そのかが好きだ。

 それは昔からであり、今にはじまったことじゃない。
 たぶん、『ミケランジェロ』新公の、もんのすげー歌を聴いたときから、きっと、好きだった。あの歌聴いて、それでもまだ「メンドリーニ役の子、誰? かっこいい!!」と騒げたのだから。
 わたしが生まれてはじめて観た花組の新公で、唯一おぼえて帰ったのが「桐生園加」だった。
 そのか以外で記憶に残った他の子たちは、そもそもはじめから存在を知っていたのでノーカウントな。

 この子が好き、と人に言えば、「ああ、緑野の好きそうなカオね」と言われた。
 そう、ひとめでわかる好みのタイプ。

 ケロに似てるなと思ったのは、ずっとあと。

 ケロがどうこうではなく、もともと好きなカオであり、タイプだった。
 好みの男ふたりが似ているのは必定、なんの不思議もない。

 でも。

 ケロがいなくなってから、気づいた。
 実感した。

 そのかって、こんなにケロに似ていたの?

 瓜二つというわけじゃない。ケロとそのかは別人。
 でも、ときおりピンポイントで似ている。
 それは、顔が似ているとかどのパーツがどうとか、わかりやすいものではなく、感覚の部分で突き刺さる。

 『マラケシュ』のイヴンがそうだった。アリは似ているけど、ちょっとちがった。
 ショーでもところどころ、似ている。スーツで踊られると、覿面だ。

 それは、よろこびなんだろうか。

 わたしはそのかはそのかとして好きになった。
 そのかがかっこよすぎて美しすぎて涙が出た、博多『エンレビ』の「猛獣使い」役は、ケロにはまったく見えなかった。あれはまちがいなくそのかだった。

 そのかを好きなのは、たしかなのに。

 つらいのは、何故。

 そのかが月組に組替えになると知り、ケロファンには動揺が走った。
 チェリさんもドリーさんもわたしも、うろたえてメールだのBBSでのレスだのが行き交ったもんさ。

 ケロに似た男が、ケロのいた月組に異動になる。

 ゆうひくんと同じ舞台に立つそのかを、わたしたちはどんな想いで見つめるのだろうか。

 それだけでもけっこー「試練」って感じだったのに。
 どういうことだよ、齋藤吉正。そのかで、宮本武蔵ってなんだよ?!

 ケロの役で。齋藤演出でやった、あの宮本武蔵を。わざわざケロに似た男にやらせますか!
 これはなんの挑戦? 「サイトーくん、ケロファンにケンカ売ってる?」と、またしても仲間内でメールやレスが飛び交う(笑)。

 もちろん、サイトーくんがなにも考えていないことも、ケロのこともそのかのことも、好きなことはわかるけど。
 いろいろと無神経だわ。ま、そーゆーキャラだって知ってたから、ニガワラで済ませるけどさ。

 『Young Bloods!! 』の舞台に立つそのかは、まちがいなくそのかだ。
 初主演おめでとう、そのか。とてもうれしい。

 でも、あちこちが痛い。ひりひりする。

 別人だとわかっているのに、「似ている」ことにおどろく。

 たぶん、共通言語を持った人にしかわからない「面影」。わからない人、感じない人は気にしないで、「似ている」ことに気づく人だけ受け止めて。

 こんなに喋って、歌っているそのかをはじめて見た。
 声が似ている。なんでだ。ところどころ、ケロを彷彿とさせる話し方なのは何故。
 サイトーくん、わざとそうさせてるの? 「武蔵」だから、ケロの「武蔵」のような話し方をさせている? ケロがどうこうというより、サイトーくんの狭すぎる引き出しに、「武蔵」というとアレしかないのかもしれないね。

 そのかを、好きだ。
 ケロに関係なく。

 でも、今はまだ、こんなに痛い。
 5年あとならきっと、「似ている」ことを痛みではなく愛しさとして感じられただろう。
 いや、愛しさはある。あるよ。似ている部分も好き。もともと「好み」の部分だもの。

 そのかを好きでいることは、今のわたしには、とても痛いことなんだなあ。

 それを思い知った。

 「宮本武蔵」を真ん中で演じる桐生園加を見て。

 
 痛いなら、見なければいい。好きじゃなくなればいい。
 そーゆーもんかもしれんが、そうもできないのだ。
 だってだって、好きなんだってば。
 かっこよくてかわいくて、素敵なそのかが好き。
 見ないなんてできないよ。

 とゆーことで。

 なにがつらいんだか痛いんだか、ぐちゃぐちゃな心を抱えて、そのかを見守る。

 そのかが、しあわせでありますように。
 それだけを祈る。

 そのかがそのからしく、充実した日々を送れること。
 それだけを祈る。

 大好き。
 痛くてつらくて、それでも好き。


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