それは史上最良の……。@新人公演『ベルサイユのばら』
2006年3月1日 タカラヅカ それは、史上最良の『ベルばら』でした。
雪組新人公演『ベルサイユのばら−オスカル編−』。
植爺によって汚染された『ベルばら』が、大胆にメスを入れられ、腐った部分を切り落とし別の物語にと作りかえられていました。
演出は、鈴木圭。ええ、あの伝説の『ファントム』新公の演出家です。
いつだったか、わたしは書きました。
第1幕の「出来事」は、「オスカル隊長が衛兵隊を掌握する」と「ロザリー嫁に行く」だけだと。
そして、この「出来事」に関係していないから、「アンドレ」は無意味だと。
鈴木演出では、まさしく「出来事」のみにしぼって構成されていました。
まず、長すぎるプロローグを、小公子ソロ→アンドレ@かなめ登場→オスカル@コマ登場→幕が閉まり、その間オスカル、アンドレ、ロザリー@かおりで銀橋渡り、と短く終わらせる。
幕が開くと、そこはいきなり「衛兵隊」。
「俺たちゃまぬけな衛兵隊」とまるまるした男の子たちが歌っている。
ええっ? いきなり「衛兵隊」? あいようこおねえさまの、きょうふしーんは?!!(新公にあいようこさんは出ません)
衛兵隊に初出勤したオスカル。彼らとの対立、アラン@ヲヅキとの一騎打ちと、現在の彼女が抱える問題を浮き彫りにする。
幕が閉じると、銀橋にロザリー登場。「ヲトメの祈り」と可憐に歌い、本舞台はジャルジェ家の居間に。ロザリー、歌うまいー。すげー。
居間には、やたらと横に体格のいいベルナール@宙輝れいかがいて、演説をぶつ。
どーやらロザリーを好きらしいベルナールだが、告白はうまくいかない。ジャルジェ家のみなさんがわいわい登場してしまったんだ。
他愛ない話に興じるジャルジェ家の人々。「ライバルがいるから、夜も眠れないわ!」と嘆くルルー。違和感なくかわいいぞルルー。「ライバルって誰?」と言うおねーさま方。ルルーは言う。「ロザリーよ!」−−幕。
幕?
えええっ?! 「ロザリー?」「小間使いじゃないの」とか、「オスカルお姉ちゃまの日記を見ちゃったの」とかの話はさくっとCUT?!!
幕というか、正確には「廊下を表す大道具の仕切」が出てきたわけだけど。
ソレが閉まったので、そこはジャルジェ家の廊下になる。
そこでオスカルが、ロザリーにベルナールからの縁談を話す。ロザリー大ショック。
オスカルの軍服を抱きしめ、かなしく「ヲトメの祈り」を歌う。
そして彼女は、決意する。「わたしはパリに参ります!」−−ベルナールと結婚することを。
えええっ?! ロザリーの妄想シーンは?! あのクソ長い意味のない脳内妄想爆裂シーンは?! なに食わぬ顔でCUT?!
舞台はまたしても、衛兵隊。
兵士たちの家族がやってきて食料もらったりなんだり大騒ぎ。あのクソうるさいだけの無神経女ルイーズ@愛原実花が、うるさくない。かわいい女になってるぞ? 声もでかいし無神経テイストは同じだが、亭主に惚れていることがわかって、なんだかかわいいのだ。
そこへやってきたオスカルが、反発するアランに想いを語って聞かせ、兵士たちの前で「子守歌」を披露する。
こーしてオスカル隊長は、無事衛兵隊を掌握することができました。
ここで閉まる、幕。
幕前に現れるのは、小公子@れのと、ばらの少年少女たち。
彼らはあったりまえの顔で歌い出す。「嵐は嵐は花を散らせていく。今日も散るのか薔薇ひとつ〜♪」……アレ?
ええっとソレ、チガウ歌だよね? 今回の雪組『オスカル編』にはその歌ないよね?
本公演にない歌来ますか! しかもここでちゃんと違和感のない説明が入る。今まで出番のなかったアンドレのこと。彼の立場や想い、そして「目が見えなくなっている」ことも。
幕が開くとそこは、衛兵隊の訓練中。
つまり、第2幕だ。
ええっ? 第2幕? つーと1幕では、アンドレ出番ナシ?
……なんて、潔い。
第1幕の「出来事」は、「オスカル隊長が衛兵隊を掌握する」と「ロザリー嫁に行く」だけ。
ほんっとーに、このふたつ以外のシーンは、CUTされていた。
アンドレの妄想も、もちろんペガちゃん登場もない。
いなくていい人と、なくていいシーンだもんな。ははは。
1幕ってほんと、いらなかったんだよなー。ほとんどなー。ははは。
その代わり、第2幕はほぼ忠実に再現されていた。
衛兵隊の訓練シーン、ブイエ将軍登場、反発するオスカル、ジャルジェ将軍登場でオスカルをビンタ、「ジェローデルと結婚しろ」、アンドレモノローグ、毒殺未遂、ジェローデル@谷みずせの「身を引きましょう」出番これだけかいっ、「パリ進駐なんてあぶないわ」ジャルジェ家の人々がぎゃーぎゃー、ロザリー夜這い、でもあんまし変じゃないぞ、若さゆえの勢いって感じだロザリー、「今宵一夜」、ロザリーとベルナール夫妻の寒い会話、アンドレ戦死ときて、バスティーユ。
そして、なにがすごいかって、終わり方。
バスティーユで終わる、『ベルサイユのばら』なんて、はじめて観た。
「隊長、見てください。バスティーユに、白旗がぁあああっ!!」
叫ぶアラン。
「ついに落ちたか。……フランス、万歳」
で、オスカル死去。
「バスティーユが落ちたぞぉ」の叫び声の中、ロザリーの悲鳴が響き渡り、兵士たちが敬礼する。
幕。
……これで、幕。
歴史巨編?
なんか、すごいいいもん観たよーな気がする?
これだからタカラヅカって、と嘲笑される「ガラスの馬車」が、出てこないのよ!!
「歴史の歯車の中では無にも等しい」オスカルが、それでも人の世で人の子として、懸命に生きた。
そんなオスカルの人生に、ガラスの馬車なんか出てこない。オスカルはそんな「逃げ」は必要としていない。彼女はなにも、後悔などしていないのだから。
あのガラスの馬車が最悪なのは、「所詮女子ども」って笑われるセンスなのもそうだけど、オスカルの人格と人生を否定しているからなのよ。
「ふたりは可哀想に死んでしまったけれど、天国でしあわせになりました」って意味でしょ?
オスカルは「可哀想」なんかじゃない。彼女は自分の人生を自分の意志で生きた。そして、満足して死んだ。なにも後悔していないし、他人から憐れまれるなど笑止千万。
「死んでしまった」から「可哀想」って、なんなのその幼児以下の感覚。
何故彼女が「フランス万歳」と言って死んでいったのか、まったく理解していない人間のやりそうなことだ。
自分の意志で自分の信じるもののために戦い、未来を勝ち取って、静かに微笑んで死んでいった戦士の背後で、勝利の雄叫びがあがっている。
そこで、幕。
美しい終わり方じゃないか。
観たかった、『ベルサイユのばら』のラストシーンだ。
やっぱ鈴木演出はよいなあ。
明日から、コレでやってくんないかなあ。
そしたら1時間半で済むから、2部はショーにできるのに。
同時上演するショーは、『ドリーム・キングダム』がいいなあ。
トドの役を、水くんにして。
薔薇@コム姫で、薔薇収集家@水……うっとり。
「ばら」つながりで、観客も安心して観られるじゃん。ホモすぎてまずい、ということも、芝居の方がオスカルで「男装の麗人」だから、アタマの固いおばちゃんたちも、「ああ、ショーも男装の麗人役なのね」って誤解してくれるよー。
史上最良の『ベルばら』。
そりゃ、まだ変なところはいくらでもある。でもそれは、植爺が生きている以上仕方ない部分だ。現在の段階で、最良の結果を叩き出してくれた。
キャストの力量は、本公演にかなうまでもないとして。あくまでも、「脚本」「構成」のみの話な。
こんなにすばらしいものを観てしまっては、本編がますます観られなくなる……。
雪組新人公演『ベルサイユのばら−オスカル編−』。
植爺によって汚染された『ベルばら』が、大胆にメスを入れられ、腐った部分を切り落とし別の物語にと作りかえられていました。
演出は、鈴木圭。ええ、あの伝説の『ファントム』新公の演出家です。
いつだったか、わたしは書きました。
第1幕の「出来事」は、「オスカル隊長が衛兵隊を掌握する」と「ロザリー嫁に行く」だけだと。
そして、この「出来事」に関係していないから、「アンドレ」は無意味だと。
鈴木演出では、まさしく「出来事」のみにしぼって構成されていました。
まず、長すぎるプロローグを、小公子ソロ→アンドレ@かなめ登場→オスカル@コマ登場→幕が閉まり、その間オスカル、アンドレ、ロザリー@かおりで銀橋渡り、と短く終わらせる。
幕が開くと、そこはいきなり「衛兵隊」。
「俺たちゃまぬけな衛兵隊」とまるまるした男の子たちが歌っている。
ええっ? いきなり「衛兵隊」? あいようこおねえさまの、きょうふしーんは?!!(新公にあいようこさんは出ません)
衛兵隊に初出勤したオスカル。彼らとの対立、アラン@ヲヅキとの一騎打ちと、現在の彼女が抱える問題を浮き彫りにする。
幕が閉じると、銀橋にロザリー登場。「ヲトメの祈り」と可憐に歌い、本舞台はジャルジェ家の居間に。ロザリー、歌うまいー。すげー。
居間には、やたらと横に体格のいいベルナール@宙輝れいかがいて、演説をぶつ。
どーやらロザリーを好きらしいベルナールだが、告白はうまくいかない。ジャルジェ家のみなさんがわいわい登場してしまったんだ。
他愛ない話に興じるジャルジェ家の人々。「ライバルがいるから、夜も眠れないわ!」と嘆くルルー。違和感なくかわいいぞルルー。「ライバルって誰?」と言うおねーさま方。ルルーは言う。「ロザリーよ!」−−幕。
幕?
えええっ?! 「ロザリー?」「小間使いじゃないの」とか、「オスカルお姉ちゃまの日記を見ちゃったの」とかの話はさくっとCUT?!!
幕というか、正確には「廊下を表す大道具の仕切」が出てきたわけだけど。
ソレが閉まったので、そこはジャルジェ家の廊下になる。
そこでオスカルが、ロザリーにベルナールからの縁談を話す。ロザリー大ショック。
オスカルの軍服を抱きしめ、かなしく「ヲトメの祈り」を歌う。
そして彼女は、決意する。「わたしはパリに参ります!」−−ベルナールと結婚することを。
えええっ?! ロザリーの妄想シーンは?! あのクソ長い意味のない脳内妄想爆裂シーンは?! なに食わぬ顔でCUT?!
舞台はまたしても、衛兵隊。
兵士たちの家族がやってきて食料もらったりなんだり大騒ぎ。あのクソうるさいだけの無神経女ルイーズ@愛原実花が、うるさくない。かわいい女になってるぞ? 声もでかいし無神経テイストは同じだが、亭主に惚れていることがわかって、なんだかかわいいのだ。
そこへやってきたオスカルが、反発するアランに想いを語って聞かせ、兵士たちの前で「子守歌」を披露する。
こーしてオスカル隊長は、無事衛兵隊を掌握することができました。
ここで閉まる、幕。
幕前に現れるのは、小公子@れのと、ばらの少年少女たち。
彼らはあったりまえの顔で歌い出す。「嵐は嵐は花を散らせていく。今日も散るのか薔薇ひとつ〜♪」……アレ?
ええっとソレ、チガウ歌だよね? 今回の雪組『オスカル編』にはその歌ないよね?
本公演にない歌来ますか! しかもここでちゃんと違和感のない説明が入る。今まで出番のなかったアンドレのこと。彼の立場や想い、そして「目が見えなくなっている」ことも。
幕が開くとそこは、衛兵隊の訓練中。
つまり、第2幕だ。
ええっ? 第2幕? つーと1幕では、アンドレ出番ナシ?
……なんて、潔い。
第1幕の「出来事」は、「オスカル隊長が衛兵隊を掌握する」と「ロザリー嫁に行く」だけ。
ほんっとーに、このふたつ以外のシーンは、CUTされていた。
アンドレの妄想も、もちろんペガちゃん登場もない。
いなくていい人と、なくていいシーンだもんな。ははは。
1幕ってほんと、いらなかったんだよなー。ほとんどなー。ははは。
その代わり、第2幕はほぼ忠実に再現されていた。
衛兵隊の訓練シーン、ブイエ将軍登場、反発するオスカル、ジャルジェ将軍登場でオスカルをビンタ、「ジェローデルと結婚しろ」、アンドレモノローグ、毒殺未遂、ジェローデル@谷みずせの「身を引きましょう」出番これだけかいっ、「パリ進駐なんてあぶないわ」ジャルジェ家の人々がぎゃーぎゃー、ロザリー夜這い、でもあんまし変じゃないぞ、若さゆえの勢いって感じだロザリー、「今宵一夜」、ロザリーとベルナール夫妻の寒い会話、アンドレ戦死ときて、バスティーユ。
そして、なにがすごいかって、終わり方。
バスティーユで終わる、『ベルサイユのばら』なんて、はじめて観た。
「隊長、見てください。バスティーユに、白旗がぁあああっ!!」
叫ぶアラン。
「ついに落ちたか。……フランス、万歳」
で、オスカル死去。
「バスティーユが落ちたぞぉ」の叫び声の中、ロザリーの悲鳴が響き渡り、兵士たちが敬礼する。
幕。
……これで、幕。
歴史巨編?
なんか、すごいいいもん観たよーな気がする?
これだからタカラヅカって、と嘲笑される「ガラスの馬車」が、出てこないのよ!!
「歴史の歯車の中では無にも等しい」オスカルが、それでも人の世で人の子として、懸命に生きた。
そんなオスカルの人生に、ガラスの馬車なんか出てこない。オスカルはそんな「逃げ」は必要としていない。彼女はなにも、後悔などしていないのだから。
あのガラスの馬車が最悪なのは、「所詮女子ども」って笑われるセンスなのもそうだけど、オスカルの人格と人生を否定しているからなのよ。
「ふたりは可哀想に死んでしまったけれど、天国でしあわせになりました」って意味でしょ?
オスカルは「可哀想」なんかじゃない。彼女は自分の人生を自分の意志で生きた。そして、満足して死んだ。なにも後悔していないし、他人から憐れまれるなど笑止千万。
「死んでしまった」から「可哀想」って、なんなのその幼児以下の感覚。
何故彼女が「フランス万歳」と言って死んでいったのか、まったく理解していない人間のやりそうなことだ。
自分の意志で自分の信じるもののために戦い、未来を勝ち取って、静かに微笑んで死んでいった戦士の背後で、勝利の雄叫びがあがっている。
そこで、幕。
美しい終わり方じゃないか。
観たかった、『ベルサイユのばら』のラストシーンだ。
やっぱ鈴木演出はよいなあ。
明日から、コレでやってくんないかなあ。
そしたら1時間半で済むから、2部はショーにできるのに。
同時上演するショーは、『ドリーム・キングダム』がいいなあ。
トドの役を、水くんにして。
薔薇@コム姫で、薔薇収集家@水……うっとり。
「ばら」つながりで、観客も安心して観られるじゃん。ホモすぎてまずい、ということも、芝居の方がオスカルで「男装の麗人」だから、アタマの固いおばちゃんたちも、「ああ、ショーも男装の麗人役なのね」って誤解してくれるよー。
史上最良の『ベルばら』。
そりゃ、まだ変なところはいくらでもある。でもそれは、植爺が生きている以上仕方ない部分だ。現在の段階で、最良の結果を叩き出してくれた。
キャストの力量は、本公演にかなうまでもないとして。あくまでも、「脚本」「構成」のみの話な。
こんなにすばらしいものを観てしまっては、本編がますます観られなくなる……。
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