星組『Young Bloods!!−Twinkle Twinkle STAR−』にて。

 公演自体への疑問は、すごかった。
 わたしはついに最後まで、そこから立ち直れなかった。
 劇団への不審や苛立ちはいつも多々あるが、それが一気に吹き出してしまう公演だった。

 ……てなことは置いておいて。

 
 柚希礼音を絶賛しよう(笑)。

 
 わたしは、ダンスの巧い下手があまりよくわからない。だから、ダンサーと呼ばれる人のすごさがわからない。
 ダンスのうまさより、「見せ方」のうまさや、はったりのできる人の方を「かっこいい」「すてき」と思う、ドシロートだ。
 足が高く上がるとか、何回もくるくる回るとか、そーゆーことを「すごい」と思うよーなモノ知らずだ。

 だから、柚希礼音がどれほど「ダンスが巧い」と言われていても、目にも耳にも入らなかった。
 いつもひとりでくるくる回っているから「すごい」ことはわかるけど、それだけだ。
 テレビでハシゴの上で逆立ちする人を見ても「すごい」と思う、そーゆー感覚と同じってゆーか。

 
 そんなヤツがだ。

 今回のれおんバウではじめて、「柚希礼音って、ほんとにすげー」と思ったワケだ(笑)。

 芝居がはじまってすぐに、彼はまた回りはじめた。
 れおんといえば、回ること。
 くるくるくるくる、回ること。

 彼が回り出すなり、観客は「待ってました!」と拍手をはじめたけれど、わたしはその拍手のタイミングにも引いてしまった。
 「待ってました!」の拍手はチガウやろ。芸に感動してから拍手しろよー、てゆーかまた回るのかれおん……。
 と、「れおんといえば」の演出に最初から鼻白み、静観していた。

 しかし。

 彼は、回り続ける。

 えっ? えっ?
 いつまで回るの?
 まだ回るの?

 びっくりして、拍手した。
 すげーすげー。

 とゆーおどろきを皮切りに。

 ダンサー・柚希礼音、男役・柚希礼音を堪能することになる。

 他組の学園祭の出し物とか宴会芸芝居とはちがい、真っ当に「タカラヅカ」な脚本。
 1時間の短い芝居でできるだけ出演者全員に見せ場を、と考えられているせいもあり、薄くて他愛なくて、ツッコミどころ満載のボロボロ作品だが、そんなことはどーでもいー。だってソレくらい、タカラヅカには、ふつーに存在している。
 どーってことのない作品だ。良くは絶対にないが、とりたてて言うほど悪くもない。

 娘役はできあがりが早いから、若い子たちもそれなりにカタチになっているが、やはり男役は悲惨。わー、大変やなー、とは思うが、宴会芸脚本ではなくクラシカルなヅカ脚本なので救われている。

 そんななかで、れおんの「別物」感が際立っている。

 男役声で喋ることもおぼつかない少年たちの中に立ち、ひとり「男」として余裕の存在感を放つ。
 今まで培ってきたものを、自在に放出する。

 共産国のバレエダンサーが自由を求めて亡命し、なんやかやの末にアメリカでデビューを飾る。彼は祖国に残してきた妻と息子をいずれ呼び寄せるつもりでいたが、成功の一歩を踏み出したときに妻の死を知る。
 妻と息子への贖罪のために、せっかく掴んだ栄光を捨てて祖国へ戻ろうとする彼の元に、成長した息子が現れた……。

 なんてことない話だし、それ以前にツッコミどころが多すぎて「ヲイヲイ」だらけなんだけど、それでもなお、ラストシーンで泣けたんですけど。
 年齢設定まちがってるよな?とゆー巨大な息子が、おぼつかなくバレエを踊り、その息子を抱きしめてれおんに号泣された日にゃあ。
 観客もダダ泣きですよ。

 脚本の粗を吹っ飛ばし、「なんかいいもん見たかも?」と観客を誤解させるチカラ、熱量を持つこと。
 わたしはソレを「トップスターの必須条件」だと定義している。

 れおんは、トップになるべき人だな。

 や、それはもう何年も前からわかっていたことだけど。
 今回また改めて思う。
 きっとトップになってから、いい仕事するだろうな。

 
 ショーは「踊ること」に集中した構成になっていた。
 ヴォーカル付きの音楽で、踊ることだけに集中。ヘタに歌ってダンスも歌も中途半端、ということにしない。
 踊りよりも「タカラヅカ」に重点を置いたシーンでのみ、ヅカ的に歌ったりキザッたりする。

 わたしは、ダンスの巧いヘタがよくわからない。
 わからない人なのに。

 「柚希礼音って、ほんとにすげー」と思ったワケだ。繰り返すけど(笑)。

 れおんだけ、時間の流れ方がチガウの。
 空気がチガウの?
 滞空時間がチガウ。
 ちょっとしたことのひとつひとつに、彼だけ別撮りした映像を見せられているようなの。特殊効果で、時間を変えてあるみたいなの。

 口ぽかーん、状態でした、あたしゃ。

 場を与えてもらったら、ここまでちゃんと踊ってみせるんだな彼は。

 そして、ダンスだけではなく、「男役」としての所作ができているし。
 流し目もらいましたよ、れおんに。袖に入り際に。うおっ、今あたしのこと見た?! あたしのことオトそうとしたっ?! ドキドキ。

 正しく「真ん中」が機能している公演を観るよろこび。
 れおんを頂点に、あかしを2番手に、きれいに作られたピラミッド。
 安定したカタチは美しい。

 いやはや。
 たのしい公演でした。
 てゆーかほんとにすごかったよ、れおん。
 本公演でもこれくらい、実力を発揮できるといいのにね。それはまた、難しいことなんだろうなあ。ショーの1シーンでもいいから場を与えれば、彼はやれるんだろーになぁ。

 
 れおんが安定した「キャリア」を発揮したからこそ、さらにわたしの「『Young Bloods!! 』の存在意義」についての疑問が深くなったんだよなー。

 いろんな意味で、罪作りだわれおん。


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