時計を見た人は、いったい何人いただろう。
 わたしは見た(笑)。

 カエサル@トドロキが死んだとき。

 えっ、もう死んじゃうの? 時計を見た。暗くてはっきりとはわからなかったけれど、50何分か。95分の芝居だから、半分強でいなくなっちゃうのね。
 帰りの電車で隣になった人たちも、「思わず時計見た」って話していたから、わたしだけではないはずだ(笑)。

 主役が、ブルータス@あさこだった。

 月組『暁のローマ』初日に行って来ました。

 なんだか信じられない思いのまま。
 だって数日前にはここで、たか花がさよならパレードやってたんだよ? アタマがうまく切り替わらない。

 とはいえ。
 幕が上がれば、わたしは「タカラヅカ」の虜になる。

 今回は初日のチケットをあらかじめ購入していたので、たか花ショックでボケたアタマでも観劇に駆けつけることが出来た。

 ふだんは、初日のチケットなんて前もって買わない。
 あとから買った方が安いチケットが出る。びんぼー人のわたしは、安けりゃ安い方がありがたい。いちばん後ろでも立ち見でもかまわないもの。
 張り切ってチケットを用意していたのは、ひとえにキムシン+トドロキに期待したからだ。

 ネタが「ジュリアス・シーザー」で「ロック・オペラ」で、うるさい芸風のキムシンに、重すぎる芸風のトドロキ様だよ?

 想像するだけで、わくわくする(笑)。 

 キムシンの説教ソングを、地底からの地響きのよーな声でトドロキが咆吼する。うわー、たのしそうっ。
 キムシンとトドって芸風合うと思うんだよね。どっちも好きなわたしとしては、期待せずにはいられない。

 が。

 えーと。

 いろいろ、思っていたこととはちがっていた。

 専科・轟悠、各組回り4組目。
 花組で主役、雪組で主役、だが星組ではW主演ときて、今回の月組でついに助演となった。
 だんだん彼の比重が下がってきているね。次の宙組ではどうなるのかな。

 トドが主役であるかどうかはべつに、どうでもいい。わたしはトドファンだが、彼になにがなんでも主役をして欲しいとは思っていない。それよりも、まず「作品」ありきだ。駄作で主演するより、名作で助演してくれた方がよっぽどいいからな。
 ただ、今までものすごーく「主役」な扱いを受けてきているのを見ていたから、「あ、主役じゃないんだ」というのは、新鮮なおどろきだった。

 主役はブルータス。カエサルは「象徴」。
 それは実に、いい感じの比重であり、役者の持ち味にあったアテ書きっぷりだ。

 キムシンは演出力にも優れているが、ヅカの座付きとしてもっとも優れているのは「アテ書きができる」ということだと思う。オギーのような「ちょいヒネった小ニクいアテ書き」ではなく、ストレートに真ん中ズバリのアテ書きをしてくれるから、見ていて愉快だ。

 そっかあ、キムシンがあさこにアテ書きすると、こうなるのか。ゆーひにアテ書きすると、こーなるのか。
 キムシンすごいわ、わたしと男の趣味が似ているわ(笑)。

 あさこ総受ですか、そーですか。

 でもって、ゆーひが鬼畜属性の攻ですか、そーですか。

 キャラ認識が同じでうれしいです(笑)。

 『暁のローマ』をわたしらしい言葉で解説すると、トドとかなみんの間で揺れ動くあさこを、ゆーひが横からかすめ取る話ですよ!!(役名で言いましょう、誤解を受けます)
 そのくせ、最終的に、まさきが全部持っていく話ですよ!!(役名で言いましょう、誤解を受けます)

 あさこを取り合うのが、トド、かなみん、ゆーひ、まさきですか。素敵な攻たちがこぞってあさこLOVE、あさこは翻弄され、苦悩し、泣き崩れ、実にすばらしい総受っぷりを披露。
 広い意味ではきりやんもえりりんもあさこLOVEで狙っている人たちに分類できますし、テロリスト軍団もまたあさこLOVEですし、もーどーしましょー。テロリスト組には越リュウだののぞみだのマギーだの濃い人たちがたっぷりで、「あさこ逃げて! マワされるわ〜っ!!(笑)」てな感じで、大変愉快です。(だから、役名で……以下略)

 トドが主役ではなく半分強で退場することも意外だったし、ここまで見事にあさこ総受話になっていたこともびっくりしたけれど。

 いちばん大きなおどろきはなんといっても、コメディだったことだ。

 
 いつもの通り、なんの予備知識もナシ。原作も読んでません。わたしアタマ悪いんで、シェイクスピアなんてぜんぜんわかんないっす。
 でも、有名すぎる話とキャラクタなんで、大まかな流れは知っている。「オクタビアヌス」と聞いて、「シーザーの甥で、のちのローマ皇帝」とか、「アントニウス」と聞いて「シーザーの部下でクレオパトラとくっつくオトコ」とか答えられる程度の知識。キャラ設定とストーリーだけ知ってます、てな感じ。
 ちなみに、わたしの偏った知識では、「オクタビアヌス」って、「ローマでいちばん美しい少年」という設定なんですが……配役見たときはびびったな(笑)。

 「蘇我入鹿」の話をやる、と聞いて「ああ、設定と主なキャラとストーリーは大体知ってるな」と思ったのと同じ程度の温度感。
 それだけで、あとは何も知らずに観劇して。

 
 はじまるなり、幕前にきりやんとほっくんが出てきて、漫才をはじめたので、びっくりした。

 え、えーと?
 ふたりともビシバシにローマ人のコスプレしてるんですけど……しかもお互い、役名で呼び合ってますけど。
 それで、やっていることは漫才。

 てゆーか。
 やばいぞ、霧矢大夢。
 あまりにも、ナチュラルだ。
 漫才師がハマりすぎている。

 巧い人だということはわかっている。実力があるからこそ、2500人収容劇場の幕前なんぞで漫才ができる(空気を掴める)んだということは、わかっている。
 だがしかしっ。
 そこまでナチュラルに漫才を極めてしまっては、タカラジェンヌとしてまずいだろう!!(笑)

 アテ書きのキムシン。
 アントニウス@きりやんは、すばらしーアテ書きっぷりだ。
 しかしソレ、やりすぎだから!
 霧矢大夢のタカラジェンヌ人生を縮めているんぢゃないかと、いらぬ心配をした。
 や、それくらいハマってるのよ、ベタベタの大阪弁で漫才をはじめた霧矢さんってば。そんな霧矢さん、大好きだけども。

 今まで、漫才からはじまるヅカ芝居観たことなかったから、しばらく呆然としていた。笑っていいのかどうかすら、わからなくて。

 そして幕が上がり、これぞキムシン! てなローマ市民たちの総おどりがはじまる。
「カエサルはえらい〜〜♪」
 漫才の次は「すごつよ♪」テイストソングいきなりですか!!

 コメディか……コメディだったのか……。

 ノリを理解できるまで、大変だった(笑)。

 とはいえ、所詮モトが「ジュリアス・シーザー」なので、話は重く暗くなるんだけれど。
 ラストでまた、漫才師登場でひっくり返すし。

 なんか、えらいことになってるな今回。

 予想していたこと、期待していた物語とは、ずいぶんちがっていて。
 そのことに、とまどった。

 笑いに逃げている分、軽くて薄い。

 それでも、キムシンは全開(笑)。

 彼が終始一貫して訴えかけるテーマに、クライマックスでは涙した。
 彼はやはり、「叫ぶ作家」だ。よくも悪くも。
 こんなに軽い、薄い作品にしてもまだ、叫び続けている。

 おもしろいなあ、キムシン。


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