わからないことがある。

 何故、サム役が、みわっちなんだ?

 断言してもいい。
 もしも、正塚が大好きな未沙のえるが星組『ベルばら』でメルシー伯爵なんかやってなかったら、こちらに出演可能なスケジュールだったら。

 サムを演じていたのは、未沙のえるだよな?

 花組バウ『スカウト』の、バランスの悪さ、お笑いとシリアスの不誠実さについて考えると、役と役者が合っていないことに行き着く。

 美形スターのみわっちが、まぬけなおっさん役をやっているから「役が合っていない」と言っているわけじゃない。
 主役との「人間関係」の重さの話をしているんだ。

 サムは徹底したお笑いキャラだ。ストーリー上必要なキャラクタだし、台詞も出番も多い。
 だが、それだけだ。
 主人公のショーンは、サムのことをなんとも思っていない。必要だからつきあっている、必要だから利用しているだけ。サムに対して個人的な感情はない。
 暴漢に襲われたとき助けてくれるおまわりさんが重要なのと同じ感覚だな。おまわりさんがいなかったら、主人公死んでたよ、いてくれてありがとう! でも、友だちでも家族でもないから、事件が終わったらはいサヨナラ。
 あのアンフェアぎりぎりの「オチ」で、サムがどれだけ「どーでもいい存在」か、証明されてるよな? ショーンはサムとは「出会ってない」んだぜ? あれはみんな「なかったこと」。その程度の存在さ。
 もちろん、あの「オチ」にサムもじつは絡んでいる、という裏設定があるかもしれないが、舞台上でなんの説明もされていないのだから、なしと判断するよ。
 結論。ショーンにとってサムは、どーでもいい相手。
 傷つけてもいい、利用するだけの相手。
 まぬけなサムと丁々発止の会話をすることで、笑いを取ることだけが目的。

 ショーンが徹頭徹尾そーゆーキャラで、どんな深刻なこともお笑いにしてしまう世界観だとしたら、それはそれでアリだと思う。わたしだって、「命がかかっているのに、それを笑うなんて!」と言うよーな、野暮なツッコミはしないさ。

 だが、そうではないのだ。
 サムに対しては冷酷にギャグで通しているのに、別の人に対しては、チガウんだよ。

 ショーンの友人で、恋敵になるフランク@まりん。
 彼の「命」がかかっているときは、ものすげーシリアスなの。
 いちばんシリアスなシーンじゃないか? 笑いもギャグも一切なしだぞ?
 なんでもギャグで笑わせる世界観なら、ここでも笑い連発にするべきだろ? フランクをまぬけに泣きわめかせて、滑稽な態度を取らせるべきなんじゃないのか?

 フランクに対してあれだけ誠実だったショーン。なのに、サムに対しては冷酷。
 これが、ものすごーく変。

 本来なら、フランクこそが、みわっちの演じるべき役なんじゃないの?

 まりん氏になんの含みもありませんよ。役の「重さ」の話をしているだけだから。
 主人公が「死なせたくない」「傷つけたくない」と思い、気遣う相手。仲間で、恋敵。彼と対峙するシーンがいちばんシリアス。
 ……この役を、2番手男役が演じるのがふつーじゃないか?
 ショーンに命を救われ、改心したフランクが、協力者となる。……これでいいじゃん。
 サムの役の比重を落とし、フランクをクローズアップする。
 そうすれば、いくらサムに対してひどいことをして、サムのことを笑う演出にしても、変じゃないよ。ショーンの人格も壊れないし、作品の不誠実さもなくなる。

 サムをみわっちが演じる、ならば、それだけの比重が必要だろー。
 美形の路線スターの愛音羽麗が、まぬけで滑稽なおっさん役を! すごーい、みわっちって、あんな役もできるんだー、新鮮だわー! とゆーサプライズ感だけでは変だ。
 美形役であるナシではなく、きれいな役でないからどうだというのではなく。
 みわっちに「まぬけなおっさん」を演じさせることに意味があり、この役がみわっちでなければならないというのなら、今のままではおかしい。
 最後に「出会ってなかった」「いなかった」ことにしていい程度の「脇役」なんだよ?
 たとえ美形役であったとしても、きれーな衣装でかっこいー言動を取る役であったとしても、わたしは同じことを言うよ。
 ショーンに「どーでもいい」と思われている程度のキャラクタを、滑稽さで笑いを取るだけの役を、2番手がやるのは、作品のバランスを壊している。

 
 わたしはずーっと、みわっちがいつ「意味のある役」になるのか、「2番手らしい役」になるのかを、期待して観ていたんだ。

 まぬけなのも変人なのも、「ここぞ!」というオイシイシーンを盛り上げるための伏線だと思っていたの。
 今までさんざん滑稽さで笑わせてきた人が、ほんとうに必要なシーンで、人間としての本質を見せる。
 「殺してくれ」と言うショーンに対し、真剣に「バカ野郎!!」と殴りつけるとか。
 軽いお笑いシーンになっていたあのシーンは、ほんとーなら、いちばん盛り上がる「いいシーン」になるもんなんじゃないの?
 今までの三枚目ぶりが嘘のよーに、おバカ眼鏡をすちゃっと取ると、そこは超二枚目の愛音さんだ。あの美貌でらんとむさんに詰め寄るんだよ。「君が死んでどうなる。あいつらの思うつぼじゃないか!」とかな。
 それでもらんとむさんの決心は変わらないんだ。さんざんやりあったあとに、らんとむさんの固い固い決意に折れ、みわさんが苦渋の決断をするんだよ。「友情」ゆえに、引き金を引くのさ。さながら、『ファントム』のエリックとキャリエールのようにな。

 真摯に向き合えば、お笑い三枚目サムのままの格好でも、その姿は男前になるはずだ。
 フランクのときは、真摯に向き合っていたじゃないか。どーしてサムはチガウんだ。

 もしくは。

 疑っていたさ。
 サムがあまりに無意味に滑稽なので、実は彼こそが黒幕であることを。
 お笑いにショーンを射殺し、泣きわめくサム。
 彼が高笑いし出すのを、今か今かと待ちわびた。
 ショーンを殺すためのゲーム、引き金を引いたのはサムだけど、そうさせたのはショーン自身だから、ゲームクリア!つーことで、悪魔のサムが耽美に思い切りダークに踊り出すのを、期待したよ。

 もしくは。

 すべてが終わり、サーシャが病院に現れ「スカウト」の話をする、そのときに。
 これまた美青年エージェント姿になったみわさんが登場するのを、期待したさ。
 サムはサーシャのボスだったんだ!的展開をな。

 まさか、サムとは「出会っていない」ことになっており、存在自体打ち消されているとは思わなかったよ。ひでー。

 
 繰り返すが、みわっちが「まぬけなおっさん」であることが不満なんじゃない。あたしゃヘタレキャラ自体は大好物だ。
 たとえ今のままの役作りであっても、最後に関係する重さのある役ならよかったさ。徹底したお笑いキャラぶりも、みわっちの魅力のひとつとして加えられるだろうさ。
 キーパーソンであっても、台詞や出番が多くても、サム役をみわっちがやっていることで、物語のバランスが壊れている。
 それが不満なんだ。

 サムがどーしてもみわっちが演じる必要があるというなら、ショーンに彼を愛させろ。
「誰でもいいけど、消去法で仕方なくあんたになった。あんたが傷ついても殺人犯になっても関係ない、殺してくれ」
 ではなく、
「理解者はあんただけだ。あんただから殺して欲しい。オレのために、殺人犯になってくれ」
 と言わせろ。

 フランクよりも、サムに愛を。

 
 あたしは、とむ×みわで萌えたかったのよ!!(結局ソレか)


コメント

日記内を検索