人好き。

 舞台人として、ソレは美点であり、強みだと思う。

 カンチガイでも空回りでも、壮くんは真ん中できらきらきらきら輝いていた。
 それがまぶしい。

 活き活きした人を見るのはたのしい。
 のびのびした人を見るのはしあわせ。

 壮くんは、まちがいなくしあわせをくれたよ。

 いやあ、あれだけ笑えれば、こーやってキーを打っていても、思い出し笑いで幸福になれるって、なんて価値のある人だろう。

 19時間もバスに揺られて、はるばる観に行った甲斐があったよ、全ツ『ベルばら』!

 ソウドレをこの目で見ることができて、よかった!

 壮くんステキ。
 変に小さくまとまったりせず、そのままの芸風で爆走して欲しい。真ん中向けの人だよ、ほんと。変に脇にいると、真ん中の芝居を壊すので問題、つーのも深刻な彼の持ち味だがなー。ゲフンゲフン。

 今、緑野こあら史上最高に、最強に、壮一帆が好きかもしれない。

 

コメント

日記内を検索