現在プレイ中の『SIREN2』のヅカキャスティングを書きながら、2年ちょい前に発売された『SIREN』のことを、なつかしく思い出していた。
 2003年11月。
 『王家に捧ぐ歌』の成功も華々しく、新生星組に、そしてそこにいるケロに、無限の可能性を信じていたころ。誰かが欠けるなんてこと考えもせず、「次の作品はどんなだろ」「どんな役が似合うだろう」と夢ばかり見ていた。
 そのころのケロ友といえばチェリさんだけだったので、ふたりで「ケロにこんな役をやってほしい」とか「こんな衣装を着て、こんなシチュエーションで出てほしい」とか、よく話していたよ。
 そんなころだから当然、『SIREN』のキャスティングを妄想するのだって、星組でさ。ワタさんと檀ちゃんを中心にさ。
 ダークヒーロー宮田がワタさん。闇の聖女・八尾さんが檀ちゃん。多感な高校生主人公・恭也がトウコで、盲目のヒロイン(会話は命令形)の美耶子がウメちゃん、てなふーに。
 ケロはニヒル(笑)な大学教授・竹内だったなー。
 『SIREN』がヅカで上演されるはずもないが、キャラをあてはめてはたのしんでいた。

 『SIREN』を夢中でプレイしていたころ。
 あのころはまだ、ケロがいた。

 星組は代替わりしたばかりで、ワタさんも檀ちゃんもケロもしいちゃんも、組替えしてきたばかりで。
 みんなでがっしり肩を組んで、雄叫びあげながら前進しているような。
 そーゆー暑苦しくも頼もしい、「フロンティア」なパワーがあって。

 好きだったよ。
 あの昂揚感。
 はじまりの力。

 なにかのはずみで自分の昔の日記を目にして、妄想配役にケロの名前があると、せつない。
 あのころは、現在進行形で夢を見ていられたんだ。
 ありえないことはわかっているけど、勝手にキャスティングをしてはひとりでたのしめた。

 ワタさんがいて、檀ちゃんがいて、トウコちゃんがいて、ケロがいて、しいちゃんがいて、まとぶがいて、すずみんが、れおんが、かのちかが、恵斗くんが、せんどーさんが、ウメが。
 無邪気に、夢を見ていた。
 「今」のまま。

 『SIREN2』が発売になった。
 待ちに待った続編。
 やっぱり、ヅカでキャスティングを考える。
 ……そして、思い出す。『SIREN』のキャスティングを、2003年の星組で、わくわく考えていたこと。

 
 あのころが、もう、存在しないこと。

 
 時は流れるのだということ。
 祭りはいつか終わるのだということ。

 
 終わり、そしてはじまり、永遠に永遠に、回り続けるのだということ。

 
 あのころは、ケロがいた。
 そしてわたしは、幸福だった。
 今が不幸なわけではなくて、ただ、あのころはあのころのしあわせがあった。光があった。

 そしてそこには、絶対に、ワタルくんがいた。

 わたしはとくにワタさんファンではなかったと思うけれど、それを超えて、彼は不動の存在だった。
 太陽ってのは、そういうもんだろう。
 そこにあるのが前提だから、ふだんは顧みもしない。わたしは影を好み、あの人の影やこの人の影、自分の影を追いかけて、終わらない影踏み遊びをしている。
 光があるから。太陽があるから。
 だからわたしは安心して、太陽に背を向けて影を追って遊んだ。

 太陽がなくなったら、もう影踏みできないね。
 「もういいよ」を言ってもらえなくて、いつまでも数を数えつつけている鬼になったような気分だ。

 
 あのころは、ケロがいた。
 でも、「あのころ」が過ぎてしまってなお、太陽はわたしをしあわせにしてくれていたんだね。ずっと。あたりまえに。
 だから今、こんなに寂しい。

 覚悟はしていたつもりだったので、存外の喪失感におどろいている。

 2006年2月13日。湖月わたる、退団発表。

 ……ごめん、ちょっと泣いた。
 きっと、これからもっと泣く。


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