水夏希が女だ。
最初っから驚愕。
星組『ベルサイユのばら−フェルゼンとマリー・アントワネット編−』、オスカルは4人目、水くんだ。
オープニング、マンガ絵が開いて登場するところからすでに、「女」。
男装しているのに、軍服着ているのに、女性であることがひとめでわかる。
どどどどーゆーことっ?!!
この日はBe-Puちゃんとnanakoさんと一緒だったのだけど。
休憩時間、Be-Puちゃんも驚きの声を上げていた。
「水くんが進化していた!!」
なにしろわたしたちには、『2001』の記憶がある。ばばあにとって5年前なんてのは、「えっと、ソレって去年だっけ?」ぐらい、ついこの間のことだ。
『ベルサイユのばら2001』で、いやっちゅーほどミズカルは見てたんだ。
あの微妙すぎるオスカル。
低い声にとがったアゴ、長すぎるカオ。不自然にクネクネした態度。
どっから見ても、オカマ。
そんなにフェルゼンが好きなら、押し倒せば? アンタなら余裕で勝てるって! と言いたいよーな男度の高い(だから不自然に女っぽい態度を取る)オスカルだった。なまじフェルゼンがお人形さんのよーなたかこだったからなー。
あのダメダメっぷりが、記憶に新しいもんだから。
おどろくよ。
「人って、成長するんだね。人間ってすごいね」
……Be-Puちゃんはひたすら、感心していた。
「アタシは長年、成長しない人のファンやってたからさー。ついに最後まで、演技も歌もダメダメなままだった……」
そのダメさ加減も愛していたのだろう。すでに退団したご贔屓に想いを馳せつつ、その反動もあってか「成長している」水くんに感慨深い模様。
まあ、歌の下手さでは、Be-Puちゃんのご贔屓とよく並び称されていたもんね、水くん……。
なにはともあれ、水夏希。
わたしは水くん大好きだけど、今まで彼が演技巧者だと思ったことはない。
ふつーだと思っていた。
役者なら、それくらいできて当然、というレベル。
巧いといって目立つこともなければ、下手で場を壊すこともない。
彼の演じるキャラクタに惚れ込むことは多々あるけれど、それはたんにわたしが彼を好きなだけだと思っていた。演技の相性がいいだけだと思い込んでいた。
でも、ひょっとして。
今の今まで、一度も考えたことがなかったけれど。
水くんって、演技巧かったんだ……?
登場した瞬間から、「オスカル」というややこしいキャラクタの「設定」が理解できるんですが。
男装しているけど、女。軍服着ているけど、女。
タカラヅカだから、他の全員が同じように男装した女状態なのに、それでもひとめでわかる。「あ、あの人女だ」。
表情が、女性のものだった。
男装の麗人とかじゃなくて、ふつーに女性。
等身大の女性。
女医さんが男性医師と同じユニフォーム着ているよーなもん。仕事だから同じモノを着ているんであって、「男装しているのよ!」という気合いはナシ。
えーと、つまり。
今まで「男の中の男。水アニキかっくいー!!」と思っていた「顔」は、演技だったわけですか?
ふつーの、女性としての顔とは別物。
今までわたしが見ていたモノは、全部全部、「演技によって作られたモノ」だったわけですか?!!
どうしよう。
舞台の上に、きれいな女の人がいる。
美しい女優さんがいる。
アレ誰?
知らない人だー。
すみません。
わたし、ほんとに理解してなかったの。
水夏希が女だということ。
「水夏希」という生き物だと思い込んでいたから。
後天的に「作られた」存在だと思ってなかったの。
わたしが見ていた「水夏希」は、水くんが自分の力で創り上げたものだったんだ……イリュージョンだったんだ……。
もともと「水夏希」という生き物だから、水くんらしく舞台に立っていて、いろんな役をやっているのは「あたりまえ」のことだと思っていた。
それを「技術」だなんて思ってなかった。
男が男に見えるの、とーぜんだし。
男が男としてかっこいーの、とーぜんだし。
演技が巧いとか下手とか考えたこともなかった。気にする必要もなかった。
だって水くんだし。
……創ってたの?
水くん、生まれたときから水夏希なんじゃなかったの?
水夏希としてかっこいーのも、男らしいのも、みんなみんな、演技で創り上げたモノだったの?!
マジ、知らなかった。
天性のものじゃなく、技術だったんだ……。
だからこそ、「男」としての演技をやめ、「女」になることができる。
とても自然に。
「男」を創り上げることに成功した技術と経験は、同じ計算式で「女」を創り上げることも可能なんだ。
舞台にいるオスカルが、あまりに自然に「女性」なので、ただもうそのことだけにびっくりして、終わってしまった。
天海祐希かと思った。
ヅカの男役だったころの天海ではなく(当時の天海も見ていたけどさ)、今の、「いい女」「オトコマエなおねーさん」としてテレビで活躍している、女優の天海。
今現在の天海がオスカルを演じたら、こんな感じかも。あくまでも「いい女」として、男社会でキャリアウーマンしているふつーの感覚を持った女性。
スーツをビシリと着こなし、責任ある立場で働いているミズカル。「オンナはお茶くみだけしてればいいんだ」というブイエ部長と衝突しながらも、新プロジェクトの方針をめぐり、会社の存続を真面目に憂えている。
女の敵はオンナ、ミズカルを快く思わないお局シッシーナ一派は口さがないが、同じくお局のモンゼット一派はとりあえず味方。化粧室と給湯室は噂話の花畑。「ミズカル女史が関連会社に左遷されるそうよ!」「しかも店舗勤務でしょ? アルバイトの女の子たちと同じように店頭に立つことになるのよ?」「それも自分で願い出たんだって!」「大変ザマス!」
現在の業務に疑問を持ったミズカルは、末端にあたる現場での勤務を願い出たのだ。
わたしは仕事に生きるの……そう言い聞かせるミズカルは、叶わぬ恋を胸に抱いていた。仕事上のライバルとして出会った男、ワタルゼン……最初から、ふつうの男と女として出会っていたら、ちがう未来があったかもしれない。だが、真面目で不器用なミズカルは、彼の前で「オンナ」の部分を決して見せなかった。対等なライバル、かつ友人としてつきあう以上、恋心は隠し通さなければならなかった。
それに、ワタルゼンは社長夫人のトナミネットと途ならぬ恋に落ちていた。誰も幸福にならない恋。ミズカルも、ワタルゼンも、そしてトナミネットも。
そしてもうひとり。ミズカルを密かに愛し、見守り続ける男がいた。ミズカルの幼なじみ、トウドレだ。ミズカルの不器用な生き方を受け止め、影のように支え続ける覚悟で、彼もまたミズカルと同じ部署への異動を願い出ていた……。
とかゆー、ありがち現代物ドラマとして、ぜんぜん変じゃないキャラでした、ミズカル。
変だなあ、コレってバリバリの植田歌舞伎なのになー。トナミネットはひとりで植田芝居やってるのになー。
ミズカル、植田芝居に馴染みながらも独自のムードで「きれいなお姉さん」やってたぞ(笑)。
なんか、すごいかわいい女性でした。
ふつーに「働いている女性」っぽくて。だからこそ、障害にぶつかって、傷ついている姿が可哀想で。
がんばれ。そう言ってあげたくなる。
……女だったんだ……水くん……。
女になれるんだ、こんなにふつーに。
ただもう、それだけにびっくりした。
最初っから驚愕。
星組『ベルサイユのばら−フェルゼンとマリー・アントワネット編−』、オスカルは4人目、水くんだ。
オープニング、マンガ絵が開いて登場するところからすでに、「女」。
男装しているのに、軍服着ているのに、女性であることがひとめでわかる。
どどどどーゆーことっ?!!
この日はBe-Puちゃんとnanakoさんと一緒だったのだけど。
休憩時間、Be-Puちゃんも驚きの声を上げていた。
「水くんが進化していた!!」
なにしろわたしたちには、『2001』の記憶がある。ばばあにとって5年前なんてのは、「えっと、ソレって去年だっけ?」ぐらい、ついこの間のことだ。
『ベルサイユのばら2001』で、いやっちゅーほどミズカルは見てたんだ。
あの微妙すぎるオスカル。
低い声にとがったアゴ、長すぎるカオ。不自然にクネクネした態度。
どっから見ても、オカマ。
そんなにフェルゼンが好きなら、押し倒せば? アンタなら余裕で勝てるって! と言いたいよーな男度の高い(だから不自然に女っぽい態度を取る)オスカルだった。なまじフェルゼンがお人形さんのよーなたかこだったからなー。
あのダメダメっぷりが、記憶に新しいもんだから。
おどろくよ。
「人って、成長するんだね。人間ってすごいね」
……Be-Puちゃんはひたすら、感心していた。
「アタシは長年、成長しない人のファンやってたからさー。ついに最後まで、演技も歌もダメダメなままだった……」
そのダメさ加減も愛していたのだろう。すでに退団したご贔屓に想いを馳せつつ、その反動もあってか「成長している」水くんに感慨深い模様。
まあ、歌の下手さでは、Be-Puちゃんのご贔屓とよく並び称されていたもんね、水くん……。
なにはともあれ、水夏希。
わたしは水くん大好きだけど、今まで彼が演技巧者だと思ったことはない。
ふつーだと思っていた。
役者なら、それくらいできて当然、というレベル。
巧いといって目立つこともなければ、下手で場を壊すこともない。
彼の演じるキャラクタに惚れ込むことは多々あるけれど、それはたんにわたしが彼を好きなだけだと思っていた。演技の相性がいいだけだと思い込んでいた。
でも、ひょっとして。
今の今まで、一度も考えたことがなかったけれど。
水くんって、演技巧かったんだ……?
登場した瞬間から、「オスカル」というややこしいキャラクタの「設定」が理解できるんですが。
男装しているけど、女。軍服着ているけど、女。
タカラヅカだから、他の全員が同じように男装した女状態なのに、それでもひとめでわかる。「あ、あの人女だ」。
表情が、女性のものだった。
男装の麗人とかじゃなくて、ふつーに女性。
等身大の女性。
女医さんが男性医師と同じユニフォーム着ているよーなもん。仕事だから同じモノを着ているんであって、「男装しているのよ!」という気合いはナシ。
えーと、つまり。
今まで「男の中の男。水アニキかっくいー!!」と思っていた「顔」は、演技だったわけですか?
ふつーの、女性としての顔とは別物。
今までわたしが見ていたモノは、全部全部、「演技によって作られたモノ」だったわけですか?!!
どうしよう。
舞台の上に、きれいな女の人がいる。
美しい女優さんがいる。
アレ誰?
知らない人だー。
すみません。
わたし、ほんとに理解してなかったの。
水夏希が女だということ。
「水夏希」という生き物だと思い込んでいたから。
後天的に「作られた」存在だと思ってなかったの。
わたしが見ていた「水夏希」は、水くんが自分の力で創り上げたものだったんだ……イリュージョンだったんだ……。
もともと「水夏希」という生き物だから、水くんらしく舞台に立っていて、いろんな役をやっているのは「あたりまえ」のことだと思っていた。
それを「技術」だなんて思ってなかった。
男が男に見えるの、とーぜんだし。
男が男としてかっこいーの、とーぜんだし。
演技が巧いとか下手とか考えたこともなかった。気にする必要もなかった。
だって水くんだし。
……創ってたの?
水くん、生まれたときから水夏希なんじゃなかったの?
水夏希としてかっこいーのも、男らしいのも、みんなみんな、演技で創り上げたモノだったの?!
マジ、知らなかった。
天性のものじゃなく、技術だったんだ……。
だからこそ、「男」としての演技をやめ、「女」になることができる。
とても自然に。
「男」を創り上げることに成功した技術と経験は、同じ計算式で「女」を創り上げることも可能なんだ。
舞台にいるオスカルが、あまりに自然に「女性」なので、ただもうそのことだけにびっくりして、終わってしまった。
天海祐希かと思った。
ヅカの男役だったころの天海ではなく(当時の天海も見ていたけどさ)、今の、「いい女」「オトコマエなおねーさん」としてテレビで活躍している、女優の天海。
今現在の天海がオスカルを演じたら、こんな感じかも。あくまでも「いい女」として、男社会でキャリアウーマンしているふつーの感覚を持った女性。
スーツをビシリと着こなし、責任ある立場で働いているミズカル。「オンナはお茶くみだけしてればいいんだ」というブイエ部長と衝突しながらも、新プロジェクトの方針をめぐり、会社の存続を真面目に憂えている。
女の敵はオンナ、ミズカルを快く思わないお局シッシーナ一派は口さがないが、同じくお局のモンゼット一派はとりあえず味方。化粧室と給湯室は噂話の花畑。「ミズカル女史が関連会社に左遷されるそうよ!」「しかも店舗勤務でしょ? アルバイトの女の子たちと同じように店頭に立つことになるのよ?」「それも自分で願い出たんだって!」「大変ザマス!」
現在の業務に疑問を持ったミズカルは、末端にあたる現場での勤務を願い出たのだ。
わたしは仕事に生きるの……そう言い聞かせるミズカルは、叶わぬ恋を胸に抱いていた。仕事上のライバルとして出会った男、ワタルゼン……最初から、ふつうの男と女として出会っていたら、ちがう未来があったかもしれない。だが、真面目で不器用なミズカルは、彼の前で「オンナ」の部分を決して見せなかった。対等なライバル、かつ友人としてつきあう以上、恋心は隠し通さなければならなかった。
それに、ワタルゼンは社長夫人のトナミネットと途ならぬ恋に落ちていた。誰も幸福にならない恋。ミズカルも、ワタルゼンも、そしてトナミネットも。
そしてもうひとり。ミズカルを密かに愛し、見守り続ける男がいた。ミズカルの幼なじみ、トウドレだ。ミズカルの不器用な生き方を受け止め、影のように支え続ける覚悟で、彼もまたミズカルと同じ部署への異動を願い出ていた……。
とかゆー、ありがち現代物ドラマとして、ぜんぜん変じゃないキャラでした、ミズカル。
変だなあ、コレってバリバリの植田歌舞伎なのになー。トナミネットはひとりで植田芝居やってるのになー。
ミズカル、植田芝居に馴染みながらも独自のムードで「きれいなお姉さん」やってたぞ(笑)。
なんか、すごいかわいい女性でした。
ふつーに「働いている女性」っぽくて。だからこそ、障害にぶつかって、傷ついている姿が可哀想で。
がんばれ。そう言ってあげたくなる。
……女だったんだ……水くん……。
女になれるんだ、こんなにふつーに。
ただもう、それだけにびっくりした。
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