ギャグひとつにしても、「男子ギャグ」と「女子ギャグ」がある。
 男子の笑いツボは、女子とはチガウのだ。

 去年、映画の『ホールド・アップ・ダウン』を見たときとか、痛感したよ。うっわー、男子ギャグだー。男子の感覚でポップでクールなコメディをやってるんだろうけど、女子のわたしには笑えないことの方が多かった。ジャニーズ主演映画なのに、なんでこうまで男子ギャグなんだ、と思ったなー。演じているのが男たちだから、彼らはきっと脚本に大ウケしたんだろうけど。

 花組『Young Bloods!! −青春花模様−』は、男子ギャグテイストで作られている。マンガで言うなら『伊賀のカバ丸』+『うる星やつら』。『うる星』が少年マンガなのは周知のことだろうし、『カバ丸』は少女マンガに男子ギャグのテイストを持ち込んで成功した作品だ。

 なにしろヒロインふたりが、両方ともツンデレって、どういうことよ?(笑)
 生徒会長兼剣道部主将に不良少女ときたもんだ。方向性は逆だが、どっちも定番テンプレヒロイン。
 そしてライバルキャラが白学ランに腰までの黒髪ロン毛のカンチガイ男(とりまき付き)ときたら、80年代少年マンガの王道ですか?

 ストーリーも定番中の定番。
 ヘタレ剣道部を率いる真面目強気娘スー子@澪乃せいらのもとに、宮本武蔵@そのかがタイムスリップしてきた。
 おりしも剣道の大会目前。ライバル校剣道部のカンチガイ貴公子コジロー君@マメに「大会で負けたら交際をOKする」と宣言したスー子は、武蔵を部員に加えて団体戦に出場する。しかしこの宮本武蔵、史実とはちがい、卑怯でヘタレな弱虫だった……。
 ヘタレ武蔵はツッパリ娘ジュリ@じゅりあに喝を入れられ、スー子のため、剣道部の仲間たちのために剣を取る。
 よわよわダメ男だった武蔵は成長し、逃げない男となってもとの世界へ帰っていく。

 「よくこの脚本を、舞台にしようと思ったな」と、初日を観たわたしとkineさんはうなずきあった。

 商業作品というよりははてしなく学芸会に近い。あるいは、宴会芸か。
 ふつーの学校の学園祭で、「3年A組」とかが上演していそうだ。

 作品のいい悪い以前に、「宴会芸」と思わせるネタだけでできあがった物語、というのがすごい。

 ネットでファンが罪なく「タカラヅカ学園とかあったらいいのにねー。男役はみんな男子生徒で、娘役は女生徒。専科のおねーさまたちや上級生たちが先生でぇ」とか、ネタとして話している、そのままのノリだ。
 それを、給料もらってやっちゃいますか。
 ワークショップとはいえ、商業演劇の板の上に載せちゃいますか。

 すげーな、サイトー。

 齋藤吉正、全開。

 切っても切ってもサイトー、どこを取ってもねっとりサイトー。
 OK、OK、あきれながらもOKです。

 でもな。
 コレしか出来なくなったら、終わりだぞ?
 サイトーくん、1作ごと確実に退化しているからな。
 ここで止めておこうよ。なっ?
 ここが最低ライン、コレより下は、プロとしてマジやばいからさ。なっ?

 
 前回の月組版もすごかったけど、今回のワークショップのお約束って、サムさ爆発、お笑い芝居なの?

 なんだか、藤井くんもサイトーくんも、「若さ」を誤解している気がする。
 若いから、現代を舞台にした、軽いノリだけで突っ走る芝居でヨシ、って思ってる?

 えー、ソレ、若さとぜんぜん関係ないから。

 若者が演じているから、まだサムさがマシ、っていうのはそもそも、設定と脚本に問題があるから。
 演出家が「若さ」を言い訳にしているとしか思えない。

 月組版と今回の花組版、芝居だけでいうなら、どっちがマシか、答えに窮するところだ。
 脚本がよりさいてーなのは齋藤作品、学年のせいもあり出演者の総合能力が低かったのが藤井作品、だからなあ。

 それでも、ナマで味わう分にはたのしめるよ。
 ライヴってのは、それだけで意味がある。
 こわいのは、テレビで放送されたときだよ……ぶるぶる。

 
 脚本についてのツッコミはしない。
 そーゆー次元の作品じゃない。
 ひとことで言うなら、「お手上げ」だ。

 ああ、ひとつだけ。

 伏線を張るべきだった。
 武蔵が現れて生徒たちでわいわいぎゃーぎゃー、「タイムスリップだ」「どーする?」「とりあえずわたしたちの教室に」てな会話の中に、ラストへの伏線を混ぜる。

「チョンマゲ君、ずっとここにいればいいじゃな〜い(はぁと)」
「ダダダダメだよ、そそそそんなことしたら、歴史が変わっちゃうよ。オオオレたちの知っている史実とチガウことが起これば、そのあとの歴史がぜぜ全部変わり、オレたちの今いる世界だって、どどどうにかなっちゃうんだよ」
 (さりげなく、萌子とライの会話でお送りします・笑)

 この「SF基本設定」の説明があるだけで、ずいぶんマシになると思うぞっと。
 あとはホレ、ただのナンセンス青春学園コント芝居だから、なにも言いません。にっこり。

 
 サイトーくんの脚本はたしかにひどいんだけど、花組には合っているのかもしれない。
 なにしろ、出演者全員、アピール強すぎるから。

 どこを見たらいいのかわからない。

 わたしはそのかファンで、そのかを見に行ったのに、そのかだけを落ち着いて見ていられない。
 舞台のそこかしこ、画面のあちこちで、なにかしらやっているのが目に入って。
 目に入ると、気になって。

 こ、こまった。
 おまえら、やりすぎ(笑)。

 
 他組と比べるのもなんだが。
 月組というのは、総じておとなしい組なんだなと、常々感じていたことを今回また再確認した。
 リカコンでもアサコンでも、共演の下級生たちは「主役の邪魔にならないように」と決して出過ぎた真似をしない、ひたすらバックダンサーに努めていた。
 真咲主演の『Young Bloods!! 』でも、スター・真咲とその他下級生たち、であり、それぞれが決してはみ出すことなくスタンドプレイすることなく、おとなしくまとまっていた。

 それがいいとか悪いとかじゃなく、ああ、カラーってのはあるもんなんだなと。

 
 花組は、弱肉強食か(笑)。

 誰が真ん中かなんて関係なく、ガンガン出てきやがる(笑)。
 『TAKARAZUKA舞夢!』の黒タキ祭りを思い出すわ。お茶会でちはる兄貴が感嘆していたっけ。研いくつのハナ垂れ小僧までもがリーゼントを撫でつけ、キザりまくっていることに「花組クオリティ万歳」と。

 おかげで、そのかが地味だ(笑)。

 武蔵は主役とはいえ、まともなキャラなので(タイムスリップしてきたヘタレ武蔵がまともカウントされる世界観って……)、どーしても割を食うのなー。

 この世界観でまともなのは武蔵と、ヒロインのスー子とサブヒロインのジュリのみ。
 で、武蔵はボケキャラ。
 ツッコミはスー子とジュリ。
 しかしジュリは出番が少ないし、あまり他人に積極的に絡まないから、真のツッコミキャラはスー子だけになっている。

 だもんで……つらかった。スー子、ツッコミ下手!!

 他はべつにいいんだけどねー。「私を捕まえて〜〜(はぁと)」とか、いい味出してるんだけど。
 ツッコミの空気の読めなさ具合はもー、じれったくてたまらん。

 ……いやその。
 タカラジェンヌだから、コントが出来なくても、かまわないんだけど。コント芝居をやらせるサイトーが悪いんだけど。

 武蔵と園加学園キャラはどっちかっつーと薄くて(いちばん濃いのはジュリとミホ先生って……)、コジロー君と日向学園ホスト部剣道部の面々が全部力尽くで持っていくんだよなー。
 ああもお、コジロー君@マメ、大好きだ(笑)。

 話が「内容が無いよう」なノリなので、キャラ萌えするしかない。

 ……なんでかな……ホスト部のしゅん様にいちばん目が行くんですが……彼もなんだか、わたしを見ているような気がするんですが……(いやソレ、カンチガイだから!!)。


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